シグマ「fp L」は画質は素晴らしいが動体の撮影には勧められない

PetaPixel に、シグマの61MPのフルサイズミラーレスカメラ「fp L」のレビューが掲載されています。

Sigma fp L Camera Review: Does Size Really Matter?

  • fp Lの見た目の美しさと質感の高さには驚いた。これまでの小型カメラと異なり、サイズの割りに重量感があり、高い品質を感じた。ボディのマットな仕上げや、グリップ部のフェイクレザーなど、全ての部分の質感が非常に良い。
  • ボタンのクリック感は満足のいくもので、上面のダイヤルには適度な重さがある。例外は背面のダイヤルの造りが少し悪いことで、このダイヤルの下方向のボタンが他の方向に比べて明らかに柔らかく、明確なクリック感がない。
  • 背面にジョイスティックが無いので、フォーカスポイントの移動に手間がかかる。タッチパネルを使うこともできるが、正確性に欠けるので、テンポの遅い撮影でしか使えない。

  • モニタがチルトしないのは不満で、実際に使う時は、ファインダーを使わない場合は他のカメラでも常にモニタを上下に動かしているので、固定式は使うのが難しい。シグマはフルサイズで最小を実現するために液晶を固定式にしたのだろうか? 明らかに便利で、搭載されていて当然のものが犠牲になっている。
  • fp L の最大の魅力は、手にしたときに特別なカメラを持っていることを五感で感じ取れることだ。しかし実際に電源を入れてみると・・・

  • AFは、初代fpからアップグレードされ、49点の像面位相差AFが採用されている。しかし、実際に使ってみるとfp LのAFはかなり酷いものだった。動体ならまだしも、静止している被写体でもAF-Cはほとんど使えない。私は野鳥写真家で2021年に生きているので、カメラのAF-Cを常に利用している。fp LのAF-Cは精度が低く選択肢に入らない。
  • また、シングルポイントAF時のフォーカスエリアの大・中・小のサイズは、どれを選んでも全く同じように動作するように見え、いずれも手前の被写体を簡単に見過ごし、何度も背景にばかりピントが行ってしまう。
  • マルチポイントのAFでは少しマシになるが、その場合も被写体がかなりの大きさを占めていないと、見過ごされて背景にピントが行ってしまう。
  • AF-Sでは確実性が高まるが、動く被写体は追えない。たしかにAF-Cが実用的になる前には、このような方法で写真を撮っていたが、fp Lは新しいカメラなので、もっと良いAFを期待していた。

  • メカシャッターを搭載していないので、動体の歪みは電子シャッターの読出し速度に依存するが、ここまで酷いローリングシャッター歪みが出るカメラは見たことがない。被写体を追うためのパンやチルトの動きをしていなくても、ナチュラルな手の動きで、被写体が歪んでしまい、連写時にフレームごとに少しずつ違って見えるのがわかる。
  • カメラを振って被写体を追いかけると、全てのものが大きく傾き、ゲームオーバーになる。それだけにとどまらず、被写体が動いていてカメラが静止している場合、被写体がちぎれて分離してしまい(鳥の翼が離れた場所に写るなど)非常に奇妙な写真になる。
  • このカメラは読出し速度が遅く、AF性能も低いので、動くモノを撮影する人には勧められない。

  • バッテリーの持ちに関しては、6100万画素機にもかかわらず小型バッテリーで2~3時間撮影できるので良好とする見方と、作動時間だけを見て良くないとする2つの見方があると思う。
  • 手ブレ補正搭載レンズを装着していると、カメラの電源が入っていると、レンズ側で手ブレ補正を切らない限り、ずっと手ブレ補正が動いたままになるのが欠点だ。他のカメラではシャッターボタン半押し後、5秒程度操作しないと自動的に手ブレ補正は切れる。
  • もう一つ気になった点は、連写後にバッファがクリアされるまで、電子水準器とヒストグラムの表示が消えてしまうことだ。UHS-II対応カードを使ってもモニタが表示されるまで2.5秒かかる。

  • fp Lは多くの点で期待はずれのように思われるが、最終的に素晴らしい画質が得られることは間違いない。階調、色調、ダイナミックレンジ、画素数の多さ、どれをとっても素晴らしい。レタッチ耐性も優れていて、厳しい条件の画像を加工しても不自然になることはない。
  • これらの結果から、fp Lが最も適しているのは風景や旅行の写真だろう。これらの撮影では、AFやカメラの動きを気にしないで済むので、カメラを楽しめる。旅先で草花や風景、セルフポートレートなどの撮影をしたが、使い勝手は悪くなかったし、画質も綺麗だった。旅用としてはこの小ささは非常に魅力的だ。
  • しかし、多くのケースでは、何かしらの問題が発生し、他のカメラを選択するべきだったのでは?と考えてしまう。

  • このカメラを買うべきだろうか? 2週間ほど使ってみて答えは「ノー」だと思った。fp Lは欠点もあるが決して悪いカメラではない。風景のような特定のジャンルの撮影ではあと2、3の機能があれば優れたカメラになるだろう。私が純粋な風景写真家で他に選択肢がないなら、悪くはないが、他により充実した機能を持つ選択肢があるので、fp Lは推奨できない。

 

かなり辛口な内容となっていますが、鳥を撮るカメラマンに、AFがあまり強くないfp Lは特に相性が悪い組み合わせかもしれませんね。ローリングシャッターの幕速も遅いようで、動きの速い被写体を撮るのは厳しいそうです。

とは言え、画質は各所のレビューで太鼓判を押されているので、風景や静物などが撮影の中心で、小型軽量のボディを求める人には良い選択肢になりそうですね。