キヤノンは今後は手頃な価格のRFレンズのラインナップを拡大していく

DPReviewに、キヤノンのイメージコミュニケーション事業本部長のインタビューが掲載されています。

Canon interview

  • (キヤノンの積層型CMOSは前世代のセンサーと比べてどのようなメリットがあるのか?)
    より高い画質を実現するピクセルの層と性能を向上させる回路層を備えており、動画の高品質化、静止画・動画の高感度化、ローリングシャッター歪み少ない高速読出しが可能となる。

  • (EOS R3は高解像度の動画にも対応しているのか?)
    現時点では詳細は言えないが、オーバーサンプリングされた4K動画が可能だ。

  • (EOS R3がRFマウントの最上位にあるが、今でもEOS-1D X Mark IIIがフラッグシップ機だと考えているか?)
    EOS-1D X Mark III は信頼性の高さから、今でもフラッグシップ機だと考えている。ただし、一部の仕様ではEOS R3が1D X Mark III を上回っており、従来の定義では、EOS R3はフラッグシップ機と言っていいほどの性能を持っているのも事実だ。RFシステムのカメラに「1」の称号を与えるには更に高いレベルの性能を達成しなければならないと考えており、それに向けて努力を続けている。

  • (EF400mm F2.8L IS IIIとEF600mm F4L IS III はRF兼用の設計で初めから開発していたのか?)
    これらのレンズはデュアルマウント前提で開発したわけではない。EOS Rシステムのリリース後に、マウントアダプターなしで超望遠を使用したいという予想を遥かに超える写真家の意見があったため、EFレンズをベースとしたRFの超望遠レンズの開発を始めた。

  • (RF400mm F2.8L ISとRF600mm F4L ISにコントロールリングが無いのはなぜ?)
    検討はしたが、EFレンズをベースにしたため、コントロールリングを追加するとレンズが大きく重くなってしまうので、最終的には付けなかった。

  • (RFレンズ使用されている技術でミラーレスでのみ可能なものは?)
    RF70-200mm F2.8 L IS USMとRF70-200mm F4 L IS USMは、RFマウントの口径と短いフランジバックの利点を最大限に活かして、EFレンズと比べて大幅な小型化を実現している。また、RF600mm F11 IS STMとRF800mm F11 IS STMは大きなF値でもAF可能なミラーレスカメラでのみ可能なレンズで、これまで想像できなかった小型軽量のレンズを開発することができた。

  • (BRレンズに対する専門家や市場の反応は?将来より多くのレンズのBRレンズを使用するのか?)
    BRレンズはプロ市場からは高い評価を得ている。蛍石やUDレンズ、DOレンズ、BRレンズなど色収差を補正するための光学技術の開発実績があり、最適だと思われるものを利用する予定なので、今後の展開に期待して欲しい。

  • (RF600mm F11とRF800mm F11のシリーズ化は?)
    確実だ。同じような製品の登場を楽しみに待っていて欲しい。

  • (デュアルピクセルAFはクロスセンサーのクアッドピクセルAFに進化するのか?)
    クロスタイプAFとクアッドピクセルAFは確かに検討している。AF感度、超高速化、AIを用いた動体追従性の向上の3つの点からAFの進化を考えている。

  • (コンピューショナルフォトグラフィーが写真の未来と考えている? それとも従来のカメラにも居場所はある?)
    すでにこの技術を使用して画質の向上を図っている。この技術の新たな活用法を積極的に模索し実現を目指している。一方でコンピューショナルフォトがいくら進化しても、光学レンズで一瞬の光を捉えることは写真の基礎であり続けるので、今後も優れた光学設計を追求していく。

  • (光学の観点から今後10年はどうなるか?)
    4K/8KやHDRディスプレイ、それらを超える次世代テクノロジーの普及が見込まれるので、これらのディスプレイの入力デバイスとして機能する高度な光学技術が必要になると予想される。また、AR/MR/VRの普及で、ここにも我々の光学技術が応用できる可能性があると考えている。

  • (今後5年間で画質で大きく進化すると期待できるのは?)
    解像度、高感度、ダイナミックレンジなどの改善が求められていることは把握しており、これらの改善を着実に進めていく。

