ペンタックスはなぜミラーレスカメラで失敗したのか

PetaPixelに、ペンタックス(リコー)のミラーレスカメラ参入の失敗に関する考察記事が掲載されています。

Why Pentax Has Failed at Mirrorless Cameras

  • なぜペンタックスはミラーレスカメラで失敗したのか。この10年でミラーレスカメラの技術は、多くの写真家や映像制作者に歓迎されるものに進化した。この過程は多くのカメラメーカーにとって楽な道のりではなかったが、フィルムからデジタルカメラへの移行の過程で犯した失敗を教訓に、多くのメーカーが同じ失敗を避けるように発展してきた。

    では、なぜペンタックスから(istDが登場してから)19年の間に素晴らしいミラーレスカメラが登場しなかったのだろうか? 簡単に言うと、あったにはあったのだが、このブランドや製品にかかわる機会を逸してしまった可能性が高い。

    ペンタックスの開発規模が縮小し、ユーザー基盤も弱くなってしまった現在の状態に至ったのは、ターゲット層とマーケティング手法が原因だ。

    70年代から80年代にかけて、ペンタックスの一眼レフユーザーは親や祖父母から多くのカメラと写真の知識を受け継いでいた。フィルムカメラは短期でモデルチェンジしないので、伝統という考えがあり、それが業界一のロイヤルカスタマーを生んだ。ペンタックスはファミリーヒストリーに基づいたブランドだった。

    その後、ペンタックスはミラーレスカメラへのアプローチをしたが、ピュアリスト達から多くの反発を受けた。このためペンタックスブランドは、コアなペンタックスユーザーにも新しいユーザーにも届かず、マーケティングの機会を損失した。

    マーケティングは製品のアピールに大きな役割を果たす。ソーシャルメディアは、ここ10年間で消費者の購買意欲に莫大な影響を与えている。ソーシャルエンジニアリングによって、得られたデータを咀嚼し、フィードバックに耳を傾けながら新しい顧客を見つけることができるようになったのだ。

    ペンタックスは残念なことにこの戦略の転換が間に合わなかった。これは2006年のHOYAとの合併と、2011年のリコーへの売却で、ブランドの所有者が変わったことに起因している。オンラインマーケーティングでは一貫性が重要で、チームや所有者が変わるマーケティングに悪い影響がでることがある。

    他のメーカーはペンタックスと比べると、ソーシャルメディアやインフルエンサーによるマーケティングを大規模に導入しており、カメラに何が必要とされているのか知ることができた。そして、ミラーレスシステムが一から構築された。

    将来に向けてペンタックスは迅速に戦略を転換する必要がある。研究開発はコア製品の遺産を超えて、新しい世代に焦点を当てる必要がある。内部の開発よりも外部との意思疎通に重点を置くべきだ。ペンタックス製品は優れているが、新しい世代からの情報のインプットが不足している。

    ペンタックスはより優れたミラーレスカメラを造れるのだろうか? ペンタックスが成功するためには、ターゲット層と撮影ジャンルに焦点を合わせた他とは一線を画すハイエンド機を造る必要があるだろう。ペンタックスのレガシーを保ちながら90%は新しい世代が求める映像製品の機能にフォーカスする必要がある。メーカーは、コミュニティを造り、それに耳を傾け、彼らと共に製品を開発することを重視するべきだ。

    ペンタックスはスマートフォンや競合他社のカメラを使っている人たちに目を向ける必要がある。もし、それが上手く行けば、同社は5年後にミラーレス市場で成功することができるだろう。

 

記事ではペンタックスのマーケティング手法に問題があり、もっとソーシャルメディアを積極的に活用するべきだったと述べられていますが、開発リソースなどの問題もあるので、マーケティング手法を変えてミラーレスで成功したかは、なんとも言えないところかもしれません。

とは言え、ペンタックスがQシリーズを投入する2011年のタイミングで、Kマウントや645の開発リソースを全て注ぎ込んで、より大きなセンサーの本格的なミラーレスシステムを投入していたらどうなっていたかは興味深いところですね。

元記事ではやり方によっては5年後にミラーレス市場で成功できるという言葉で結ばれていますが、現在、ペンタックス(リコー)は一眼レフに注力する姿勢を明確にしているので、これからミラーレスに参入する可能性は低そうです。