タムロンSP85mm F1.8 Di VCは見事な解像力だがフォーカスシフトが目立つ

LensTip に、タムロンの中望遠単焦点レンズ「SP85mm F/1.8 Di VC USD」のレビューが掲載されています。

Tamron SP 85 mm f/1.8 Di VC USD

  • フォーカスリングは十分な重さがあり、むらなく回転する。最短から無限遠までの回転角は110度と理にかなった大きさで、とても正確なピント合わせができる。フォーカシングでフィルター枠は回転しない。
  • 手ブレ補正は公称3.5段分だが、テストでは3段分の効果で、公称よりも若干低かった。このクラスのレンズでは3.5-4.0段分の効果が欲しいので、この結果には若干不満があるが、フルサイズ一眼レフ用のポートレートレンズでは、唯一の手ブレ補正付きレンズなので、いずれにしてもライバルに対しては優位だ。
  • 解像力は中央はピークで47lpmm(良像の基準値は30-32lpmm)で、これはツァイスのOtus85mm F1.4とMilvus85mm F1.4の持つレコード48lpmmに近い値だ。キヤノン85mm F1.8(42lpmm)やニコン85mm F1.8(44lpmm)のような古いレンズに対してはタムロンが優っている。加えてタムロン85mm F1.8 は開放時の解像力も良好(35lpmm前後)で全く問題はない。
  • タムロンはAPS-Cの隅の解像力も見事で、同じ絞り値ではキヤノンやニコンの85mm F1.8 の中央の解像力と同じか、それよりも若干高い値だ。
  • フルサイズの隅の解像力も良好で、開放ですでに34lpmmに達している。隅は絞ってもそれほど素早く改善しないが、それでも37-38lpmmの良好な結果だ。タムロンは、ニコンやキヤノンの古い85mm F1.8 と比べて、絞り値にかかわらず画面のどの場所でもずっとシャープだ。
  • 軸上色収差は、開放でさえボケの色付きはごくわずかで、全く問題はない。倍率色収差は、0.04-0.06%の低い値で、実写では目に付かないだろう。タムロンの技術者はここではとても良い仕事をしている。
  • 球面収差の補正はタムロンのウィークポイントだ。このレンズには若干フォーカスシフト(絞った時のピント位置の移動)があり、軸上色収差のテスト画像でF2.5からF3.5に絞った時に、後ろ側に明らかなピントの移動が見られる。これは絞り込むとかなり目立つ。F1.8でピントを正確に合わせて絞りながらMTFを測定すると、フォーカスシフトがなければ解像力テストのMTFと同一の結果になるはずだが、実際には、絞るとフォーカスシフトのためにF2.8-F5.6で解像力が伸びなくなってしまう。
  • 歪曲は+0.65%のわずかな糸巻き型で、これはニコン、キヤノンの85mm F1.8よりも大きな値だ。タムロンの歪曲はこのクラスのライバルの中で最も大きいが、それでも+0.65%の歪曲は目立たたないだろう。
  • コマ収差に関してはタムロンは実に素晴らしく、開放時のフルサイズの隅の部分でも円形を維持している。非点収差は小さく、開放でも目立たない。
  • 周辺光量落ちは開放では53%(-2.20EV)の大きな値で、このレンズの大きな弱点だ。このカテゴリでは、タムロンは、より小さなキヤノンやニコンの85mm F1.8に負けている。
  • 逆光耐性は良好で、どの絞り値と太陽の位置の組み合わせでもフレアを出すのは難しく、フレアが出た場合でも、それほど煩わしいものではない。
  • AFは無音で、かなり速い。スタジオのテストでは、AFが完璧ではないものが8%あったが、これは正しいピントの範囲内で明らかなAFのミスは無く、AF精度は全く問題はなかった。遠距離の撮影では若干前ピンの傾向があったが、これはマイクロアジャストの5-6単位で、正しく調整することができた。
  • タムロン85mm F1.8 VC の解像力は素晴らしく、このクラスのレコードホルダーのOtus85mm F1.4やMilvus85mm F1.4に匹敵する性能だ。しかし、欠点もあり、F2.8以上に絞るとフォーカスシフトの影響が見られ、また遠距離の撮影で後ピン傾向があるのでピントの調整が必要だ。
  • 全体として、85mm F1.8 VCは非常によく出来たレンズで、腕に覚えがある人なら非常にシャープな写真を撮ることができるだろう。手ブレ補正と造りの良さは長所だが、現在の価格だとより安価なレンズを選ぶ人もいるかもしれない。
  • 良い点: しっかりとした防塵防滴の鏡筒、素晴らしい中央の画質、良好な隅の画質、色収差の問題が見られない、歪曲が目に付かない、コマ収差がごくわずか、非点収差の良好な補正、好ましいボケ味、静かで正確なAF、逆光耐性が良好。
  • 悪い点: 周辺光量落ちが顕著、球面収差が目立つ、被写体までの距離によっては前ピンが見られる。

 

このレンズの解像力はOtusに近いレベルで、また色収差も極めてよく補正されていますが、フォーカスシフトが報告されているのが少々気になるところですね。

また、遠方の被写体ではAFに前ピンの傾向が見られるようですが、これはマイクロアジャストで調整できる範囲内ということなので、アジャストが可能なボディで使う場合は、大きな問題はなさそうです。