CineDに、キヤノンヨーロッパ製品管理部長のEOS R5/R6のオーバーヒート問題に関するインタビューが掲載されています。
・Canon Interview: R5 and R6 Overheating Questions Answered
- CineDのインタビューワー:EOS R5とR6は、最初に市場に送り出されたときに深刻なオーバーヒート問題に直面したが、現在は、最新のファームウェア1.1.1の導入により、状況は遥かに改善している。しかし、現在の状況について回答が得られることに期待して、キヤノンにインタビューを求めた。
- (8K動画のミラーレスカメラへの導入は早すぎると思わないか?)
誰かが、できることの境界を押し広げなければならない。新型のゲーム機は8Kに対応しており、8Kテレビを推すブランドも増えている。4K機のEOS-1D Cを2012年に発売したが、フルHDへの移行期になぜ今4Kなのかと疑問視された。近い将来2012年時点の4Kテレビよりも多くの家庭で8Kテレビが導入されるだろう。
8Kはハイブリッド撮影の目標でもあり、4Kはスチルの1/3の品質しかないが、8Kなら後から高品質のスチル画像を切り出せるので、動画で撮影するのかスチルで撮影するのか心配する必要はなくなる。 - (EOS R5/R6は動画のオーバーヒート問題に苦しんでおり、新ファームウェアでこれらの問題が克服しようとしているが、オーバーヒートの原因は正確にはどこにあるのか?また、新ファームウェアでは何をしているのか?)
防塵防滴のボディに最先端の機能を詰め込んでいることから、オーバーヒートの問題が起こっている。
シャットダウンする理由は、まず、熱い物体を長時間持つと低温火傷になるか可能性があるためで、2つ目は、カメラの内部のコンポーネントを過熱から保護するためだ。我々はユーザーを火傷から守るために、カメラボディの外部の温度を制限している。
録画時間は、カメラ本体内部の温度と前回の使用状況(稼働時間)の情報を監視して管理している。新ファームウェアでは、温度検知システムを改良し、動画記録時間の制御アルゴリズムの更新した。この2つの組み合わせによって、外部の冷却等を考慮した録画時間の延長が可能となっている。
また、短い時間の動画を連続して録画するケースで、カメラの電源を素早く入れたり切ったりした場合の動画の撮影可能時間の表示を改善した。 - (8K RAWの記録時のEOS R5の制限の一部を解除する方法がネット上で出回っているが、カメラやセンサーに危険はあるか?)
ユーザーの安全を確保するために本体内の温度や最新の使用状況情報を監視して、録画時間を制御しているので、録画中にバッテリーを抜いたり、カメラを分解してリセットすることは勧められない。
このような方法で内部メモリをリセットすると、カメラが動作しなくなったり、温度制御が異常になり、カメラが予想以上に過熱して電源部品が正常に動作しなくなる可能性がある。 - (一部の人は、キヤノンが録画時間を制限することで、プロ用のEOSを守ろうしていると捉えている。ユーザーを安心させるために強調したいことはあるか?)
それは陰謀論に属するものだ。そのようなことをしたら、ユーザーは特定の機能を得るためにより高価なカメラを購入するのではなく、競合他社のカメラシステムに乗り換える可能性が高いので、賢明なビジネス戦略とは言えないだろう。
カメラにはできることとできないことがあり、その要因はカメラの価格に基づいて使用されるコンポーネントで、なんでもできるカメラを造るには、高価なコンポーネントが必要になる。
各製品の主要な顧客を分析し、主要な顧客が必要な機能を決定することが重要だ。我々はカメラを(故意に)不自由な状態にすることはない。我々の目標は、常に主要な顧客によりよい製品を提供することだ。 - (EOS R5/R6の録画時間は将来まだ改善されるのか? それともこれで改善は終わりなのか?)
これらの製品は今後も強化していく予定だが、ファームウェアのアップデートだけでは克服できない限界もある。
CineDのインタビューワーは、オーバーヒート問題をかなり踏み込んで聞きましたね。キヤノンが「Cinema EOSなどの上位モデルを売るために意図的にEOS R5の録画時間を制限している」という説が出ていますが、これは陰謀論に属するものということでキヤノンは全面的に否定しています。
確かに意図的に動画機能の制限をしたら、そのことによるCinema EOSへの移行よりも、ライバル社のハイブリッド機への乗り換えの方が多くなるかもしれませんね。
LensRentalsの検証でも、EOS R5がボディ内部の温度を見て録画を停止しているように見えるので、このキヤノンの主張は、ある程度は裏付けられているようです。
車好き
あ~なるほど、温度+稼働時間なんだ。
電池抜くと履歴が消えるから録画時間が伸びると。
録画時間の謎が解けてきたような気が。
めんしす
まあ壊るとか低温やけどで訴訟されるリスクを避けた結果なんだと思います
低温やけどはISOでも明確な基準がありますので
かけら
意図的なバイアス無しで考えれば、R5の録画制限が品質基準を満たすためのものであることは、私たち一般人でも察してはいたと思います。
注目度が高かっただけに様々な(そして断片的な)分析が行われ、疑惑が疑惑を呼びました。
実際のところ、熱シミュレーションが発達した近年において、温度センサの現在値のみで温度周りの保証を行なっている製品って殆どないのではないでしょうか?
今回、"過熱した"騒動に対して公式な見解が示された意味は大きいと思います。
InGaN
今回の熱問題は問題提起側が推測に推測を重ねて悪評を振りまいていたので、キヤノン公式のコメント+冷静な反応があって良かったと思います。
「陰謀でないなら熱設計情報を公開すれば良い」的な声もありましたが、企業がコストをかけて蓄積したノウハウを公開できるわけがありません。
今回の件で逆にキヤノンの安全に対する設計思想が確たるものなんだなーという印象を持ちました。
しかしながら低音やけど対策ということであれば、個人的にはソニーの「自動電源OFF温度:高」みたいにカメラ表面に触らないことを前提とした制限緩和モードを期待したいけど無理ですかねぇ。
2石
温度による電源部品の故障の可能性を言われてますね。
これはCPU温度等を根拠に書かれていた憶測が間違っている事を言いたいのではないかと思いました。
グラハム
噂の範囲を出ない話で
メモリーカードの発熱をカメラ側が検知できないのでカードの発熱データを元にタイマーを設定してあるとか言われてますね
記録したデータが熱で全部飛んだらメモリーメーカーでなくキャノンにクレームが来そうですから妥当な対応だと思います
とおる
冷蔵庫入れててもオーバーヒートするという実験結果がありましたが、稼働時間が長くなれば温度とは無関係にオーバーヒート条件を満たしてしまうのでしょうか?
それても、もう新ファームでは起きないのですかね?
☆けむり
8K動画からの高画質静止画の切り出しは、デジカメの究極の姿だと思います。現時点R5の約3540万画素も有れば十分でしょうから、キヤノンの考え方も理解できます。
但し、熱問題、連続撮影時間の制約は、撮影の自由度も制約しますので、今までのデジカメのデザインに固執しない、8K機能を十分使えるカメラが出ても良いと思うんですけど。
キャノンはこういったゲームチェンジャーは得意だと思うので、既に考えてるかもしれませんね。
管理人
凧さんへ
2012年で間違いではありません。前段の説明がないとわかりにくいようなので、その部分に少し加筆しました。