  • (EOS R5 / R6の売り上げの比率は予想通りか?)
    売上の比率はほぼ予想通りだったが、どちらの機種も予想以上に熱狂的に受け入れられた。しかし、全ての顧客を満足させるだけの数量を製造できなかったのは残念だ。当面はシステムの拡充に力を入れていくが、特にレンズに関してはこれまでハイエンドモデルを揃えてきたが、今後は徐々に手頃な価格帯のレンズを提供していきたいと考えている。

  • (どのようなレンズが最も需要があるか?)
    EOS Rシステムのボディの販売が伸びており、その結果、RFレンズの販売は全体的に好調に推移している。F2.8通しの大三元レンズも好調だ。手頃な価格のRF50mm F1.8も高い需要があり、このシリーズの更なる拡大に力を入れていく。

  • (PowerShot G7Xシリーズなどのマニア向けコンパクトのリリースが鈍化しているが、このカテゴリのカメラはスマートフォンに負けたと考えているのか?)
    スマートフォンの影響は受けているが、新型コロナの影響で、オンラインコミュニケーションツールとしての需要は急増しており、ユーチューバーやブイロガーからの需要もある。引き続きニーズの変化を注視し、必要に応じてラインナップに手を加えることを検討している。

  • (8K動画の将来の戦略における重要性は?)
    8K動画はスチルとほぼ同じ品質で、動画とスチルの境界はますます曖昧になっていくと思う。今後はビジネス分野での8Kの使用に加えて、5Gの普及が期待されるので、8K対応のコンパクトデバイスの開発の優先度は非常に高いと考えている。

  • (Kissシリーズのようなエントリーレベルの一眼レフの需要はどれくらいの期間あると思うか?)
    以前のような高い需要に戻ることはないかもしれないが、エントリーレベルの一眼レフを求めるユーザーは今後も引き続き存在すると考えている。BtoBではKissシリーズがパスポートやライセンスなどのIDフォトブースで使用されている。今後も多様なニーズに応えるため、幅広い製品を提供していく。

  • (RFマウントのAPS-C機は登場するのか? それともAPS-C用のEF-Mマウントにこだわるのか?)
    具体的な計画については言えないが、APS-Cは、大きさ重さや望遠の優位性があり人気がある。顧客の意見に耳を傾け、可能な選択肢を検討していきたい。

  • (EOS Mシリーズは長期的にどのような市場を獲得したいか?)
    EOS Mシリーズは軽量コンパクトなモデルを好むユーザーに人気があり、プロやハイアマはサブカメラとして利用している。今後も多様なニーズに応えるために、EOS Mシリーズのカメラの発展に努めていく。

  • (2021年の最大の課題は?)
    新型コロナの影響は徐々に収まると予想しているが、将来の予想は非常に難しい。市場規模の維持のため、リーディングカンパニーとして市場の活性化に努めたい。今後もミラーレス市場で確固たる地位を築くために、EOS Rのボディやレンズを充実させていく。

  • (コンシューマ向けのデジタルイメージングで消費者のニーズが満たされていないものは?)
    従来のカメラはスタンアロンの範疇にあり、撮影後のソリューションの重要性は認識している。PCやスマートフォンを外部のWebサービスとリンクするクラウドプラットフォームなどを提供することで、ある程度はこれに対処しているが、使い勝手についてはまだ改善の余地があると思っている。

 

EOS R1の開発に関しては、もうオープンになっているようで、インタビューで普通に言及するようになりましたね。EOS R3も相当な高性能モデルになりそうですが、EOS R1はそれをどれだけ超えてくるのか興味深いところです。

RFマウントのAPS-C機に関しては回答を避けている感じですが、EOS Mは今後も発展させていくと述べているので、2マウント体制は当分続きそうな雰囲気ですね。

交換レンズは、今後はRF50mm F1.8やRF800mm F11のような安価なレンズを増やしていく計画のようで、「RFは高いレンズばかり」というイメージを払拭するレンズラインナップを実現して欲しいところです。