ニコン「Z 9」は比類の無い存在だがAFには課題がある

DigitalCameraWorldに、ニコンZ9のレビューが掲載され、ダイナミックレンジや高感度ノイズのテストが行われています。

Nikon Z9 review

  • センサーは積層型で圧倒的な読み出し速度を実現しているので、スチルや4K動画ではローリングシャッター効果はほとんど発生しない。
  • 連写は30コマ/秒はJPEGのみでRAWでは20コマ/秒になる。20コマ/秒でも非常に素晴らしいことだが、α1とEOS R3はどちらも30コマ/秒でRAWで連写(ソニーは非可逆圧縮のみだが)できる。
  • Z9の動画は8K60pという驚異的なものだ。8K60pでどれだけの時間録画できるかはまだわからないが、4K120pや8K30pでは、2時間以上撮影しても一度もオーバーヒートしたことはない。
  • Z9はD6より20%小さく10%軽いが、α1やEOS R3よりもかなり重い。深いグリップは縦でも横でも快適に撮影できる。iメニューとISOボタンは縦位置でもアクセスしやすくなっている。

  • モニタは水平・垂直に90度チルト可能で、縦でも横でもハイアングル、ローアングルの撮影ができて便利だ。とは言うものの、それほど頑丈ではなく縦位置での操作が面倒なので、この奇妙で扱いにくい設計のモニタはあまり好みではない。むしろバリアングルモニタを搭載してほしかった。この点でZ9の驚異的な動画スペックに魅せられたビデオグラファーはがっかりするだろう。また、モニタの解像度もEOS R3の半分以下だ。
  • EVFは3000nitsと世界一明るく、Z7/6と同じ369万ドットだ。この解像度はα1の944万、R3の576万を大幅に下回っており、リフレッシュレートも比較的遅く感じ、速いアクションを撮影すると少々頭が痛くなることがある。

  • Z9のサイズと重さは、大きなレンズで撮影する時には役立つが、それにもかかわらず無駄に重いと感じる。しかし、このカメラの性能はあらゆる意味で驚異的だ。
  • バッテリーの消耗はライバルと比べても少なく、7000枚以上撮影し、8K30pで大量に録画したが、バッテリーは75%を若干切っただけで、そのスタミナには目を見張るものがある。

  • AFはニコンで最も先進的なAFシステムが採用され、人物や多くの生き物を追尾できる。しかし、一つの被写体を撮るのは得意だが、複数の被写体が画面内に入った場合はAFは苦戦する。たとえば、バスケットの試合の撮影で選手がダンクシュートを決めると、フォーカスが遠方の観客席に座っている観客の目に移動していまう。
  • 動画ではこのフォーカスの問題は更に悪くなり、特に人が画面を横切るときに、Z9は主題となる被写体にAFが固着する動作に一貫性がなく、どこにピントを合わせるのか迷ってしまうことがある。それでも、D6のコントラストAFとは雲泥の差だ。
  • Z9のAFは瞳を検出する能力は信じられないほど高く、小さな被写体でも人の瞳を見分けることができる。

  • 電子シャッターは人工光の下では懸念があったが、実際にフリッカーやバンディングが問題になることはなかった。
  • 動画はAFの問題を除けば非常に優れており、8Kからオーバーサンプリングされた4K動画は、α1を圧倒している。4K動画の画質にはこれ以上ないほど満足しており、8K30pも非常にクリアだ。しかし、8Kからオーバーサンプリングした4Kや8Kでは読み出し速度が遅くなり、ローリングシャッター効果が目立つようになる(標準の4Kでは問題ない)。
  • 4K120pと8K30pで最も高いビットレートで何度も撮影し、1回の撮影で2時間30分を超える時間録画し動画の限界に挑戦してみたが、Z9は全く問題なかった。8K60pでも同じなのか興味深いところだ。
  • 8K60pとProRes Rawが発売時に利用できないのは許容できない。スペックシートに記載しているのなら、発売初日から使えるようにするべきだ。

  • ラボテスト(解像力):4570万画素のZ9はEOS R3やD6の解像力を大きく上回るが、5010万画素のα1がトップで、特に高感度では強い。

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  • ラボテスト(ダイナミックレンジ):Z9は低感度ではEOS R3に匹敵する素晴らしいダイナミックレンジを実現しているが、ISO3200以上ではEOS R3がやや上回っている。またISO6400以下では、Z9のダイナミックレンジはD6よりも明らかに優れている。

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  • ラボテスト(S/N比):Z9とα1のノイズレベルはほぼ同じだが、画素数の少ないEOS R3はよりクリアな画質だ。

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  • 結論:Z9はこれまで使ってきたプロ用機の中で、最も高性能なオールラウンドカメラだ。無制限に録画できる8K30pの動画はライバルとは一線を画している。AFはα1やEOS R3の際立った性能のものと比べると、骨の折れる仕事で、人間の追尾の維持に苦労することがある。プロ用のハイブリッド機としてはZ9は比類のない存在で、8K60pとProRes Raw対応のファームが登場すれば更に有利になるだろう。価格とパワーの両面でZ9はプロには疑う余地のない選択肢だ。
  • 良い点:120fpsの連写、8K60pの動画、8K30pで2時間半録画できる、無敵のコストパフォーマンス。
  • 悪い点:120fpsの連写がわずか1100万画素、RAW連写がわずか20コマ/秒、モニタがバリアングルではない、2022年までいくつかの機能が使えない。

 

Z9の評価は総合的には極めて高く「比類のない存在」とまで言われていますが、同時にいくつか問題点も指摘されているようです。AFは複数の被写体が画面内に入ったときに、瞳認識の追尾が迷うのが問題のようですが、これは将来のファームウェアアップデートでの改善に期待したいところです。

モニタに関しては、レビュアーはバリアングルを推しているようですが、多軸のチルトが好きな人も多いので、これは難しいところかもしれません。また、Z9のEVFは各所で高評価を得ていますが、ここではあまり芳しい評価ではないようですね。