ニコン「Z 85mm f/1.2 S」はこれまでテストしたレンズの中で最高に滑らかなボケ

CAMERALABSに、ニコンの大口径中望遠単焦点レンズ「Z 85mm f/1.2 S」のレビューが掲載されています。

Nikon Z 85mm f1.2 S review

  • 大きさは全長142mmで、キヤノンRF85mm F1.2 L(117.3mm)よりも遥かに大きい。また、フォーカスリングの太さはかなり気になるところだ。しかし、重さは1160gで、キヤノンRF85mm F1.2Lや、Otus 85mm F1.4、シグマ85mm F1.4 DG HSMなどと同程度だ。
  • 最短撮影距離はMFで0.82m、最大撮影倍率は1:7.8とあまり高くない。
  • フォーカスリングはやや重めだ。リングの回転角は速く回すと40度、ゆっくり回すと180度になる。
  • 付属のポーチは薄っぺらく、閉じるための紐もついていない。これは2500ユーロ以上もするレンズの付属品としては受け入れ難いものだ。

  • AFは40回のテストで外れがなく99.2%の非常に良好な精度だ。近距離からフォーカスしても遠距離からフォーカスしてもピントのバラつきは見られないが、大きくピントが外れた状態からではAFが迷うことがある。無限遠から0.99m(1/10倍)までの所要時間は0.7秒で、Z 85mm f/1.8 Sより若干遅い程度だ。
  • AFの作動音は聞こえるが、近くの人の邪魔になるほどではない。AF-ONボタンによるAFやMFによる高速なピント合わせでは、動画では内蔵マイクで「ウィーン」という音を拾うが、フルタイムAFではAF速度が低下し音は聞こえなくなる。
  • フォーカスブリージングは9%で、Z50mm f/1.2 Sの方が1.2%で遥かに少ない。

  • F1.2の解像力は中央はZ 50mm f/1.2 Sよりも少し甘く、Z58mm 0.95にはかなり負けているが、FXの隅は3本とも同等だ。Z85mm f/1.2Sは中央よりもDXの隅の方がシャープだ。
  • F1.4の解像力はAF-S 85mm f/1.4Gとも比較したが、Z85mm f/1.2Sの方が明らかに優っている。また、F1.4でのOtus 85mm F1.4との比較ではOtusが優れているが、DXの隅だけはZ85mm f1.2が優っている。F1.8に絞るとZ85mm f/1.2Sの中央は、ようやく非常にシャープになる。F2.8以降ではFXの隅も非常に良く写る。
  • 遠景のテストでは、開放ではコントラストの高い輪郭に光が滲んでおりマイクロコントラストが少し低いが、F1.4で改善され、F1.8で中央は非常にシャープになる。F2.8まで絞ると隅もシャープになり、F4ではピクセル等倍で見ても完璧なシャープさに見る。

  • 軸上色収差は開放でもごくわずかで、実写でもパープルフリンジはほとんど見られないが、後ボケにはわずかに緑色の縁取りが見られる。軸上色収差はZ 50mm f/1.2 Sよりも明らかに優れている。絞った時のフォーカスシフトは見られない。
  • 周辺光量落ちはレンズプロファイルを適用すれば、開放でもかなり抑えられており、F2以降では気付かないほどだ。
  • 歪曲は目に見える大きさの糸巻き型だが、レンズプロファイルの適用で完全に補正される。
  • 夜景ではコマ収差は見られないわけではないが、よく抑えられており、F2ではほとんど解消する。
  • 玉ボケは輪郭が弱く色もほとんど付かない。口径食は開放ではかなり目立つが、F2でほぼ解消する。しかし、F2.8以上に絞ると絞り羽根の形がはっきりと見える。
  • Z85mm f/1.2は後ボケが最もソフトで、Noctよりも少し滑らかだ。前ボケはNoctが最も良く、そのほかのレンズはどれも見分けがつかない。明るい空を背景にした木の枝のような厳しい条件の背景では、Z85mm f/1.2には二線ボケが見られる。
  • ポートレートではF1.2ではコントラストがわずかに低めだが、F1.4まで絞るとすぐに改善する。非常にソフトなボケと相まって、ポートレートでは、この特性を好む人も多いだろう。
  • 逆行では光源が画面内にある場合、Z85mm f/1.8SやZ50mm f/1.2Sよりも明らかに多くのフレアとゴーストが現れ、強いベールがかかったようなグレアも出てしまう。しかし、それでも逆光耐性はかなり良好だ。光芒はF4で早くも現れ、非常に綺麗に見える。

  • このレンズはボケ味に優れ、色収差と周辺光量落ちが少ない非常に優れた光学系を備えている。欠点はかなり大きく重いことと、AFの作動音が聞こえること、フォーカスブリージング、フッ素コーティングの欠如で、逆光耐性ももう少し良くなって欲しい。また、中央よりもDXの隅の方がシャープなことにも驚いた(私の希望としては逆の方がよかった)。
  • Nikon Z 85mm f/1.2 Sは優れたレンズで、これまでテストした焦点距離135mmまでのレンズの中で、最高に滑らかなボケを実現している。また、四隅の光量落ちも驚くほど少ない。AFは非常に信頼性が高く高速だ。光学的には開放でも非常にシャープなレンズだが、驚いたことに中心部はF1.8まで絞らないと非常に良好にはならない。しかし、総合的に判断してZ 85mm f/1.2 Sは「大いに推薦」に値すると思う。
  • 良い点:素晴らしいボケ、非常に優れた解像力とコントラスト(F1.2の中央は少し甘い)、色収差とコマ収差が少ない、開放でも周辺光量落ちが非常に少ない、レンズプロファイル適用時は歪曲が最小限、広範囲なシーリング、専用フォーカスリングとファンクションボタン。
  • 悪い点:大きく重い、非常に高価、フレア耐性とゴースト耐性が今一つ、フォーカスブリージングが目につく、フッ素コーティングがされていない、AFの作動音が聞こえる、薄っぺらいポーチ。

 

Z 85mm f/1.2 Sは非常にシャープなレンズでありながら、同時に極めて柔らかく美しいボケを実現しているのは素晴らしいですね。開放時の中央が周辺部よりも少し甘くなるようですが、これはポートレート用の味付けなのでしょうか。

また、欠点としてフォーカスブリージングやAFの作動音が挙げられているので、動画にはあまり向いていないレンズのようですね。