キヤノンは視線入力を他機種にも展開するつもりだが開発には時間がかかる

DPReviewに、CP+2023の会場で行われたキヤノン開発陣のインタビューが掲載されています。

CP+ 2023: Canon interview

  • (カイラ業界の状況をどう思うか?)
    市場規模の縮小はまだ続いているが、レンズ交換式市場はある程度安定している。一眼レフは徐々に縮小しているが、ミラーレスは更に増加している。これまでと同じような流れで市場は推移していくと考えている。顧客の要望では動画に対するニーズが高まっており、これが市場全体を支えているのかもしれない。

  • (一眼レフからミラーレスへの移行はどう進んでいるのか? RFマウントのカメラとレンズの普及率はキヤノンの期待通りなのか?)
    世界市場と同様に当社製品でもミラーレスカメラの比率が高まっている。昨年はミラーレスはレンズ交換式市場の約7割を占めていた。しかし、一眼レフを好む顧客も依然として一定数おり、そのような顧客も大切にしている。

  • (視線入力AFは、今後より多くのボディに搭載されるのか?)
    どのようなカメラシステムでも、より簡単で快適な操作方法を考えるのがカメラメーカーとしての使命なので、視線入力は他機種にも展開していくつもりだ。同時に、視線入力の性能と使い勝手の向上も図っていきたいと思っている。しかし、視線入力は、開発に時間がかかり、製造・開発にコストがかかるものなので、すぐに他機種に展開されるという過度な期待はしないで欲しい。

  • (被写体追尾AFの今後に期待できることは何か?)
    被写体認識やシーン検出の機能を進化させ、視線入力と組み合わせたいと考えている。さらに、ユーザーの意思を自動で認識し、捉えることができるようにしたい。

  • (サードパーティー製レンズを含めてレンズの選択肢が多くなって欲しいという読者の声をよく聞くが?)
    サードパーティから要望があれば、当社の事業戦略に基づいて検討する。CP+ではコシナがRFレンズの開発を発表しているので、すでに知っているかもしれないが、実際に外部の企業ともやり取りをしている。

  • (キヤノンの一眼レフ事業の現在の状況は? 新製品は期待できるのか?)
    一眼レフの重要な要素のひとつが「価格」で、新興国のように価格に敏感な市場もある。新興国では低価格製品の需要もまだ根強い。この需要が続く限り、どの市場でも我々は一眼レフをサポートし続けるつもりだ。

  • (更なるAPS-C専用レンズの登場を期待したいが?)
    APS-C用の3つ目のレンズとしてRF 55-210mm F5-7.1 IS STMを発表しているが、さらに拡充していくつもりだ。

  • (1Dシリーズなどの一眼レフを使い続けいているプロは少なくないが、そのようなユーザーがミラーレスに移行するために何が必要だと思うか?)
    AFに関しては、ミラーレスの方が高性能だと考えている。ユーザーは光学ファインダーとEVFの性能差、解像度や遅延、ダイナミックレンジといったものの見え方を気にしているのではないか。これらの問題を解決し、光学ファインダーに匹敵する撮影体験を実現できれば解決策になるだろう。

  • (専用カメラを使用したことのないスマートフォンユーザーにどのように関わっていくのか?)
    スマートフォンがレンズ交換式市場のライバルであると考えたことはなく、シェアを奪うつもりもない。我々が意図しているのは専用カメラに搭載された大型センサーの魅力や機能、性能に焦点を合わせることだ。しかし、カメラシステムの価格はハードルが高いので、より気軽に大型センサーのカメラシステムを購入できるような価格帯の商品を考える必要があるだろう。

  • (センサー開発の優先順位は? 速度、画素数、ダイナミックレンジ、動画?)
    スチルと動画のどちらを重視するかで要件が決まってくる。すべての要件を満たそうとすると消費電力が大きくなり、同時に価格も高くなるので、何が一番必要なのかを考えて優先順位を決める。

  • (この25年で写真の世界が最も大きく変わったと思うことは何か?)
    最も大きな変化はデジタル化だ。フィルムからデジタルに変わり、今は動画と静止画が融合し、一つのデバイスになっている。ハードウェアの改良に加え、編集や共有などが写真の楽しみ方を変えており、全体のプロセス(ソフトやサービス)が劇的に変化した。

 

キヤノンは視線入力をEOS R3以外の機種にも展開していくつもりのようで、将来的にはミドルクラスやエントリークラスの機種への搭載も期待したいところですね。ただ、「すぐに他機種に展開されると期待しないで欲しい」とも述べているので、次の視線入力搭載機の登場には少し時間がかかりそうです。

一眼レフに関しては、しばらくは生産が続けられそうですが、新興国向けの低価格機の需要に応えるためと述べられているので、ハイアマやプロ向けの機種の登場を期待するのは難しそうですね。