ニコンは動画市場はチャンスに満ちていると認識している

DPRvieiwに、CP+2023会場で行われたニコン開発陣のインタビューが掲載されています。

CP+ 2023: Nikon interview

  • (カメラ業界全体の状況をどう思うか?)
    カメラ業界全体として、特にミドルレンジからハイエンドにかけては、トレンドが底を売っていると見ている。当社の戦略は、まさにそのミドルレンジからハイエンドのミラーレスカメラとレンズにある。特に若い世代は動画の需要が非常に高い。スマートフォンよりクオリティの高いものを求めて周囲との差別化を図っているようだ。

  • (ミラーレスへの移行はどうなっているのか? Zマウントシステムの普及率は期待通りなのか?)
    販売台数で言えば、Zマウントは非常に好調で、一眼レフからの移行は期待通りだ。多くの消費者がニコンのミラーレスカメラを選んでいる。これは、フラッグシップ機のZ9だけでなく、Z fcやZ30を含めた全てのラインナップのおかげだ。ミラーレスの基盤を固めているが、同時に一眼レフを好むユーザーもいることを認識しており、引き続き一眼レフカメラもサポートする。

  • (Z9についてプロからの意見は?)
    プロが革新的だと言ってくれるの点は4つで、1つ目はメカシャッターレス。2つ目はリアルタイムビューファインダー、3つ目は被写体検出、4つ目は動画機能の強化だ。静止画に加えて動画についても非常に肯定的な反応だった。我々のコンセプトはアップデートによって長期的に継続して製品を強化していくことで、最初に市場に投入したZ9と、2回のアップデート後のものはほとんど別物になっている。

  • (コンパクトで手頃な価格の望遠単焦点レンズに注力しているが、これらのレンズのターゲットは?)
    従来は超望遠の需要は高画質だったが、一方で、多少暗くてもよりコンパクトで手頃な価格のレンズが欲しいという声もあった。このタイプのレンズのターゲットは、鳥やモータースポーツ、飛行機などになりがちだが、これらのレンズは軽量でいろいろな場所に持ち運べるので、より幅広いシーンで様々な被写体の撮影に活用できると考えている。

  • (このようなコンパクトな望遠レンズの設計で苦労した点は?)
    光学性能を犠牲にしたくなかったので、製造工程でレンズを薄くする方法を検討したり、軽量素材を用いたりすることで軽量化した。更に、構造強度シミュレーションを用いて、パーツの厚みや形状を最適化し軽量化を実現した。

  • (歴史的に動画機メーカーとして知られていたわけではないニコンがなぜZ9で動画に力を入れたのか?)
    あらゆるカテゴリでスチルと動画のハイブリッドのユーザーが増加していることを実感しているので、Z9で動画のスペックを強化するのは非常に重要だった。ニコンはスチルの会社だと思っている方が多いので、動画撮影者に何度もアンケートを取り、話を聞いてきた結果このような製品になった。

  • (Z9の動画機能は、ニコンの動画市場への本格参入の予告なのか?)
    確かに、動画市場で存在感を高めていくつもりだ。しかし、ボディの開発だけではそれが実現できないことは理解している。動画のニーズを考えたレンズシステムや、充実したアクセサリー、その後の編集システムなどが必要だ。Zレンズは当初から静粛性やブリージングに配慮している。動画市場は市場規模も大きく、様々なニーズがあり、チャンスに満ちていると認識している。今後の展開に期待して欲しい。

  • (Z fcははぜAPS-Cにしたのか? Z fcのフルサイズバージョンを検討しているのか?)
    Z fcの「c」はカジュアルを意味しており、気軽に撮影を楽しんでもらいたいという思いがある。そのためには、小ささと価格が重要で、結果、APS-Cになった。ユーザーからはZ fcのフルサイズバージョンが欲しいという声も相当数寄せられており、詳細は言えないが、このような声にどう応えていくか、引き続き検討している。

  • (フルサイズのZ fcを使ってみたいと思うか?)
    APS-Cにもフルサイズにも良いところはある。カメラの使い方にもよるが、両方使いたい。私はDfユーザーで、Dfは購入した。これのミラーレスバージョンも魅力的だと思う。

  • (AIは今後どのようにフォトグラファーの役に立つのか?)
    被写体やシーンの自動認識を強化することで、AIは撮影の自動化に貢献し、現在では考えられないような撮影方法を実現し、想像を超える映像体験が可能になるかもしれない。我々は写真家がより写真の構図やタイミングに注力できるように、今後も技術開発に取り組んでいく。

  • (この25年で写真にとって最も需要な変化は何だたと思うか?)
    フィルムからデジタルへの移行は多くの人が同意するところだと思う。デジタルへの移行で映像を撮るという体験がすっかり変わった。デジタルになってハードルが下がったことで、誰でも気軽に楽しめるものになった。その延長線上にスマートフォンで写真を撮る日常がある。

 

ニコンは動画市場は大きなチャンスと捉えているようで、「動画市場で存在感を高めていくつもり」と述べているので、今後はより一層動画に力を入れていくことになりそうです。

Zマウントシステムに関しては「非常に好調」「期待通り」ということなので、ニコンはシェアを追っていないのでランキング等ではそれほど目立ちませんが、販売面では成功しているようですね。

Z fcのフルサイズバージョンに関しては、具体的な言及は避けているものの、多くの要望があることと、開発者が魅力的だと思っていることは確認できたので、製品化される可能性は結構あるように感じます。