ニコン「Z9」のAFは「EOS R3」と「α1」にわずかに及ばない

PCmagに、ニコンのミラーレスのフラッグシップ機「Z9」のレビューが掲載されています。

Nikon Z 9 Review

  • このレビューはファームウェア1.11に基づいているもので、4月14日に発表されたファームウェア2.0はまだ試すことができていない。
  • Z9はEOS R3と、α1の3機種のハイエンドトリオの中で最も大きなカメラで、EOS R3よりも若干大きく、α1より一回り大きい。手の大きな人や望遠レンズが好きな人は、Z9のような大きなカメラを好む人もいるかもしれないが、旅行者やバックパッカーは扱いにくいと感じるかもしれない。
  • Z9はメカシャッターレスだが1/200秒のスキャン速度で、スポーツ撮影で被写体を止めたり、ファッション写真でフラッシュをシンクロさせるのに十分な速さだ。同じメカシャッターレスのシグマfp / fp Lのように(遅いスキャン速度に)悩まされることはない。

  • Z9の操作系はD6と良く似ているが全てが同じではなく、背面の操作系は少し異なる場所にある。手に持ったときの感触も少し違い、グリップの傾斜が少なく、ボディが厚くメモリカードスロットドアがわずかに曲がっているために、持ちやすさが少し損なわれている。手の大きな人なら気にならないかもしれないが、私はしっかりカメラをホールディングするために、少々不快なほど手を伸ばさなければならなかった。浅めの縦位置グリップは好みに合っている。
  • ボタンの照明機能は、ソニー機には無くキヤノンもR3のみだが、これはスタジオカメラマンや薄暗いところで作業する人には有り難い機能だ。

  • モニタは4軸チルト式が採用され、EOS R3が採用しているバリアングルモニタとは対照的に正面を向かない設計だが、モニタがレンズの後方に位置するので、レンズとモニタの光軸の一致が必要なフォトグラファーには有益だ。一方、バリアングルモニタはビデオクリエイターやブイロガーに好まれる。
  • 3.2型210万ドットの液晶モニタは、シャープで視野角も良好だ。α1は3型144万ドットで期待外れだったので、ニコン(更に言えばキヤノンも)がモニタの品質に注意を払っているのは喜ばしいことだ。
  • EVFのスペックはZ7IIと同じでクラストップではないが、十分な性能だ。積層CMOSによるブラックアウトフリーは、数字以上にユーザー体験が優れていると感じる。Z9はセンサーから2系統で読み出すデュアルストリームに対応しているので、120fpsのキャプチャモード時でも撮影時に表示品質が落ちることはない。ニコンはデュアルストリームはラグが少ないことをアピールしているが、私にはその差が分からない。
  • EVFはキヤノンは広い色域とHDRに対応し、ソニーは940万ドットの高画素で高リフレッシュレートにも対応していて、どちらもZ9よりも少し優れているので、Z9のEVFはクラストップとは言えない。

  • Z9のAFは、復活した3Dトラッキングの使い勝手の良さが気に入っているが、トラッキングは1つのサイズのフォーカスボックスしかサポートしておらずD850と全く同じものではない。被写体認識は、α1では手動で対象となる被写体を切り替える必要があるが、Z9は自動で切り替わる。3Dトラッキングと被写体認識、そして便利はダイナミックエリアAFが融合していないのは、ニコンのAFに欠けている部分だと思う。
  • Z9で1ヶ月間数千枚撮影した結果、Z9のAFシステムはライバルのEOS R3とα1にはわずかに及ばないという評価になった。多くの場合、被写体に容易に合焦したが、完全にボケている被写体のAFでは少し迷いが見られた。これはZ100-400mmで何度か遭遇した問題だ。
  • 鳥の検出では、木の上のコマドリや鳩などの簡単なターゲットでもいくらかミスすることがあった。しかし、一度ロックしてしまえば、AFの追尾はライバルと同じくらい粘り強い。枝などで隠れた動物にもフォーカスを合わせ続けることができた。精度に関しては的中している画像が外れているものよりも圧倒的に多かった。

  • イベントでは電子シャッターによるバンディングが発生することがあるため、特定の種類のLED照明がある場合は注意が必要だ。バンディングが気になるようならα1を検討した方がいいだろう。α1はシャッター速度を標準的なものから外れた速度に設定できるため、この問題を回避できる。Z9にも同様の機能の追加を望んでいる。
  • Z9のバッファはかなり大きく20コマ/秒での撮影に十分だ。バッファクリアも数秒と非常に速い。20コマ/秒の連写ではバッファが無くなるとスローダウンするが、JPEGの30コマ/秒の連写では連写が止まってしまい、バッファクリアに7秒かかる。11MPの120コマ/秒の連写では、バッファクリアに18秒と長い時間がかかる。
  • Z9は新世代の積層型センサーを採用しているが、画質でZ7IIとの違いを見分けるのは難しく、高感度もZ7IIに遅れずに付いて行っている。高感度はISO6400まではディテールは豊富でシャキっとした画質で、そこからISO25600まではややソフトになるがまだディテールは維持されている。
  • Z9の手ブレ補正は他社に対して差別化できるものではないかもしれないが、高画素センサーで鮮明な画像を得るために、歓迎すべき機能だ。手ブレ補正は28mmで1/4秒でブレはなく、1/2秒でもまずますの結果だった。

  • ビデオカメラとしては、積層型CMOSを採用した競合機のなかでZ9は間違いなく最も高性能だ。多くのビデオグラファーにとって8K RAW動画は編集するには大きすぎるが、プロジェクトで高画素と高フレームレートが必要とされる場合は、Z9の性能は群を抜いている。
  • Z9はメカシャッターを排除したが大きな欠点はなく、動体も止められる。バンディングに悩まされる可能性もあるが、これは最も悪いケースの話だ。AFは3Dトラッキングの採用でZ6IIやZ7IIから大きく改善している。
  • ライバルのEOS R3は2400万画素なのでトリミングの自由度は低いが、Z9と同じくらい高速で、最高のHDRファインダーを備えている。グリップはZ9は大きすぎるので、R3の方が好みだ。
  • Z9はTechX賞を受賞したが、我々のエディターズチョイス受賞には至っていない。高速連写の高解像度機を購入するのであれば引き続きα1を推奨する。理由はAFが少し優れていて、使用できるレンズも豊富だからだ。
  • 良い点:積層型センサーの採用でメカシャッターが不要に、4500万画素でトリミングの余裕がある、信頼できる3DAF、賢い被写体認識、プロ用一眼レフファンに嬉しい縦位置グリップ付きボディ、革新的な可動式モニタ、8K ProRes Rawと4K ProRes 4:2:2 HQ動画。
  • 悪い点:大きなボディは万人向けではない、デジタルサイネージにバンディングが見られることがある、Zレンズがシステムが完全に揃っていない。

 

Z9はAF性能でEOS R3やα1に若干及ばず、このカテゴリのカメラではα1を勧めるというZ9にはやや厳しい評価になっていますが、これは古いファームウェアでの評価なので、先日リリースされたVer.2.00の新ファームにアップデートすれば、評価も変わってくるかもしれませんね。

EVFに関しては、他のレビューではZ9のEVFがOVFに近く一番自然に見えるという評価も多いですが、このレビューではEOS R3やα1の方が少し優れているという評価になっていて、ここでもZ9にはやや厳しい評価という印象です。