ニコン「Z 50mm f/1.2 S」は非常に良くできたレンズだがサイズが大きすぎる

LensTip に、ニコンのZマウント用の大口径標準単焦点レンズ「Z 50mm f/1.2 S」のレビューが掲載されています。

Nikon Nikkor Z 50 mm f/1.2 S

  • このレンズは、間違いなくこのクラスで最も大きく重く、複雑なレンズ構成のレンズだ。
  • コントロールリングは非常に滑らかに回転し、適度な重さがある。
  • フォーカスリングは、F1.8シリーズのレンズでは金属の塗装が剥がれやすく短期間で摩耗したが、このレンズはゴムで覆われており、ニコンがこの問題に対処したのは喜ばしいことだ。フォーカスリングはモーター駆動で、適切な重さで滑らかに動く。回転角はリングを速く回すと90度未満になり、ゆっくり回すと120~130度になる。

  • 中央の解像力は、開放から47lpmm(良像の基準値は41~43lpmm)近い値で、基準値を大きく超えており、全く文句はない。F4でピークの80lpmmに達し、期待通りの性能だ。小さな欠点は、最新のF1.2のレンズにしては解像力がピークに達するのが遅いことだ。ソニーFE50mm F1.2 GM はF2.8で78lpmmに達しており、開放時でも70lpmmでニコンよりも20lpmm解像力が高くなっている。
  • 隅の解像力は良好な画質を得るにはF1.4かF1.6まで絞る必要があるが、ソニーFE50mm F1.2 GMは開放で既に良好な画質が得られ、絞るとソニーの方が8lpmm解像力が高くなる。

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  • 軸上色収差はごくわずかで、1段絞るとほぼ完全に消え、全く問題はない。
  • 倍率色収差は開放では0.05%で絞るとフルサイズの隅では0.07%、APS-Cの隅では0.1%を超えるが、これは「低い」と「中程度」の境界線上の値に過ぎないので文句はない。ここでは、ソニーFE50mm F1.2 GMの方が少し優れている。
  • 軸上色収差のテスト画像から、F1.2からF1.8に絞ったときにピントがわずかに奥に移動している(フォーカスシフトがある)ことがわかるので、球面収差の補正は完全ではないが、これは意図的にわずかな収差を残す戦術のようだ。レンズ設計者はボケが目に優しくなるようにしたかったのだろう。しかし、ボケのために解像力を犠牲にするのは、私の意見としてはリスクが高いと思う。解像力は客観的に測定できるが、ボケは主観的な問題だからだ。

  • このレンズは歪曲の補正を後処理に頼っていないが、歪曲は0.06%のゼロに近い素晴らしい値で、満場の拍手だ!ここではニコンはソニーGMよりも優れた性能だ。
  • コマ収差はAPS-C隅でも小さな翼状になり、フルサイズの隅ではそれが更に顕著になるが、幸いなことに1段絞ると顕著に改善する。ここではソニーGMの方が少し優れている。
  • 非点収差は15.1%の中程度の値で、ソニーGMより少し低い値だ。
  • ボケは非常に満足行くものに見えるが、既に述べた通り、ボケは好みの問題だ。玉ボケ内部は均一で、非球面レンズを使用しているにもかかわらず年輪ボケはわずかだ。ボケの輪郭は絞ると現れるが、それほど強いものではない。口径食は開放時のみ目立つが、F1.8でかなり改善し、F2.5で完全になくなる。

  • 周辺光量落ちは開放では57%(-2.43EV)とかなり大きい値だ。F2では30%(-1.02EV)まで改善し、F2.8で21%(-0.68EV)で問題はなくなる。ソニーのGMは63%なので、ここではニコンの方が優れているが、ニコンはサイズが大きいので、これは予想通りの結果だ。
  • 逆光耐性はそれほど良好ではなく、開放では若干のコントラスト低下が見られ、絞り込むと更に問題が顕著になる。また、太陽が画面内にあるとゴーストが発生しやすい。ここではソニーGMの方が良好だ。
  • AFは作動音は無く、無限遠から最短まで0.9~1.0秒で合焦する。これは良い結果ではなく、最高級の単焦点レンズに相応しくない。しかし、AFはピント位置付近で前後することなく一直線に合焦するので、ピントが移動する距離が小さければ、合焦はかなり速くなる。

  • Z 50mm f/1.2 S は多くの長所のある非常に良くできたレンズで、使っていて楽しめ、素晴らしい写真が撮れることは間違いない。大きな問題は、ソニーがFE50mm F1.2 GMで、より小型軽量で優れたレンズが造れることを示していることだ。
  • 妥協のないF1.2レンズであることを考慮して、大きくて重い造りは許容するが、それでもニコンは少々やり過ぎている。競合他社のレンズを見れば、より小型軽量で優れたレンズが可能であることが分かる。

  • 良い点:ほとんど金属製で防塵防滴の頑丈な鏡筒、中央の素晴らしい画質、隅の実用的な画質、軸上色収差が無視できる、倍率色収差が穏やか、歪曲が実質的にゼロ、心地よいボケ、静かで正確なAF。
  • 悪い点:フルサイズでの明確な周辺光量落ち、逆光耐性は今ひとつ、かなり大きく重い。

 

Z50mm f/1.2 S は各所で非常に高い評価を得ているレンズですが、LensTipの解像力の数値中心の評価だと、そこまで際立った評価とはいかないようです。このレンズはボケが美しく、とても立体感に富んだ素晴らしい描写をするレンズですが、スタジオテストではその辺りが評価されないので、評価が上がりにくいのかもしれませんね。