シグマ「fp L」は見栄えのする画質だがAFはライバルに後れを取っている

写真家のDustin Abbott氏が、シグマの新しい高画素ミラーレスカメラ「fp L」 のレビューを公開しています。

Sigma FP-L Mirrorless Camera Review

  • オプションのEVF-11が用意されているが、これは高価(699ドル、キットで2999ドル)なアップグレートだ。このEVF-11の取り付けは端子カバーを外し、カメラのカバーを曲げながら3つの端子を同時に合わせて、締め付け用のホイールで固定するというかなり繊細な作業で、下手をするとパーツにダメージを与えるのではないかと心配になる。
  • EVF-11は上下に稼働し、368万ドットの優れた解像度で倍率は0.83倍だ。60fpsのリフレッシュレートはそこそこだが、アクションカメラではないので、おそらくこれで十分だろう。
  • EVFやグリップを取り付けると、fp L はソニーα7R IVよりも大きく高価なカメラになってしまい、またEVFと同時にホットシューは使えない。これは多くの人は納得いかないのではないかと思うが、シグマはそれでいいのだろう。

  • fp Lのボディシェルはアルミダイキャストで、頑丈でよく出来てる。フロントグリップはなく、背面にわずかに隆起したサムグリップがあるだけで、カメラをつまんでるような感覚だ。小型軽量のレンズ使用時は問題ないが、重いレンズとの組み合わせではグリップが欲しくなる。
  • このカメラの気に入ってる点は、シグマが放熱の問題を認識していることで、最近のキヤノンやソニーのカメラではオーバーヒートが問題になっているものがあるが、fp Lは4つの側面全てにヒートシンクを組み込むことで、これに対処している。しかし、恐らくこのヒートシンクのために、モニタが動かせず固定式になっており、テスト中に多くの制約があった。
  • モニタのタッチ操作は限られており、フォーカスポイントの選択や移動はできるが、メニュー操作はできない。また、キヤノンやソニーのカメラよりも入力時のタイムラグは大きい。このメニューの見た目は本当に気に入ってるので、これは残念だ。

  • ホイールとボタンは適切な配置で感触はとても良好だが、露出補正ダイヤルが無いのは残念だ。また、EVF装着時は電源スイッチを操作しにくい。
  • メカシャッターはなく、照明によってはバンディングが出るのと、フラッシュの同調速度が1/15秒なのは深刻な制限だ。もう一つの問題はIBISの非搭載で、シグマのDNレンズにOS搭載レンズが1本しかないことが問題を更に大きくしている。つまり安定した動画を撮るには常に三脚かジンバルが必要で、コンパクトでどこにでも持ち歩けるカメラではなくなる。手持ちでは動画はほぼ使い物にならない。

  • AFはプリプロダクションモデルなので改善される可能性がある。カメラにフォーカスポイントを自動選択させる方法では、最近の多くのカメラは90%は正しい被写体を選択するが、fp Lは状況によってはフォーカスポイントが定まらずピントが合っていないことがあった。
  • 瞳AFにも問題があり、複数の人物がいると、AFポイントが人から人へと飛び回り続け落ち着かない。作例では、どの人の瞳にもピントが合っていなかった。この落ち着かない挙動は動画AFにも影響しており、ゆっくり歩いてくる人物を上手く追尾できなかった。また、静止している人の場合でもAFは細かい調整を続けていた。fp LのAFシステムは洗練されておりらず、ほとんどの競合他社に後れを取っている。AFは引き続きシグマの弱点で、ファームウェアによる改善を期待する。

  • ローパスフィルターが採用されているため、少し解像力は犠牲になっているが、スチルや動画の擬色を抑える上で大きな効果があり、これは正当なもののように思われる。
  • 高感度はISO1600ではわずかなノイズが見られるが、ISO100からほとんど変化せず、コントラストも同程度だ。ISO6400ではノイズが少し大きくなるが、まだ十分に実用になる。ISO12800からはコントラストが上がり始め、ISO25600では更にコントラストが上がり画質が低下し始める。実用的な上限は12800で、これはこのような高画素カメラとしてはかなり良好だ。
  • ダイナミックレンジは良好で、4段分持ち上げてシャドウ部を補正しても影響は少なかった。しかし、露出ーバーの補正では2段分でも問題が見られ、3段分だと多くの情報が失われる。全体的なダイナミックレンジは、α7RIVに若干劣っているが、十分な広さだ。このカメラからは非常に繊細で見栄えのする画像が得られる。

  • fp L は高画素機としては信じられないほど小型軽量だが、オプションのアクセサリを追加すると、そのメリットが失われる。これは価格についても同じことが言える。AFの問題とIBISの非搭載は重大な欠点で、IBIS非搭載はポケットに入れられるカメラの用途を制限するものと感じる。
  • 非常に軽量な高性能なカメラが必要でアクセサリーなしで使う人(バックパッカーや旅行者)と、ケージを使ってアクセサリーを付けるビデオグラファーがfp Lの潜在的な顧客だろう。しかし、何でも上手くできるカメラを期待するようになった市場は、あまりfp Lに感銘を受けないかもしれない。このカメラはニッチな人たちのための専門的なツールだろう。

  • 長所:最小最軽量の高解像度フルサイズミラーレス、オーバーヒートの問題がない、長時間の録画、Webカメラになる、高品質の造り、ネイティブDNG形式ファイル、ロスレスの動画のズーム、外部給電、安価な価格、優れたダイナミックレンジと高感度、モアレが少ない。
  • 短所:IBIS非搭載、内蔵ファインダーなし、グリップなし、使い物にならないフラッシュシンクロ速度、固定式モニタ、一貫性にかけるAF精度、信頼できない動画AF、EVFを追加すると(小型軽量の)メリットがなくなる、バッファが少ない。

 

fp L ではAFに像面位相差AFが採用されましたが、まだAFには課題がかなり残っているようですね。ただ、テスト機はプリプロダクションモデルなので、製品版では改善されているかもしれません。

画質はfpでも高評価でしたが、fp Lも申し分のない画質という印象です。IBISやメカシャッターに関しては、あった方が便利なのは間違いありませんが、大きく重くなってしまうとfpの特徴が失われてしまうので難しいところかもしれませんね。