シグマ「56mm F1.4 DC DN Contemporary」は中央と隅の解像力の差が非常に大きい

LensTipで、シグマのミラーレス用の中望遠単焦点レンズ「56mm F1.4 DC DN Contemporaly」のEマウント版のレビューが掲載されています。

Sigma C 56 mm f/1.4 DC DN

  • フォーカスリングは、フォーカスバイワイヤ(モーターによる駆動)で、十分な重さがあり滑らかに回転する。最短から無限遠までの回転角は、フォーカスリングを回す速さで変わる。フォーカシングで前玉は回転しない。
  • 解像力は、中央は開放から既に素晴らしい値で、ピークではこれまでの最高記録を破る82.4lpmmに達している。隅は開放でも良像の基準値(39-41lpmm)を超えていて悪くはないが、F2.8に絞ると解像力が顕著に落ち込む。これは測定誤差ではなく、目視でも確認できる。

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  • 軸上色収差は、開放でもほとんど色が付かず、全く問題はない。倍率色収差は、0.06%付近の低いレベルで問題はない。
  • フォーカスシフト(絞りによるピントの移動)は全く見られず、これは球面収差の補正に問題が無いことを示している。
  • 歪曲は、未補正時には+3.43%の糸巻き型で、歪曲の不名誉な最高記録を破っている。正直言って、この付近の画角の単焦点レンズで、これ以上歪曲が大きいレンズは記憶にない。このレンズは、意識的に歪曲の光学補正を諦め、後処理に任せる選択をしている。
  • コマ収差の補正は完璧ではなく、容易に見て取れる。F2に絞ると改善するが、まだ若干のコマ収差が残っている。
  • 非点収差は5.6%で、画質への影響はわずかだ。
  • 玉ボケは、輪郭が穏やかで年輪ボケがほとんど見られず、非常に滑らかで均一だが、口径食はとても目立つ。
  • 周辺光量落ちは、48%(-1.89EV)の高い値だが、F5.6まで絞れば完全に解消する。
  • 逆光では、開放付近ではフレアやゴーストは問題ない。絞るとフレアやゴーストの耐性は悪化するが、それほど顕著ではない。興味深いことに、太陽が画面の中心から遠く離れると、フレアやゴーストが増える。
  • AFは静かだが、最短から無限遠までは約1秒で、それほど速くない。AF精度は少々奇妙で、何枚もテスト撮影していると、ピントは最初の1枚に依存することが多く、最初の1枚目がシャープだと後の画像もシャープになる場合が多かったが、最初の画像がピンを外すと後の画像も2~3枚甘くなることが多かった。このレンズは、フォトキナ会場でもα6500でこのレンズをテストしたが、AF性能はあまり感心しなかった。
  • このレンズは、高価で妥協のない造りの40mm F1.4 Artと対照的に、軽量で手軽で安価なアマチュア向けのレンズで、多くの妥協が見られる。レンズの小型化のために周辺光量落ちが大きくなることと、歪曲を後処理に任せることは理解できるが、隅の画質の弱さが足を引っ張っており、中央と隅の解像力の差が非常に大きい。とは言え、手頃な価格のレンズで、全体的には非常に肯定的な評価だ。
  • 良い点:鏡筒のクオリティが高い、中央の驚くほどの画質、隅のまずまずの解像力、軸上色収差が少ない、倍率色収差がわずか、球面収差の問題がない、非点収差が穏やか、コストパフォーマンスが良好。
  • 悪い点:隅のパフォーマンスが典型的なものでない、歪曲が大きい、周辺光量落ちが大きい。

 

56mm F1.4は歪曲の補正を電子補正に頼っているものの、価格や大きさ重さを考えれば全体としては良好な性能で、手軽に楽しめそうなレンズという印象です。

絞ると隅の解像力が落ち込むのが少々気になりますが、問題が指摘されているF2.8でも良像の基準値は超えているので、大きな問題はなさそうです。