Camera Labsに、ニコンのPFレンズを使用した軽量コンパクトな超望遠単焦点レンズ「Z 800mm f/6.3 VR S」のレビューが掲載されています。
・Nikon Z 800mm f6.3 VR S review
- このレンズはPFレンズが採用され、FマウントのAF-S 800mm f/5.6よりも遥かに小型軽量になっている。このレンズは中国製で価格は6497ドルと、AF-S 800mm f/5.6やキヤノンのRF800mm F5.6Lよりも大幅に安い。
- フォーカスリングはリニアとノンリニアと切り替えが可能だ。
- これまでハイエンドのZレンズの特徴だった鏡筒の有機ELのディスプレイは採用されていない。
- 三脚座は90度ごとのクリックは無く、ロックを解除すると滑らかに回転し、遊びはほとんどない。残念ながら三脚座の足はアルカスイス互換ではない。
- AFの再現性はReikan FoCalによる計測で94.7%で、通常の値よりも低めだ。コントラストのあるテスト用の被写体の撮影では、40枚の撮影で大きなピントの外れはなかったが、画像の1/4が最適なピント位置から5%以上ずれていた。
- AF速度はZ7との組み合わせでは無限遠から8.3m(倍率1:10)まで約0.7秒で、Z 400mm f/2.8よりも少し速い。Z9でのテストは行えなかったが、Z9ではおそらく更に速いだろう。このレンズは十分な明るさでもかなりAFの迷いが見られ、特に遠方から手前にピントが来る場合に迷う。
- AFはスチルでも内蔵マイクを使って動画を撮る場合でも、ほとんど無音だ。
- プルフォーカスでは、フォーカスブリージングがかなり大きいことに気付くだろう。無限遠から8.3mにピントを合わせると画像が17%拡大する。これは動画撮影時にとても目立つ。
- 手ブレ補正のテストでは、Z7との組み合わせで1/25秒で画像の30%が甘くなっており、これはニコンの主張する5段分の効果を裏付けるもので、非常に素晴らしい性能だ。シンクロVRはZ9との組み合わせでしか機能しないのでテストできていない。
- 軸上色収差はテストでは見られなかった。絞るとテストチャートの前側よりも後ろ側の方が速くシャープになる(フォーカスシフトでピントが後ろ側に移動する)。
- 高コントラストの部分での、輪郭部分のパープルフリンジや背景の被写体の緑の輪郭は見られなかった。非常に優秀だ。
- 解像力テスト(ラボテスト):解像力をZ400mm f/2.8+2倍のテレコンと比較すると、中央はZ400mm f/2.8の方がわずかにシャープだが、周辺部ではZ800mm f/6.3が明らかにシャープで、画面全域の均一性が高い。F8に絞ると中央のコントラストは若干改善し、F11では回折の影響でわずかに甘くなる。
- 1.4倍のテレコン使用時の1120mmでは、目に見えてソフトになる。中央はZ400mm f/2.8+内部1.4倍テレコン+2倍のテレコンと同等だが、周辺部はZ800mm f/6.3の方が優れている。2倍のテレコンはテストしていないが、レンズに負荷をかけすぎそうなので、更に狭い画角が欲しい場合はDXにクロップした方がいいだろう。テレコン使用時でも像面の湾曲は問題なかった。
- テストチャートの撮影では、このレンズは開放から画面全域でシャープだが、1.4倍のテレコン使用時は切れ味が少し失われる。
- 実写テスト(遠景):約1km離れた街並みによる遠距離のテストでは素晴らしい性能で、フルサイズの隅や、1.4倍のテレコン使用時でも非常にシャープだ。
- 周辺光量落ちと歪曲:周辺光量落ちは補正なしでも開放からかなり穏やかだ。歪曲は補正は常にONになるが、撮って出しのJPEGでは穏やかな糸巻き型が見られる。
- コマ収差:夜景の点光源のテストでは、開放でもコマ収差はほとんど見られない。街灯周囲の色にじみも見られない。
- ボケ:玉ボケは軸上色収差の色付きは見られないが、少し輪郭が付く。玉ボケの内部は、明るい赤い玉ボケにいくらか年輪ボケが見られるが、滑らかな描写だ。後ボケは二線ボケになりにくいと感じる。
- 接写:近接性能は開放から非常に優れており、F8に絞ると少しシャープさを増す。像面の湾曲は非常に少ない。
- 結論:このレンズはAF-S800mm f/5.6の半分の2.4kgという比類のない軽さを実現しており、テストでは無限遠から最短まで非常に優れた性能を発揮した。像面湾曲や色収差はほとんどみられず、とてもシャープな画像が得られ、開放から自信を持って使える。ボケも素晴らしい。このレンズは小型軽量で手頃な価格の非常に優れた超望遠レンズだ。
- いくつかの小さな問題もあり、フォーカスブリージングはビデオグラファーを悩ませる可能性があるだろう。また、AF精度と再現性はこれまで見てきたレンズよりも少し低かった。
- 良い点:驚くほど小型軽量、画面全域で非常に優れた解像力とコントラスト、1.4倍テレコン使用時も良好な画質、非常に効果的な手ブレ補正、とても優れた近接性能、軸上色収差やパープルフリンジがほとんど見られない、レンズプロファイルを提供すれば歪曲や周辺光量落ちはほとんど見られない、像面湾曲がほとんどない、素晴らしいボケ、防塵防滴とフォーカスリミッターなどの多くの機能、素敵なレンズポーチ。
- 悪い点:最短撮影距離が5m、フォーカスブリージングが比較的大きい、三脚座の足がアルカスイス互換ではない。
このレンズは800mm f/6.3としては非常に小型軽量で価格も比較的安価ですが、光学性能はとても優秀で、機能も豊富なので非常に魅力的なレンズに仕上がっているという印象です。
1.4倍のテレコン使用時はテストチャートでは解像力が低下するようですが、実写ではシャープさを維持しているので問題なさそうです。また、AF精度にやや問題が見られたようですが、発売されたばかりのレンズなので、これはフォームウェアの更新で改善される可能性がありますね。
胡麻斑
「Z400mm f/2.8+2倍のテレコンと比較すると、中央はZ400mm f/2.8の方がわずかにシャープ」というのを見て心配になりましたが、実写では等倍で見ても不満のない描写ですし、ボケ味も良好でいいですね。これが80万を切るとは……。
まろりん
私も逆光時のフレア耐性が気になっています。同じPFの556も画質に関してはとてもシャープで大満足していますが、朝方や夕方の光量の強い時間帯では完全に逆光でなくても光の差し込む角度によっては膜が張ったような感じのフレアがよく出てました。今後のレビューで逆光時に関する検証がされたものが出てくるといいなと思います。