ツァイスMilvus 1.4/50 はOtusに迫る性能だが周辺光量落ちが大きい

LensTip に、ツァイスの標準単焦点レンズ「Milvus 50mm F1.4」のレビューが掲載されています。

Carl Zeiss Milvus 50 mm f/1.4

  • Milvus 50mm F1.4 は、Otus 55mm F1.4 に比べるとずっと小さいが、重さは旧型のプラナーに比べると3倍近くあり非常に重い。鏡筒は金属製だ。マウント部はゴムでシーリングが施されている。
  • フォーカスリングは、回転角が225度(Otusは250度)あり、とても正確なピント合わせが可能で使っていて楽しめる。フォーカシングでフィルター枠は回転しない。Milvusの最短撮影距離は、Otusと比べると短い。
  • 中央の解像力は、開放で34lpmm(良像の基準値は30-32lpmm)に達しており、実用的な画質だ。中央のピークの解像力はF4に絞った時の45.4lpmmで、これはOtus 55mm F1.4やシグマの50mm F1.4 Art に及ばないが、それでもなお素晴らしい値だ。
  • 隅の解像力は、ASP-Cとフルサイズでほとんど同じ値で、開放で既に30lpmmに達しており十分に実用的だ。OtusもシグマのArtもフルサイズの隅の解像力は、開放ではこの値には達していない。絞るとF4-5.6で隅の解像力は40lpmmを明確に超えており、Otusやシグマを顕著に上回っている。フルサイズの隅で、このような優れた性能のレンズは久しく見たことがない。
  • 軸上色収差はごくわずかに見られ、軸上色収差が全く見られないOtus 55mm F1.4よりも目立つが、シグマ50mm Art と比べると同程度だ。
  • 倍率色収差はF2.8までは絞ると増加するが、無視できる値、または低い値(0.07%以下)を維持しており、全く問題は無い。面白いことにOtusは逆に開放付近の色収差が大きい(0.05-0.07%)。シグマは、倍率色収差は低い値(0.04%以下)を維持している。
  • フォーカスシフト(絞りによるピント位置の移動)は全く見られなかった。
  • 歪曲はフルサイズで-1.30%のタル型で、このクラスではシグマの-0.12%、Otusの-0.69%に続いて3番目に小さい値だ。Milvusの歪曲の補正は悪くはないが、より安価なシグマの方がずっと良好で、我々を感心させるものではなかった。
  • コマ収差はそれほど悪くは無いが、それほど良くもない。それでも旧型の50mm F1.4 と比べると大幅に改善している。開放ではOtusやシグマは同レベルだが、F2に絞るとシグマがベストだ。
  • 非点収差はわずかで、Otusよりも少なく、シグマと比べても若干良好だ。
  • 周辺光量落ちは、フルサイズでは開放で66%(-3.12EV)で極めて大きい。Milvusが、より鏡筒が大きく焦点距離も長いOtusよりも周辺光量が落ちるのは予想していたが、シグマよりも悪いとは思わなかった。F2に絞っても周辺光量落ちは40%(-1.49EV)でまだ目立ち、F2.8に絞ると19%(-0.63EV)で初めて目立たないレベルになる。
  • 逆光耐性は素晴らしく、光源がどの位置にあってもフレアは見られず、高いコントラストが維持されている。Milvusの逆光耐性はOtusよりも若干良好で、シグマと比べると顕著に優っている。
  • Milvus50mm F1.4 は、中央の解像力はOtusに敵わないが、周辺部の解像力は実に見事で、多くのカテゴリで価格が3倍もするOtusと同等の成績だ。唯一MilvusがOtusに負けているのは周辺光量落ちで、これが最大の失点だ。
  • シグマ50mm F1.4の存在がなければ、Milvusは全ての点で申し分ないものだったが、シグマはMilvusの半額で、ほとんど同等の光学性能を実現しており、一部のカテゴリではMilvusに優っている。幸いなことに、Milvusはマニュアルフォーカスのためシグマとは異なるジャンルのレンズなので、どちらのレンズも熱心なファンを集めると思う。
  • 良い点: しっかりしたスタイリッシュな金属製の鏡筒、中央の素晴らしい画質、隅のとても良好な画質、軸上色収差が少ない、倍率色収差がわずか、球面収差が非常に少ない、歪曲の問題がない、非点収差がわずか、ボケが非常に好ましい、逆光耐性が素晴らしい。
  • 悪い点: 周辺光量落ちが非常に大きい、フルサイズの隅でコマ収差がもう少し目立たなければよかった。

 

Milvus はOtusと比べればかなり安価ですが、性能的にはそれほど大きな違いがあるわけではなく、周辺部の解像力ではむしろ優っているので、コストパフォーマンスではMilvusがOtusを圧倒していると言ってよさそうです。

シグマは、Milvusよりも更に安価にもかかわらず、性能的にはいい勝負のようなので、MFレンズにこだわりがなければ、シグマはこのクラスでは有力候補になりそうですね。後は、これらのレンズのボケの比較も見てみたいところです。