PetaPixelに、OM SYSTEMのフラッグシップ機「OM-1」のレビューが掲載されています。
- このカメラには奇妙なことに「OLYMPUS」ブランドが残っており、更に不思議なことにこれがOM SYSTEM最後の「OLYMPUS」ブランドのカメラとなるということなので、このカメラを何と呼ぶのか迷うところだ。これはかなり不器用なブランディングだが、カメラの名称が以前の不格好で煩雑な「OM-D E-M Mark何々」からシンプルなOM-1になったことは歓迎したい。
- ボディデザインは、E-M1 Mark II / III のユーザーには馴染みやすいもので、ほとんどのボタンやダイヤルは同じ位置にある。グリップは深くなり完璧なグリップだと思う。ミラーレスカメラとしては、これまでにないハンドリングの良さだ。
- EVFは格段に解像度が上がっており、これまではパナソニックのEVFに常に後れを取っていたが、OM-1で同等かそれ以上になった。このEVFは、発色、コントラスト、鮮明度の全てにおいて素晴らしく、ラグもほとんど見られない。
- オリンパスのカメラのメニューは、正直言ってかなりごちゃごちゃしていたが、OM-1ではメニューが完全に再設計され、論理的でわかりやすいレイアウトで迷わなくなった。項目がグレーアウトしている場合には、その理由まで表示され、他のカメラのようにグレーアウトの原因究明をユーザーに委ねることはない。
- オートISO機能の設定は最悪で、このカメラには優れたIBISが搭載されているにも関わらず、デフォルトでレンズの焦点距離分の1のシャッター速度になる「オート」か、任意の1つのシャッター速度を選択することしかできない。前者はIBISが無駄になるし、後者はレンズを交換したりズームするたびにシャッター速度を変えなければならない。これはオリンパス(OMDS)のカメラの最大の不満点だ。
- センサーの読み出し速度は8msつまり1/125秒程度で、一般的なカメラよりは遥かに速いが、α1(1/200秒)やZ9(1/270秒)、α9(1/160秒)には及ばない。フルサイズより遅いのは残念だが、これは8000万画素という膨大な画素を読み出す必要があるためだろう。OM-1の読み出し速度は、99.9%の写真家には十分な速度だが、スポーツや野生動物の撮影では被写体によっては歪む場合がある。
- メカシャッターの連写の改善も期待していたが、10コマ/秒にとどまっており、電子シャッターの速度が十分ではないので、これは気になるところだ。
- 鳥の実践的な撮影での性能は非常に良かった。AFの追尾は驚きの高精度で、時折前景や背景にAFが行ってしまうこともあるが、すぐに被写体に復帰する。一番気になったのは被写体手前の枝にピントが行ってしまう問題があることで、この点ではAFはソニー、キヤノン、ニコンのベストのカメラにはまだ一歩及ばない。
- レンズは100-400mm F5-6.3 IS PROが素晴らしい性能を発揮したが、70-300mm F4.8-6.7IIはこのカメラのAFに付いていくことができなかった。
- バッファーはRAWで90コマ(RAW+JPEGでも同じ)と小さく、50コマ/秒の連写だと約2秒でいっぱいになってしまい、RAW+JPEGの場合はバッファクリアに38秒もかかる。最速のUHS-IIカードでも書き込み速度が不十分で、CFexpressスロットを搭載して欲しかった。
- OM-1は2段分のノイズ改善と1段分のダイナミックレンジ拡大を謳っているが、それは事実なのだろうか? 私の意見としてはノーだ。画質は確かに多くの点で改善されており、大幅な改善ではないが、それらを総合してよりクリーンになっている。高感度の2段分の改善はJPEGではイエスだが、RAWでは高感度が1段分の改善で、ダイナミックレンジはことによると1段分改善しているかもしれないが、1/2段分に近いかもしれない。しかし、これはOMDSの主張に近く、積層型センサーを採用していることを考えるととても印象的な結果だ。
- 以前からオリンパスのカメラのJPEGはどのメーカーよりも発色が良かったが、OM-1では更に一段階引き上げられ、これまでに見た中で最高のJPEGに仕上がっている。ハッセルブラッドほどニュートラルではないが、それでもOM-1の色は極めて正確で、心地よい温かみがある。
- 手持ちハイレゾはE-M1 Mark III では当たり外れがあり、多くの場合はAIによるアップスケールのような結果になり、真の50MPのディテールは得られなかった。しかし、OM-1では処理時間が短縮されただけでなく処理結果も大幅に改善されており、ニコンZ7と同等の解像度で、発色に優れ、低ノイズでエイリアシングのない画像が得られる。
- 残念なことに三脚使用のハイレゾも手持ちハイレゾもパナソニックGH6やS1のような、優れた動き補正機能はない。OM-1はOMDSによると処理能力にまだ余裕があるということなので、ファームアップで動き補正をぜひ導入して欲しい。
- 10bitのOM-Log400による撮影は極めて柔軟性のある動画を生成できる。ノイズリダクションやシャープネスは適度で、色ズレやバンディングも見られず、広いダイナミックレンジが確保されている。発色もスチル同様に見事で、ややピックがかった色調のパナソニックよりも後処理を必要としない。
