ニコンの2021年の新製品はエキサイティングなものになる

DPReviewに、ニコンの映像・企画部門と光学技術部門のマネージャーのインタビューが掲載されています。

Interview: Keiji Oishi of Nikon

  • (1月のインタビュー以来、どのような課題に直面したか?)
    新型コロナウイルスの最初の影響は、消費者が製品の購入を控えることだったが、以後の回復は驚くほど堅調だった。まだ通常レベルまでは回復していないが、予想よりも遥かに良くなっている。幸いなことに世界的な需要はかなり戻ってきている。

  • (Z70-200mm F2.8が大幅に遅れた理由は?)
    遅延の原因は新型コロナウイルスの影響を含む複合的なものだった。我々の課題は、パンデミックでチームの移動が制限される中、最終調整の品質と、部品のサプライチェーンを確保することだった。

  • (2021年に何を期待しているか?)
    2021年に向けて、我々はワクワクしている。Zマウントシステムを完成させため、エキサイティングな製品を提供することを楽しみにしている。Zマウント発表時の未完成なシステムでは、光学性能の良さを使えるのが難しく、これが大きな課題だった。主要なレンズが発売され、Zマウントシステムの勢いが増している現在、ワクワクするような時が来た。2021年末までに24本以上のレンズを揃えて、あらゆるタイプのクリエーターのニーズを満たしたいと思っている。

  • (ハイアマ向けのDX用レンズの開発はするのか?)
    DX用レンズの需要が高まっていることは認識している。DX用のレンズの計画をしており、今後もDX用のレンズを増やして行く予定だ。しかし、Zマウントのレンズは全てZ50でも動作するので、40mmや28mmなどのFX用レンズもDXユーザーのことを考慮して設計を行っている。フルサイズでもAPS-Cでも同じレンズが使えるのはZマウントのメリットだ。

  • (Z50の評判は?)
    これまでのところ、消費者の反応は非常に良く、小型のボディと、カジュアルな撮影から高度な撮影まで対応できる機能が評価されている。

  • (個人的にはどのカメラで撮影しているのか?)
    現在のメインカメラはZ6とD850だ。D850はほとんど完璧な一眼レフカメラで、信頼性が高い。Zマウント機はZ6とZ7で迷ったが、高解像度のD850を持っていたのでZ6を購入した。また、D5500も積極的に使っている。

  • (来年の新製品で最優先事項は何か?)
    光学的な視点から技術の限界に挑戦し、創造性を刺激する製品を造り続けることを第一に考えている。今後の製品については詳細は言えないが、ハードウェアを妥協することなく高機能化しながら、使いやすさと信頼性を高め、撮影の楽しさを追求したいと考えている。具体的にはよりパワフルなマルチメディア機能の追加、性能の強化、機能の拡張などを目指している。

  • (読者の多くはZ6/Z7シリーズより上のZ8/Z9を期待しているが、これについて何か言えることはあるか?)
    Zマウントは発展途上にあり、今後も拡張していきたいと考えている。プロを含めたユーザーの期待を超えるような製品を検討するよう努力しているが、将来の製品開発についてこれ以上のコメントはできない。

  • (来年の交換レンズで最優先されるものな何か?)
    Z50mm f/1.2 Sが発表され、大三元ズームも完成したので、次は薄さを重視したレンズや、Z24-50mm F4-6.3のようなエントリーユーザー向けのレンズ、そして他にはない仕様のレンズなど、幅広い層に訴求できるレンズを提供していきたいと考えている。予定されている40mmのようなレンズで幅広い層にアピールし、更なる市場の拡大を目指したい。Zマウントは(フルサイズでは)最大のマウントで最高の可能性を秘めている。これが我々の最大の強みだ。

