ニコンはミラーレスの中・上位モデル注力するがエントリーモデルも重要だと考えている

DPReviewに、ニコン映像事業部開発セクターマネージャーのインタビューが掲載されています。

Nikon interview

  • (Z9をニコンのスタッフが「D3の再来」と表現しているのはどのような意味か?)
    D3の発売当時、高感度性能の飛躍的進化が評価され、ニコンのシェアが回復し始めたことを言っていると思う。Z9は革新的で高度な機能を備えており、初のミラーレスのフラッグシップ機として、好評を博すことを確信している。

  • (読者の間で、ニコンはミラーレス市場で他社に後れを取っていると思われているが?)
    フルサイズミラーレス参入が遅かったので、追いかけなければならない時期もあったが、レンズラインナップはこれまでにないペースで急速に拡充している。我々はユーザーの声に真摯に耳を傾けており、Z9がその答えだ。製品ラインナップの更なる拡充で、再び力を取り戻せると確信している。

  • (エントリーレベルのレンズ交換式カメラ市場はから撤退したのか?)
    撤退したわけではない。ユーザーの裾野を広げるためにはエントリー市場が重要だと考えており、様々なユーザー向けの製品を提供していく。今後はミラーレスの中・上位モデルに注力していくが、DXのエントリーモデルも重要だと考えている。また、強力な動画機能を搭載した低価格なモデルも重要だと考えており、そしてZ fcのようなスタイリッシュでデザイン性の高い、顧客のライフスタイルにフィットする製品も検討している。

  • (3Dトラッキングはプロ用機のみの技術と考えているのか?)
    ユーザーの強い要望に応えて、ミラーレスではZ9で初めて3Dトラッキングを搭載した。Z9の追従性はD6よりも優れている。この技術はプロ用機のみのものではなく、あらゆるレベルのユーザーに楽しんでもらえるものだと考えている。今後、他機種への搭載も検討していく。

  • (コンサートで使われる高速で点滅するカラーLEDなどが、電子シャッターで問題となることがあるが、Z9ではどのように対処しているのか?)
    メカシャッターとZ9の電子シャッターには違いはない。LEDの点滅の周波数にもよるが、シャッタースピードを遅くすれば目立たなくなる。Z9の電子シャッターはスキャンが非常に速いので、バンディングが発生しやすくなるということはない。

  • (Z9はベース感度がISO64で高感度性能がトレードオフになっていないか?)
    デュアルコンバージョンゲインを採用することで、低感度から高感度までノイズを極限まで抑えて、ダイナミックレンジを拡大している。

  • (Z9の顧客にとって動画の重要性は?)
    動画は現在では非常に重要で、そのニーズはますます高まっている。オンライン動画コンテンツが増えたことで動画制作者の数が増えており、ニュースやイベントのカメラマンはマルチメディアの撮影を求められることが多くなっている。動画からスチルの切り出しのニーズもあり、8Kへの対応でユーザーは動画とスチルの垣根を取り払うことができると考えている。

  • (Z9の画質はZ7IIと同じ画素数だが、画質も同じなのか?)
    Z9の画質は、ローリングシャッター歪みが少ない、オートホワイトバランスの精度が高い、フラッシュの調光の改善、EXPEED7によるノイズの抑制など、いくつかの点でZ7IIよりも優れている。また、Z7IIと比べてフラットな部分の高感度ノイズが少ないのも特徴だ。

  • (今後の一眼レフの生産はどのくらいなると予想している?)
    現在は急成長しているミラーレス製品の開発に注力しており、一眼レフの開発は今後の市場の動向を見て判断する。既存の一眼レフのレンズやアクセサリーなどは、生産・サポートを継続していく。

  • (フルサイズミラーレス市場のシェアをどのように高めていく?)
    ニコン史上最高性能のフラッグシップ機Z9で存在感を高めていく。Z7II、Z6II、Z5などの既存のモデルはハードウェアの制限内で継続的にファームウェアをアップデートし、進化・強化していく。

  • (生産の大半がタイに移っているが、生産拠点は日本に残すのか?)
    タイに生産が集中しているが、品質はこれまでと変わらないニコン品質を補償する。交換レンズの生産は栃木ニコンで継続する。また、仙台ニコンを閉鎖する予定はなく、今後も高精度カメラ部品の製造や製造技術の開発などを行っていく。

  • (レンズの開発で優先していることは?)
    我々の優先課題は、市場にニーズに合わせてプロ用とカジュアルに使えるレンズを引き続き拡充することだ。ユーザーからは望遠を求める声が多いので、400mmや800mmなどのZ9に適したレンズを用意した。また、安価なレンズやDXレンズの要望もあり、28mmや40mm、DX18-140mmなど、選択肢を増やしている。

  • (Zレンズにリニアモーターではなくステッピングモーターを採用している理由は?)
    多くの理由があるが、まず第一にSTMは小型軽量で設計の自由度が高く、動画では作動音を最小限に抑えることができるというメリットがある。ニコンはSTMの性能を最大限に引出すために専用の駆動用ICを独自開発し、複数のモーターをミクロン単位で同期させる制御を可能としている。リニアモーターは大きく重いレンズを動かすのは得意だが、別途センサーが必要となるため小型軽量の製品やマルチフォーカスの製品ではスペース的に効率が悪い。

  • (ニコンのミラーレスカメラにAFのマイクロアジャスト機能があるのはなぜ?)
    ミラーレスカメラでは基本的にAFのマイクロアジャストは不要だが、好みに合わせて微調整したいという要望もあるので、この機能を搭載している。

  • (今後のニコンにとって最も大きいチャンスは何か?)
    SNSの影響でスチル・動画ともに表現が多様化し、よりよい映像へのニーズが拡大しており、ニコンにとっては非常に大きいチャンスだと捉えている。クリエイターをサポートするソフトウェアやアプリの提供を通じて、トータルソリューションを提供する戦略にシフトしていく。また、手頃な価格で動画に強いフルサイズ機や、究極の高画質機など、ユーザーのニーズに合わせたカメラとレンズを多用な視点からラインナップしていく。

 

ニコンは、予想を遥かに上回る高性能機「Z9」の投入で一気に勢いづきそうですね。今後はミラーレスの中・上位モデルに注力ということですが、まずはZ9で開発した技術を採用したハイアマ向けモデルの投入に期待したいところです。

DXのエントリーモデルは、以前に噂が流れたEVFレスのZ30でしょうか。また、Z fcのようなスタイリッシュなカメラも検討しているということなので、多くの人が期待しているZ fcのフルサイズ版のようなカメラが登場する可能性もあるかもしれませんね。最後に述べられている「究極の高画質機」は超高画素機でしょうか。