- 動画のローリングシャッター効果も最小限に抑えられており、この点ではトップレベルの(グローバルシャッターではない)シネマカメラに匹敵する。クラストップのIBISと優れた動体追尾AFと併せると、動画は多用途に使える完璧なパッケージだ。
- 他のメーカーがやり始めているが、OM-1も動画とスチルのモードや設定箇所を明確に分けて欲しい。また、(壊してしまうのが)恐ろしいmicroHDMI端子は悩みのタネで、フルサイズのHDMI端子が欲しい。
- OM-1は様々な改善により真に検討する価値のあるカメラになった。このカメラはm4/3機の中で最高のカメラであり、全てのフォーマットのカメラの中でも屈指の高性能機だ。m4/3はそれほど熱狂的に支持されているわけではないが、小型で手頃な価格の強力なカメラを求める人ならOM-1は絶対に検討すべきカメラだ。この性能を他のカメラで得ようとすると、2倍以上の価格と、レンズを含めて2~3倍の重量になるだろう。
- ライバルのG9はエルゴノミクスに優れた素晴らしいカメラだが、スピードやAFの追従性でOM-1に太刀打ちできない。
- OM-1を購入するべきだろうか? もちろんだ。スポーツや野生動物の写真家なら、スピード、耐久性、小さなレンズ(フルサイズやAPS-Cと比べて)の組み合わせによって、OM-1は市場で屈指のカメラとなっている。風景写真のようなゆったりとした撮影をする人は、次のモデルを待ってみてもいいかもしれない。
OM-1はAFや連写速度、画質、動画機能など全方位に渡って従来機から大きく改良されていて、PetaPixelのレビュワーの評価は「m4/3で最高のカメラ」「絶対に検討するべきカメラ」という極めて高いものとなっています。
欠点もいくつか指摘されていますが、microHDMI端子やメモリカードスロットの件を除けば、AFの被写体認識やハイレジショットの動体の補完などファームウェアで改善できそうなものが多いので、何度かファームウェアがバージョンアップすれば更に隙のないカメラになるかもしれませんね。
swing
メモリースロットは、計算してみるとUHS-IIの速度を完全に引き出しているわけではないようです。ボトルネックになっているのは画像処理かもしれません。
もしそうなら、バッファ量もファームアップで改善できる可能性ありますね。
ぽにょ
ファームアップでバッファ解放時間は改善されるかも知れませんがバッファ量は変わりません。念のため。
ドラネコ
OM-1本体は魅力たっぷりですね。ただ、このカメラを買う層は鳥など飛びもの撮影の人が多いでしょうから、リーズナブルな価格でAFの速さを活かせる望遠レンズを期待します。
ねこペン
バッファはRAW90コマで不足というのは自分からしたら隔世の感がありますが、2秒と言われるとたしかに笑
とはいえ、ネイチャー系の方にはかなり魅力的なカメラですね。
自分も2年後くらいまでに積み立てて、新品購入しようかな。
下位機種の性能とデザインにもよりますが。
Split
バッファ問題は、最大撮影コマ数を旧機種と比較すると分かります。
E-M1 markIII の10fps連写は、JPEG時カード上限まで連写可能、RAWだと286枚。
OM-1 の10fps連写は、JPEG時169枚、RAWだと139枚。
OM-1の方がバッファが少ないと考えがちですが、JPEGは書き込み速度が足りているわけで、OM-1でも無限にならないとおかしい。
つまり、カード出力で詰まっているわけではなさそう。よってCFexpressにしても解決しません。
OM-1はおそらく高度な画像処理を行っている関係で、出力ではなく入力バッファが詰まってるのだと思います。画像処理エンジンの処理待ちデータが詰まる。
画像処理が高速化する、あるいは画質低下と引き換えにスループットを上げるモードを追加するなどのファームアップは期待しても良いかもしれませんね。
小助
> OM-1の読み出し速度は、99.9%の写真家には十分な速度だが、スポーツや野生動物の撮影では被写体によっては歪む場合がある。
自分がこの希少な0.9%に該当するビギナーカメラマンなんですよね・・・辛い所です。
趣味でプロ野球選手を撮影していますが打者のバットの歪みだけはまだまだ防ぎようがありません。E-M1markIIをずっと使い続けていますが電子シャッターは封印、メカシャッターのみ使用しています。
OM-1の歪みを検証した動画などもボチボチYouTubeに出始めてチェックしています。電車などで検証した歪みの少なさは素晴らしいものがありますが、プロの打者がフルスイングするバットの速さでは間違いなく歪むだろうと思います。
> メカシャッターの連写の改善も期待していたが、10コマ/秒にとどまっており、電子シャッターの速度が十分ではないので、これは気になるところだ。
正にこれもその通りで、電子シャッターが被写体の都合使えない(歪む)のでせめてメカシャッターに期待していましたが10コマ/秒だったので正直ガッカリでした。
う~ん、中古E-M1markIIをもう一台購入するか、新品markIIIを購入するか。これらはメカシャッター15コマ/秒なので。
あくまでも数少ない私のような者の用途に合わないというだけで、99.9%の方々には本当に素晴らしいカメラだと思います。
私のようにオリンパスユーザーで野球撮影が趣味の方々はどうしてるんだろう?
