ソニー「ZV-E10」は価格や機能は理想的だが4K・フルHDともに問題を抱えている

DPReviewに先日発表されたソニーのブイログ用のEマウントカメラ「ZV-E10」のレビューが掲載されています。

Sony ZV-E10 review

  • ZV-E10のスペックはセンサー、AFシステム、動画まで全ての点でエントリーモデルのα6100と同じだが、デザインと機能に関しては、いくつかの大きな違いあり、ZV-1をスケールアップしたカメラとなっている。
  • 動画は4K24p/30pはオーバーサンプリングで、30pではα6100と同じ1.23倍のクロップになるが24pではクロップされない。1080/120pで4倍のスローモーション効果(1.14倍のクロップ)が得られる。
  • α6100と異なりZV-E10では10種類のシネマピクチャープロファイルが使用可能だ。また、S-Log2/3とHLGも利用できるが、8bitなので10bit機と比較すると破綻しやすい。

  • 指向性3カプセルマイクが内蔵されており、外付けマイクを購入しなくても、かなりしっかりした品質の音声が得られる。
  • センサーシフト式の手ブレ補正は非搭載だが、電子手ブレ補正が利用可能だ。手ブレ補正はアクティブと標準の2つのモードがあるが、前者は1.44倍にクロップされる。
  • 背景をC1ボタンでボカす機能があり、ボタンを押すと絞り開放になるが、シャッタースピードが速くなるので、パラパラとした見づらい映像になる。また露出のフラッターが発生するために、これは録画中に使いたい機能ではない。

  • 電子ダイヤルはα6100と同じ上部と背面の2つだが、両方のダイヤルを手の位置を動かして同じ親指で操作することになるので、この操作系は好きではない。
  • ZV-E10にはバリアングルモニタが搭載されている。タッチパネルだが応答性はあまり良くない。タッチパネルは動画とスチルの撮影時のみの操作で、メニューの操作や画像の再生時には使用できない。録画中にモニタに赤い枠が表示されるのは非常に便利だ。
  • マイク端子の位置は適切で、マイク端子を使用してもバリアングルモニタを動かすときの妨げにならない。しかし、ヘッドホン端子、HDMI端子、USB端子はモニタを動かす妨げになる。

  • バッテリーはCIPA規格で、スチルで440枚、動画で80分だが、実際はどちらもこの1.5倍を超えるバッテリーライフだった。
  • AutoISOは基本的なものでISOの上限と下限は設定できるが、AutoISO使用時のシャッター速度に関する設定をすることはできない(他の多くのソニー機ではAutoISOでシャッター速度の下限やしきい値を指定できる)。また、メニューシステムは新しいものではなく、α6100のものと同一で、設定は整理されておらず少々雑然としている。
  • グリップはブイログの自撮りでは快適だが、通常の撮影ではグリップは少し浅くあまり快適ではない。ボディは防塵防滴ではないが、薄っぺらな端子ドアを除けば、十分なクオリティだ。

  • ZV-E10は全体としてブイログのツールとして良好に機能し、AFは動き回りながらの撮影にもかかわらず迷いが最小限でピントをあわせ続けることができた。
  • 不満点は、素早くパンしたり、動きの被写体が画面内に入ったりすると、かなりローリングシャッター効果が目立つということだ。これは特に4K24p(読み出し速度33ms)で目立ち、クロップされた4K30p(読み出し速度27ms)では少し改善する。フルHD(読み出し速度13ms)ではローリングシャッター効果はそれほど目立たない。

  • 富士フイルムX-T200との比較では、4K動画はどちらのカメラも非常にディテールに富んでいるが、X-T200はZV-E10よりも読み出しが速く、ローリングシャッター効果に悩まされることがない。
  • EOS M50(Kiss M)との比較では、4K動画の品質ではZV-E10の完勝だ。動画のAFでもソニーが優位に立っている。
  • ZV-E10はα7III と比較してもしっかりとした画質だが、光量が十分でない環境では、ディテールでα7IIIの方が優れている。
  • ZV-1との比較では、ローリングシャッター効果はZV-1方が遥かに良く抑えられており、搭載されているレンズはZV-E10付属のキットレンズよりも明らかに汎用性が高い。ZV-1のセンサーはZV-E10よりも小さいが、動画の画質は依然として優れている。

  • ZV-E10のフルHDは残念ながら素晴らしいものではなく、ディテールは富士フイルムのカメラのレベルにはほど遠い。1080/120pでは更に不鮮明になる。
  • 動画のAF追尾はかなり粘りがあり、信頼性が高い。メニューから、AFの遷移速度や追尾の応答性など、動画のAFの動作をかなり細かく設定することができる。
  • スチルの画質はα6100と同じで優れている。JPEGは高感度でも魅力的な色再現と豊富なディテールを維持している。RAWは不可逆圧縮なので大幅な調整をすると不自然になる可能性があるが、RAWの画質もとても優れている。

  • ZV-E10はボディデザインと操作性の点では、非常に理に適っている。このカメラはカスタマイズ製に優れ、動画作成用のツールとして上手く機能する。AFはスチルでも動画でも非常に良好な性能で画質もとても優れている。悪い点としては、4Kのローリングシャッター効果が目立つことと、フルHDの画質がこのクラスで最も低いことだ。
  • 価格的にも機能的にもブイロガーの理想に近いカメラだが、4Kはローリングシャッター効果が目立ち、フルHDは並み以下の画質で、このカメラには残念ながら問題の無い動画モードが存在しない。これが気にならなければZV-E10は良いカメラだが、そうでなければ競合他社のカメラをチェックすることを勧める。

  • 好きな点:非常にディテールに富んだ4K、1080/120pのスローモーション動画、クラスをリードするAFトラッキング、バリアングルモニタ、優れた画質、カスタマイズ性に優れている、便利なUSB充電、優れたバッテリーライフ、ストリーミング機能、内蔵マイクのきちんとした音質、ヘッドホン端子とマイク端子搭載。
  • 好きでない点:4Kのローリングシャッター効果、IBISが無く電子ISで1.44倍の大きなクロップ、4K30pの1.2倍のクロップ、フルHDのディテールの不足、タッチパネルで可能な操作が限られ反応が悪い、メニューが長く使いづらい、オートISOで最低シャッター速度を指定できない、ヘッドホン端子を使うとモニタの動きが制限される、上級ユーザーはモードダイヤルがないのにいら立つかもしれない。

 

ZV-E10は中身のデバイスはα6100とほぼ同じということで、クロップやセンサーの読み出し速度などのスペックは一昔前のカメラのレベルで、最新のカメラとしてはもう少しがんばって欲しいところかもしれません。とは言え、4Kの画質はかなり優れているようなので、動きモノの撮影などを除けば、この価格帯のカメラとしては十分な結果が得られそうです。

[追記] AutoISOのシャッター速度設定に関する記述を加筆しました。