  • (新しいZ50mm f/1.2 S の光学的なアドバンテージは?)
    このレンズは、滑らかなボケと驚くほどのシャープネスを完璧なバランスで実現している。光を曲げる角度を最小限に抑える対称的なレンズ構成で、極めてクリアな画像が得られる。大口径マウントの最大の効果は、フォーカスユニットが後方に配置可能で、AF性能が確保できることだ。また、2つのSTMモーターを搭載したのはこの種のレンズでは初めてで、優れたAF速度を実現している。

  • (Fマウントの大口径50mmレンズとZマウント用のレンズの光学設計の違いは?)
    Z50mm f/1.2S の光学設計は、Fマウントでは不可能だ。Zマウントが大きくなったことで、革新的が光学設計が可能になり、エンジニアが限界に挑戦できるようになった。また、ボディ内手ブレ補正の採用でVRを省略することができ、大口径マウントやフランジバックの短さと相まってレンズ内のスペースが確保可能になった。このことで2つのAFモーターが搭載可能になり、マルチフォーカスによって近距離の光学性能に優れたシャープでクリアな描写と高速なAFを実現している。

  • (高性能のZマウントレンズの設計で、性能と価格や重さとのトレードオフはどのように決定するのか?)
    それがレンズ設計の課題で、妥協のない究極の画質を求めるユーザーもいれば、携帯性を求めるユーザーもいる。ユーザーのニーズを理解しながら、優れた画質を提供する。小型で可搬性に優れたレンズも最高の画質のレンズも必要に応じて対応できるのが、Zマウントの強みだ。

  • (Zマウントでレンズ設計の自由度は上がった?)
    Zマウントではより自由度が高まっており、これは光学設計にとってエキサイティングな時代だ。大口径マウントで、より明るいレンズが造れるようになり、ボディ内手ブレ補正の採用により、広角レンズのVR搭載の制約が少なくなり、より高性能なAFが可能になった。また、大きなフォーカスユニットをSTMで駆動できるので、静かで正確に動作し、フォーカスブリージングを抑えた動画に最適なレンズも追求できるようなった。これらは全てZマウントによる設計自由度の改善によって実現したものだ。

  • (Fマウント用のAF-S14-24mm f/2.8GとZ14-24mm f/2.8Sとの光学的な違いは?)
    Z14-24mm f/2.8S は性能と携帯性の両立を第一に考えており、これがAF-S14-24mm f/2.8Gとの最大の違いだ。Z14-24mm f/2.8はZマウントの利点を活かしてよりシャープで、軽く、高速なAFを実現している。また、近距離光源の点像再現性と、逆光耐性が大幅に向上している。要望の多かった前面のフィルターの使用も可能になった。

  • (Zマウントで後玉が大きくなったことのメリットは?)
    光を無理に曲げてセンサーに導く必要がなくなったことだ。小型のマウントでは無理に光を曲げる必要があり、画質が低下してしまうことがある。また、フランジバックの短縮が、レンズの小型化と性能向上に役立っている。

  • (Z14-24mm f/2.8Sは歪曲をカメラ内で電子補正しているのか?)
    ほぼ全てのレンズで独自の補正のアルゴリズムが実装されている。技術の進歩に伴い、光学的、電子的な技術の両方を駆使して、最高の画質を実現している。このレンズは、Fマウントレンズと比較して、より高い解像力と、高度なコーティング技術による驚異的なコントラスト、そして、より優れた色再現を実現している。

 

新製品に関する具体的なコメントは残念ながらありませんでしたが、2021年のニコンの新製品はエキサイティングなものになるということなので、噂のプロ用機を始めとした大物の新製品の登場が期待できそうですね。

レンズに関しては、Zマウントの口径の大きさはかなりレンズ設計に効いているようで、後玉の大きさが確保できるだけでなく、後玉周囲のスペースで、AF駆動系の設計自由度が高まるのも大きいようですね。

Zレンズは、現在は高性能で高価なレンズが中心ですが、今後はコンパクトなレンズや、安価なレンズの登場も期待できそうです。