X-H2を製品化するとしたら何らかの革新的なものが必要

Imaging Resource に、フジフイルムのジェネラル・マネージャーのインタビューが掲載されています。

Fujifilm Q&A

  • (3月に会ってから5ヶ月ぶりになるが、新型コロナの影響は?)
    製造工場の操業とサプライチェーンは、既に正常化している。中国とフィリピンの工場も通常の操業に戻っている。サプライチェーンのトラブルもあったが、現在では問題はない。

  • (グローバルカメラ市場をどのように見ているか?)
    4月が最悪で、その後徐々に回復している。富士フイルムの場合は、市場の動きよりも順調だったと考えている。X-T4の需要は非常に多く、X100Vも予想よりも売れている。製品が独自性があり革新的なものであれば、顧客は厳しい状況下でもカメラを購入する。

  • (今後のカメラ市場の予想は?)
    CIPAは前年との比較で20%の縮小を報告しており、市場全体は更に縮小する可能性はあるが、ミラーレスセグメントのみ、またはハイエンドのセグメントのみで見ると、CIPAのデータほど悲観的ではないはずだ。我々はよりハイエンドな市場に焦点を合わせている。

  • (X-T3とGFX100の販売は順調に見えるが、これについてコメントしてほしい)
    GFX100の販売は予想を大幅に上回っている。X-T3の需要も一貫して非常に多い。その理由は、他社がフルサイズミラーレスに焦点を合わせている中、富士フイルムはそのカテゴリを意図的に無視し、リソースをGFXとAPS-Cに集中させたためだ。他社とは違うアプローチをした。

  • (米国ではGFX 50Rがわずか3500ドルで販売されている)
    3000ドルから5000ドルはフルサイズのハイエンドの価格帯で、我々は中判カメラの顧客基盤を拡大したいと考えている。この価格帯のカメラを検討するなら、中判にアップグレードすることもできる。

  • (アダプターを使ってXFレンズをGFXでクロップで使えるか?)
    フランジバックが異なるので対応できないと思う。EFレンズをGFXに装着するサードパーティー製のアダプターは多数存在し、AFも可能で人気がある。

  • (GFXの購入者はフルサイズからGFXに移行しているのか?)
    GFXの顧客の70~80%は富士フイルム以外のカメラから来ている。おそらくフルサイズ一眼レフからの移行で、Xシリーズからの移行はそれよりずっと少ない。これがGFX 50Rの価格を3500ドルに設定した理由の1つだ。

  • (GFX 50Sはまだ売れているのか?売れ筋はGFX 50Rと100に分かれている?)
    現在、月間の販売ボリュームではGFX100がトップだ。GFX 50Rが100と同程度のボリュームで、GFX 50Sはその半分程度だ。GFX100の販売は、当初計画の予想よりも50%以上も上回っている。

  • (GFXのレンズの装着率は?)
    データは無いが、レンズ装着率は、GFX100は50Sと同程度で50Rより高いだろう。全体として、カメラ1台あたり3本以上のレンズが販売されていると思う。この値はXシリーズのカメラよりも遥かに高い。

  • (人々は次のカメラに何を求めていると思うか?)
    より小さく、より安く、より使いやすい。常に挑戦だが、X-T4とX-H1を比較すれば、それは数年で達成できることが示されている。

  • (AIについて)
    将来の写真撮影に有用なAFについて研究調査している。現在の画像処理エンジンはAIに対応するのに十分なパワーがないが、将来のカメラには搭載されると思う。

  • (ボディ内手ブレ補正とレンズ内手ブレ補正の協調動作について)
    X-T4とX-H1は協調して手ブレ補正の効果を向上させることができる。GFX100は、レンズ内補正があれば、それでほとんど全てまかなえるため協調動作はしない。補正効果の大きさは、それぞれのレンズのイメージサークルの大きさに依存する。一部のレンズはイメージサークルが大きいので、ボディ内手ブレ補正ユニットを更に大きく移動できる。

  • (X-T4の手ブレ補正ユニットはどのように小型化したのか?)
    コイルスプリングをなくし、電磁コイルに変更した。また磁石をセンシング用と移動用を兼用にして6個から3個に減らした。X-H1と比べて30%小さくなっているが、ブレの検出精度は8倍高くなっている。

  • (X-T4のシャッターは静かで連写が速く30万回の耐久性があるが、どのようにして実現したのか?)
    素早く始動し停止する新型のコアレスDCモーターを開発した。2つ目は、耐久性と信頼性を高めるためにX-T3のシャッターユニットを詳細に分析し、弱い部分を調査し、素材をプラスチックに変更した。そして、金型へのプラスチックの注入位置を変更した。3つ目に衝撃を吸収するために新設計のクッション用のスプリングを採用した。ノイズを抑えるために、場所ごとに材質や強さ異なるスプリングを使用している。

  • (X-T4の手ブレ補正ユニットはX-Proシリーズでも使われる?)
    スペースの都合でX-Proに採用するのは難しいと思う。

  • (X-H1は1代で終わりなのか?それともX-H2が登場する?)
    X-Hシリーズのカメラの研究開発は今後も続けていく。X-T4はX-H1を置き換えるものではないので、柔軟に考えていきたい。

  • (X-TとX-Hの違いは何か?)
    今はそれを言うのは難しい。おそらく、何らかのブレイクスルーが必要だろう。X-T4発売後に、スタジオ用にグリップが大きく、コマンドダイヤル操作のX-H1スタイルのカメラが欲しいという多くの要望があった。しかし、グリップの大きさだけではX-H2には不十分で、X-H2を製品化するとしたら、もっと革新的なものが必要だ。

  • (X-Pro3やGFX100などに4方向ボタンが無い理由は?)
    全ての製品でボタンと親指の位置、押しやすさ、誤ってボタンを押さないかについて、多くの議論と研究調査を行っている。X100Vは誤って4方向ボタンを押してしまう可能性が高いので4方向ボタンを削除した。X-T4の場合は十分なスペースがあり、誤操作の心配がなかった。

  • (33mmF1.0を50mmF1.0にしたのは?)
    設計段階で33mmF1.0では、非常に大きく重くなることが分かったためだ。もう1つはボケの点で、33mmよりも50mmの方が遥かに美しいボケが得られる。そのため、持ち運びが容易で、より優れたボケが得られるレンズを提供することにした。

  • (X-Pro3の背面のモニタは顧客の要望なのか、社内で決めたものなのか?)
    当初の設計は我々のチームによるもので、写真家の意見を何度も聞いて、それを採用することにした。X-T4とX-Proをあまり似せても意味がないので、X-Proには他にはない独自の仕様にした。X-Pro3のモニタは、写真家の中では好き嫌いがはっきりと分かれている。

  • (X-T3の販売は今後も続けられるのか?)
    需要がある限り製造と供給を続ける。

  • (動画の電子手ブレ補正は従来の機種にアップデートで追加できる?)
    できない。新しいジャイロセンサーが必要となるので。

 

富士フイルムはGFXシリーズもX-T4も非常に良く売れているようで、厳しいデジカメ市場の中で上手く立ち回っているという印象です。

GFXシリーズでは、低価格機でフルサイズ市場から中判に顧客を移行させる戦略を取っているようですが、これは成功を収めているようですね。国内でも最近GFX 50R の価格が大幅に下がって40万円を切ってきたので、価格的には十分にフルサイズの対抗馬になりそうです。

X-H2に関しては開発は進められているようですが、富士フイルムはX-H4にはない何らかの革新的なものが必要だと考えているようなので、製品化までには、まだもう少し時間がかかりそうな雰囲気です。