ニコンは若年層や初めてカメラを買う人へのアプローチを真剣に考えるタイミングにある

PHILE WEBに、ニコンイメージングジャパンのマーケティング本部長、辻卓英氏のインタビューが掲載されています。

DGPイメージングアワード2022 受賞インタビュー:ニコンイメージングジャパン

  • Z 9の「Real-Live Viewfinder」は限りなくOVFに近い見えを実現するとともに、EVFを採用したメリットもきちんと感じられるファインダーにしなければいけない。この両立を実現するために困難を極めた。「ニコンD6」を基準として、解像度をはじめとするスペックはもちろんのこと、見え方などの感触の部分についての最適解を模索した。その答えとして実現したのが、OVFを越えるEVFを目指した「Real-Live Viewfinder」となる。
  • Z 9の「被写体検出オート設定」は、被写体検出9種類の実現と、複数被写体の同時検出を実現する上で、1秒当たり約20コマの高速連写で撮影1コマにかかる時間が非常に短くなっているなか、CV(Computer Vision)の演算、AF(Auto Focus)の演算、レンズの駆動、被写体の種類を判別するなどの処理を入れ込むことの実現にも非常に苦労した。

  • ZレンズはZマウントになることでレンズ設計の自由度が大きく高まったため、光学性能で妥協しないという想いで設計している。Z レンズのラインナップはZ マウントだからこそ実現しており、例えば「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」のように、Fマウントでは実現できなかったF1.2でかつAFを可能としている製品が送り出せたと思う。
  • 動画撮影ユーザーをメインターゲットとしたカメラは「Z 30」が初めてで、マーケティングでも今までにない手法で、結構面白いチャレンジをすることができ、手応えを感じている。売上げは順調に推移しているが、先行しているメーカーもあり、まずは一歩を踏み出せたというところだ。
  • SNSなど告知の仕方にも工夫を凝らし、Z 30で初めてカメラを手にされるような若い人たちにも積極的にアプローチしていく。

  • ニコンは2022年4月に公表した中期経営計画において、2023年の"ありたい姿"を発表した。高齢層やプロだけでなく、若年層を含めたすべてのお客様にニコンを圧倒的に支持していただける姿を描いた。それを実現するためにまずすべきこととして、若年層や初めてカメラを買われるお客様にどうアプローチしていくかを真剣に考えるタイミングにある。
  • 2022年前半は部品供給の問題で市場全体が苦しんでいたが、夏ごろから徐々に回復基調にある。動画撮影を楽しむユーザーが増えるプラスの面も見受けられ、そこへ旅行やイベントが復活して活況を呈すれば、映像市場はますます盛り上がっていくと思う。
  • 一部の部材での不足は継続しており、特にレンズではかなりの時間、お待ちいただく状況が続いている。Zシステムへの移行を背景に、過去の数字から想定した以上の高い支持が寄せられていることも背景の一つとして挙げられる。11月に発売した「NIKKOR Z 600mm f/4 TC VR S」は200万円を超えるレンズだが、過去の経験からこれくらいだろうと予測した想定をはるかに上回るオーダーをいただいた。

  • CP+2023は、いままでのニコンのブースの構えのままでは若い人たちのニーズに応えられないことは明らかだ。かといって、そうした人向けに振り過ぎてしまうと、従来のカメラファンの方には満足できず、入りにくくなってしまう。限られた広さのなかでバランスをどこでとるか。うれしい悩みになる。
  • 静止画はもちろんのこと、これから動画クリエイターにもご満足いただけることが大前提となる。お客様からのニーズや要望も多様化してくることが想定され、それらに十分にお応えして市場を盛り上げていきたい。

 

ニコンは今後は若年層や入門層へのアプローチを変えていくことで、ユーザー層を広げていきたいと考えているようですね。最近のニコンは、エントリーモデルの販売を止めてシェアを追わない戦略に転換していましたが、入門層にアプローチするために、再びエントリーモデルを充実させるのか、それとも他の戦略を取るのか興味深いところです。また、競合他社同様にニコンも動画クリエイターの市場を重視していくようですね。