キヤノン「RF28-70mm F2.8 IS STM」はISの技術に「ちょっとした革命的なこと」が起きている

キヤノン公式サイトに、新しい標準ズーム「RF28-70mm F2.8 IS STM」に関する開発者のインタビュー記事が掲載されています。

RF28-70mm F2.8 IS STM |開発者インタビュー

  • 「RF28-70mm F2.8 IS STM」は「F2.8固定のレンズが欲しいが、Lレンズには手が届かないというユーザーがいるのではないか」と考えたことが発案のきっかけだ。ミラーレス時代になりカメラボディがコンパクト化する中で、今まで「F2.8固定はいいけれど、大きくて重いよね」と、躊躇されていた方々に使っていただきたいとの思いでスタートした。
  • 沈胴式は機構の違いだけで、画質自体に差は生まれない。全長が縮むと体積が減るので、軽くできる。当初は540g前後でシミュレーションしていたが、実際の製品では500gを切っていて想定より軽くなっている。
  • 「UDレンズ」は大きければ大きいほど販売価格も高くなるので、普通はレンズ径が小さくなる内側に配置するが、コンパクトで高い性能を出すために、思い切って前玉に大きなUDレンズを使った。
  • メカ系は確実に進化している。RFレンズは最初に4本発売したのが第一世代とすると、その後も進化は続き、このレンズでまた「新しい世代に入ったな」という感じはする。
  • ISを交換レンズに搭載すると「大きく、重くなる」というのが常識だが、実際RF28-70mm F2.8 IS STMが大きくなっているかといえば、そうでもない。「EF24-70mm F2.8L II USM」はISが搭載されていないが、このISを搭載した「RF28-70mm F2.8 IS STM」の方が、むしろ大幅に小さく、軽くできている。これはISユニットの進化が貢献している。
  • ISのレンズを動かす際に、それを支えるメカの姿勢がどうしても乱れてしまう。今回はそのISを構成する一つ一つの部品の重心を正確に計算して、その配置を最適化している。重心がピッタリ一致するように配置し直しているので、理想的な設計になっている。ISは、キヤノンの中でも長年引き継がれてきた技術だが、ちょっとした革命的なことが起きている。理想的な設計で小型化が可能となり、このサイズで500gを切る重量に収めることができている。光学設計部門の上長からは「ISが本当にそんなに小さくできるのか」と、何度も確認された。
  • 「リードスクリュータイプのSTM(Stepping Motor)」というフォーカス機構も進化している。このレンズに搭載しているフォーカス機構は、従来動かしていたレンズよりも重量的には倍くらい重いレンズも動かせるほどパワーアップしてる。上位機種にはUSMを採用してきたが、これはパワフルだが大きくて高い。それを、小型なSTMで倍くらいの重さを動かせるように進化したというのが、このコンパクトさに貢献している。
  • 通常のSTMはオープン制御だ。簡単に言うと、モーターを決まった速度で回して、決まった位置で止める。すごくシンプルな制御だ。それが今回のSTMにはモーターの回転数を読み取るセンサーを入れている。望遠ズームやマクロレンズでは稀にこういう高度な制御をするフォーカス機構を入れていたが、それを初めて標準ズームに搭載している。
  • EFマウントでは通信量が少なくてできなかったことが、RFマウントは大容量・高速通信により実現できるようになった。例えば、収差の電子補正やIS協調制御などだ。レンズ自体に書き込めるデータ容量も大きくなっており、以前のマウントからは、何十倍という容量になっている。それが「EOS R システム」のメリットだ。

 

今回のインタビューはレンズに関する技術的な話が多く、なかなか興味深い内容ですね。RF28-70mm F2.8 IS STMはメカの部分でかなり大きく進化しているようで、特にISは「ちょっとした革命的なことが起きている」という新技術によって大幅に小型化されており、これは今後のIS付きレンズの小型軽量化に大きく貢献しそうです。

また、STMも倍くらいの重さのレンズを駆動できるようになったということで、レンズ設計の自由度が高くなりそうで、非Lの大口径レンズが作りやすくなりそうです。