シグマはフルサイズFoveonの開発を続けているが発売時期はまだ明言できない

Imaging Resource に、シグマの山木和人社長のインタビューが掲載されています。

Sigma Q&A

  • (新型コロナウイルスの影響による現在の状況は?)
    現在は上手くいっている。4月と5月は大変厳しかったが、6月からは売上が回復してきている。この厳しい時期でさえ、自宅や庭で写真を楽しむためのマクロレンズは人気を維持していた。我々の生産システムは、新型コロナの影響をほとんど上受けていない。

  • (フルサイズFoveonの計画の後退について話せることはあるか?)
    引き続きFoveonの開発に取り組んでおり、フルサイズセンサーの開発も行っている。2020年にFoveon搭載のフルサイズカメラを発売する予定だったが、これは難しいことが分かった。開発は継続するが、いつ発売するか明言することはできない。

    フルサイズFoveonセンサーには、2つの問題があり、1つはいくつかの設計エラーがあることで、いくつかのプロトタイプはどれも適切に動作しなかった。この設計エラーを修正する必要がある。2つ目の問題は製造上の問題だ。

    このプロジェクトから、米国の新しいセンサーベンダー(ファウンドリ)との協業を開始している。この会社はNECの子会社だった。この会社はFoveonと同じ地域にあるため、Foveonと密に連携を取ることができる。しかし、Foveonの製造技術を新しいファウンドリに移転するのは、とても困難で時間のかかる作業だった。

  • (シグマfpについて)
    日本での販売は極めて順調で予想を上回っている。しかし、その他の市場では販売は期待したほど良くはない。

  • (fpは動画に焦点を合わせているように感じるが、それは正しいか?)
    いいえ、スチルと動画は五分五分だ。fpでモードを切り替えると、ユーザーインターフェースが完全に変わることが分かるだろう。

    通常は、スチルと動画で同じインターフェースを使うが、fpは完全に異なるユーザーインターフェースを開発し、スチルと動画に同程度の時間を費やした。fpではスチルと動画は同じ位置付けになる。しかし、我々の主要なターゲットは今でもなお写真家だ。

    特にストリート写真が好きな人にfpを使って欲しい。fpは、大きなカメラを持ちたくない人に最適だ。海外ではfpをビデオカメラと見なしており、それが日本と他の市場との最大の違いだと思う。

    日本ではfpのほとんどのユーザーは、(スチルの)写真家だ。彼らはfpで写真を撮っている。スチル市場は動画市場よりもはるかに大きい。大型センサーを使うビデオグラファーは、通常、映画製作者などのプロなので市場は非常に小さい。日本では多くのユーザーがコンパクトなMマウントレンズでfpを楽しんでいる。

  • (fpの販売は3月から落ち込んだがその後計画通りに売れていたと聞いたが?)
    fpの販売は突如復活した。4月から多くの人が自宅で仕事をしなければならなくなり、ウェブカメラが必要になった。当時、特別なソフトを使わなくてもウェブカメラとして使用できるミラーレスカメラは、fpだけだった。多くの人がfpをウェブカメラとして使用した。これは驚くべきことだった。しかし、日本以外の国では、fpの売上はまだ少ない。

  • (24-70mm F2.8 DG DNについて)
    このレンズの需要は非常に高く、製造のキャパを増やしているはいるが、まだ需要に追いつかない。このレンズは最高の性能だと思うが、価格はソニー製の半額だ。

  • (高品質な24-70mm F2.8 DG DNが安価な理由は?)
    このレンズは光学系の設計中に、高い歩留まりを実現するための組み立てラインも開発したため、歩留まりが非常に高い。レンズ設計者は工場の製造技術者と、開発当初から蜜に連携をして開発にあたった。

    我々はこの組立ラインにも多くの投資を行っている。通常は、(投資を行った分)値段を高くする必要があるが、戦略的な値付けを行った。

  • (APS-CのLマウントレンズを開発するなら、APS-CのFoveonカメラが登場する可能性があるのでは?)
    いいえ、現在はフルサイズのFoveonカメラを開発しており、そのような計画はない。将来、非常に高画素のフルサイズセンサーが載れば、クロップモードでコンパクトなAPS-Cレンズを使用して高画質な写真を取ることができるだろう。フルサイズのレンズは大きく重いので、小さなシステムで使いたい場合は、そのような選択もあるだろう。

  • (Lマウントアライアンスの進捗状況と販売は期待通りか?)
    そのような判断をするには、まだ時期尚早だと思う。システムを完全に構築するには少なくとも3年はかかると思う。ライカSL2は、かなり売れていると聞いている。

  • (マウントアダプターは売れているか?)
    ピーク時よりも少し売れ行きは落ちたが、非常によく売れている。売れているのは、主にEFからEマウントへのアダプターだ。

  • (ユーザーはマウント変換サービスを利用しているか?)
    数は多くないがリクエストはある。EFやFマウントからEマウントに変換したがっている人はいる。また、一部にはEFからLマウント、SAからLマウントに変換する人もいる。

  • (蛍石とFLDガラスについて)
    FLDは蛍石とほぼ同じ特性だが、多くの人が蛍石が良いと言っているため、我々は何度か研究したが、その結果、コストの高い蛍石を使用する理由はないという結論に至った。蛍石とFLDの光学性能に違いはなく、蛍石を使用する理由はマーケティング目的のためだけだろう。

  • (24-70mm F2.8 DG DN以外に予想を超えて人気のあるレンズは?)
    米国では4月から6月までの間、マクロレンズの売上が75%増加した。マクロはこの時期にとても人気があった。APS-C用のレンズでは16mm F1.4が非常に人気があり、多くの人は、このレンズを放送やYouTubeで使用していると思う。

  • (今後の写真業界の予測は?)
    コロナウイルスがなくても2020年に市場は縮小したと思うが、おそらく今年の終わりから来年にけて、底を打って横ばいになると予想している。

    昨年のレンズ交換式カメラの販売台数は850万台でピークの1700万の半分程度になっているが、デジタルカメラ登場前のフィルムカメラは400万から500万台で、もともと非常に小さい市場だった。おそらく500万から600万台で安定すると思う。2000年代中盤から2010年初頭まではブームだった。

 

フルサイズFoveonの開発はまだかなり課題も多いようですが、なんとかクリアして、製品化にこぎつけて欲しいものですね。

APS-CのLマウント機の計画は、ここでは否定されていますが、既存のAPS-CのFoveonセンサーを使ってLマウントのAPS-C Foveon機を造ったら結構需要はあるような気がします。

カメラ市場に関しては、山木社長はフイルムカメラ時代の市場規模+α程度で安定すると見ているようですが、これは、キヤノンの御手洗氏の予想とほぼ同じですね。