ニコン「Z 9」は一眼レフ感覚で撮影できるカメラ

DPReviewに、先日発表されたニコンZシリーズのフラッグシップ機「Z 9」の初期インプレが掲載されています。

Nikon Z9 initial review

  • センサーはフルサイズセンサーの中で最も読み出し速度が速く、画素数はZ7と同じで、ベース感度も同じISO64だ。このためフォトダイオードの設計自体はZ7のセンサーと似ているが、読み出し回路はより高性能なものになっていると思われる。ダイナミックレンジは、初期の印象では、Z7IIと比べて1段下回っているように感じた。
  • AFは1秒間に120回の演算処を行っている。AFは人間、動物、車両など、さまざまな被写体を認識可能だ。他社のシステムと異なり、ニコンのAFは撮影する被写体の種類の指定する必要がない自動モードが用意されており、カメラを向けるだけで何でも追尾してくれる。この被写体認識は無効にすることもできる。
  • Z9のAFのもう一つの大きな特徴は「3Dトラッキング」の実装で、これは一眼レフのものと同じ機能だが、画面全体をカバーできることと、被写体認識を利用できるようになったことで、信頼性が向上している。被写体認識が無効の場合でも、距離情報と色情報をもとに選択した被写体を追跡できる。

  • これまでのZシリーズのカメラと異なり、Z9ではIBISとVRレンズとの協調(シンクロVR)が可能になった。従来はピッチとヨーの動きだけをレンズ側が担当していたが、Z9では両方のシステムが同期して動作する(パナソニック、オリンパス、キヤノン、富士フイルムが既に採用している)。
  • 連写はJPEGで30コマ/秒でα1やEOS R3と同等だが、RAWでは20コマ/秒となる。連写中のブラックアウトはしない。バッファはJPEGか新しいHE RAWで撮影する場合は1000枚以上撮影可能だ。
  • 動画は発売時の仕様では8K30p、8Kオーバーサンプリングの4K30p、全幅読み出しの最大4K120pが可能で、2022年のアップデートで60pのRAWの内部収録機能が拡張される。ニコンはこれにはN-RAWによる12bit 8K60pも含まれると述べている。このカメラはオーバーサンプリングの4K30pを2時間以上撮影可能だ。また、HDMIのレイテンシは従来のニコン機の半分になっている。

  • ボディはキヤノンのハイエンド機のようなエルゴノミクスの一貫性はないが、D5やD6ユーザーは違和感は感じないだろう。最も気になるのは、再生ボタンの位置が左上から右下に移動していることだが、この操作に慣れない場合は、左上のプロテクトボタンを再生ボタンにカスタマイズすることができる。
  • EVFの解像度は369万ドットで他社に比べて明らかに劣っているが、ニコンはこの解像度を通常表示時だけでなく、連写時にもフル活用しているようで、スペックから想像するよりも遥かに優れた、より一貫した体験ができる。また、ニコンはフレーム補間でEVFのリフレッシュレートを高速化したような印象を与えるようなことはしていないと強調している。
  • モニタは従来の上下チルトに水平方向に傾けるためのヒンジを付けたもので、縦位置でも横位置でも光軸の中心に保ちながらモニタを傾けることができるので、フレーミングがしやすい。

  • メカシャッターが搭載されていないので、Z9は電源を切るとセンサープロテクターが閉じるようになっており、レンズ交換時のホコリの付着を防ぐことができる。
  • バッテリーライフはCIPA規格でEVF使用時で700枚、液晶使用時で740枚だが、CIPAの数値は非現実的な低い値に感じることもある。ニコンは連写の場合は5310枚撮れると述べており、この数値は実使用時に近い。
  • Z9のスペックはライバル(α1、EOS R3)と比べて非常に強力で、30コマ/秒がJPEGのみになる点が数少ないZ9が劣る部分だ。また、369万ドットで60fpsのEVFはスペック上では期待外れかもしれないが実際はそれほど違うわけではない。HDRフォト機能は素晴らしく、動画機能は他のどのカメラよりも顕著に優れている。

  • Z9を実際に厳しい環境して使用してみると、プロ用のスポーツカメラとして活躍してくれそうだと感じた。
  • Z9の動画機能は極めて競争力が高く、8K60pに対応する最初のレンズ交換式のスチル/動画機であるだけでなく、アップデート後には、レンズ交換式で初めてProRes RAWと8K RAW動画の内部収録に対応するカメラになるかもしれない。ニコンはスペックの数値を追い求めるのではなく、ビデオグラファーのニーズに耳を傾けており、ProRes HQやLog搭載、8K30pの2時間以上の録画時間はそれを示している。
  • ファインダーは解像度やリフレッシュレートは高くないが、極めて反応がよく安定した見え方で、一眼レフのような感覚だ。また、3Dトラッキングの復活もZ9の一眼レフのような感覚の撮影に、大いに貢献している。

  • 1/270秒のローリングシャッターは一部のメカシャッターよりも高速で、ニコンは一眼レフからミラーを無くすだけでなく、更にその先(シャッターレス)を目指した。
  • Z9の価格はD6よりも安価で、α1発売時よりも1000ドル安く(α1にバッテリーグリップを加えればもっと差は広がる)、EOS R3よりも500ドル安価だ。D850よりはずっと高価だが、D850の画質を、より高速な連写、IBIS、より優れたAF、より優れたレンズで実現できるのなら、この価格を支払うことを躊躇しない人もいるだろう。

 

Z9はカタログ上のスペックもすごいですが、8Kの長回しに対応する放熱機構や連写時の滑らかなEVF表示など、スペックの数字に出てこない部分にも力を入れているのがニコンらしいという印象です。Z9のEVFはOVFに近い感覚のようなので、一眼レフユーザーからの移行も加速するかもしれませんね。

ダイナミックレンジに関してはZ7IIよりも狭いようですが、これはセンサーの読み出しを高速化したためでしょうか。動体の追尾に関しては、まだ少し試写をしてみたという段階のようですが、現時点では好印象のようで、本格的なテストの結果がでるのが楽しみです。