ニコン「Z35mm f/1.8S」は高価な価格を正当化できる光学性能

LensTipに、ニコンのZマウント用の広角単焦点レンズ「Z 35mm f/1.8S」のレビューが掲載されています。

Nikon Nikkor Z 35 mm f/1.8 S

  • フォーカスリングはフォーカスバイワイヤ(モーター駆動)で、回転角はリングを回す速さによって変わる。速く回すと最短から無限遠まで90度未満で、ゆっくり回すと180度に達する。非常にゆっくり回すとピントが動かないので、回転角の計測はやりにくい。フォーカスリングは金属製で、レンズ同士がこすれると非常に傷が付きやすい。
  • 中央の解像力は開放で58lpmm前後で、良像の基準値(42-44lpmm)を大きく上回っている。加えて、絞ると素早く改善しF2.8で79lpmm、F4では82lpmmの見事な値になる。唯一問題なのは、F1.8とF2のときの隅の解像力(約33lpmm)で、この値は許容範囲内とは言い難い。しかし、幸いなことに絞ると非常に素早く改善し。F2.8では既にかなり良好な解像力になる。全体として、このレンズの解像力は非常に肯定的な評価だ。

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  • 軸上色収差は、ニコンの一眼レフ用のF1.4やF1.8クラスのレンズでは、しばしば多くの問題が見られたが、Z35mm f/1.8Sでは大幅に進化していて、完璧ではないもののそれほど目立たない。
  • 倍率色収差は、開放時の隅で0.04%前後の「非常に低い」と「低い」の境界線上の値だ。一眼レフ用の35mm f/1.8Gが0.14%に達していたことを考えると、これは実に素晴らしい値で、タムロンSP35mm F1.8 VCやキヤノンEF35mm F2 ISと比べても少し優っている。
  • フォーカスシフト(絞りによるピント位置の移動)は全く見られない。
  • 歪曲は-1.28%のタル型で、このクラスのレンズとしては平均的だ。一眼レフ用の35mm f/1.8Gは-1.62%なので、大きく改善しているのが分かる。
  • コマ収差は、このレンズの大きな欠点で、隅の収差は1段絞っても解消しない。しかし、35mm f/1.8GやEF35mm F2 ISのコマ収差はそれよりも更に悪く見える。
  • 非点収差は11.4%で、これは中程度の値だだ。35mm f/1.8Gと比べると明確に改善しているが、EF35mm F2. ISやタムロン35mm F1.8 VCには及ばない。
  • 玉ボケは、内部の均一性が非常に高くとても素晴らしい。唯一の欠点は、リングボケが見られることだ。口径食は目立ち、F3.5でも欠けているのが分かる。
  • 周辺光量落ちは、開放で57%(-2.4EV)の高い値で、これは35mm f/1.8Gより劣っているが、それでもタムロン35mm F1.8 VCやキヤノンEF35mm F2よりは優れている。
  • 逆光耐性はとても良好で、ほとんどのケースで問題は見られない。唯一の例外はかなり絞り込んだ時で、この状態で四隅のすぐ外側に太陽があると、顕著な光線が出る。
  • AFは静だが完全に無音ではない。AF速度は中程度で、最短から無限遠までは0.6-0.7秒だ。AF精度はスタジオでも屋外でも問題なく、合焦ミスは2%未満だった。
  • Z35mm f/1.8S は多くの点で一眼レフ用の35mm f/1.8クラスのレンズを上回る性能だが、価格はかなり高い。もっと安価ならよかったが、それでも、このレンズの光学性能は購入を十分に正当化できるものだ。
  • 良い点:しっかりした防塵防滴で金属製の鏡筒、素晴らしい中央の画質、軸上色収差が穏やか、倍率色収差が目に付かない、球面収差がそれほど目に付かない、歪曲の問題が見られない、静かなAF、良好な逆光耐性、素晴らしいボケ。
  • 悪い点:周辺光量落ちが目立つ、コマ収差が目立つ。

 

開放では若干隅はソフトなようですが、1段絞ると全域で極めて高い解像力になり、申し分の無い性能という印象です。色収差も非常に良く補正されていますが、コマ収差が目立つようなので天体用にはあまり向いてないかもしれませんね。

F1.8のレンズとしては高価で大柄なレンズですが、性能は一眼レフ用の35mm F1.8より良くなっているので、価格や携帯性よりも性能重視の方には魅力的なレンズと言ってよさそうです。