TS
>m4/3はそれほど熱狂的に支持されているわけではないが、
翻訳の文脈なので、若干、ニュアンスの齟齬があるとは思いますが、むしろ、自分も含めてm4/3ユーザーのほうが、ある意味、“熱狂的”な世界観を作り出していると思います。サイズや価格面のことは置くとして、自分自身、m4/3へのこだわりがなければ、普通にニコン、ソニー、キヤノンのフルフレームや、フジのXを使います。
たぶん、「それほどシェアを得ているわけではないが」という感じのニュアンスでしょうね。
α使い
OM-1を使っています。
野鳥の飛翔は山をバックに飛んでいるところを撮影しても
かなりの確率でピントがあいます。
また、ローリングシャッターの歪みもかなり改善されていて
電子シャッターのみでも殆ど問題なく使えると思います。
動くものに対しては本当に劇的に進化しました。
SA-11
メニュー項目グレーアウトの理由が表示されるってのはいいですね。他のメーカーにも見習ってほしい謙虚さだと思います。
高千穂
OM-1はダメ元で買いましたが、25万円のミドルレンジの価格帯にも関わらず驚くほどに高性能でコストパフォーマンスが高いカメラでした。
RAWで1段分というのは同意できると思います。OlympusWorkspaceはOMWorkspaceになって非常に使いやすい編集ソフトになりました。
部分的な設定のマスキングなどいくつか欲しい機能もありますが。Tiff経由でLightRoom等を組み合わせることでRAW撮りでも2段分の改善を活用しながら作品作りが楽しめると思いますし、AIノイズリダクションの性能が良いので、日常的な現像ソフトウェアとして活用しています。
SoA
なかなかの高評価ですね。興味出てきました。
確かに機材の総重量は同等のFF機より大幅に圧縮出来るんですよね。Olympus機材は子供に譲ってしまったのですが、一緒に鳥撮影するためにこの後に出るであろう廉価機も確認した上でどちらかを購入する事にします。
RC
XやmarkIII世代の手持ちハイレゾがAIアップスケーリングのようだというのは、私の印象ではちょっと違うかなと思います。合成ですから確かに輪郭など独特の不自然さは残ることは事実ですが、一応16枚?(OM-1は12枚のようですが)撮った素材から生成しているはずです。となると、その分だけ本物の(推定ではない)光の量、情報量があり、被写体上の同じスポットでも、三脚ハイレゾほど正確ではないにしても、異なるカラーフィルターを通って得たリアル情報が加味されているのではないかと思います。1枚の画像を、アーカイブのデータに基づくAI予測でアップスケーリングしたり、周辺画素情報から予測補完するベイヤーとは、(長所短所は別として)種類の違う画ではないかと思います。
OM-1の手持ちハイレゾの動体対応に関しては、前の世代より多少改善されたと思う時と、かえって目立つようになった感じる時の両方があります。GH6の方は確かに動体により対応していますが、画面内の動体の面積がよほど小さくないと、「合成に失敗しました」と出て合成できないようになっています。
読み出し速度への不満は、動体歪みだけの問題ではないので、決してごくごく少数の意見ではないのではないかと思います。通常の素子の方式だったら、マイクロフォーサーズで8000万画素と言ったらかなり抵抗があると思うのですが。スマホや防犯カメラなら使えるAFの選択肢が限られているので、仕方ないと思いますが。
OM-1のAF性能に関しては、使用レンズに左右される部分がかなりありそうです。
Taku
他の方も指摘されていますが、連写可能枚数については、バッファ不足や書き込み速度不足というより、何か内部処理がボルトネックになっている感じがありますね。
たとえばE-M5 mark3では、rawのみで10コマ/秒くらいならメディア一杯まで連写出来るのに、OM-1では同じ設定にしても、普通にバッファフルになって詰まってしまいます。
もし可能であればファームアップで改善してほしいですが、センサーが新しくなったことで、何か従来機より複雑な処理を行なっているのかも…。