ソニー「E PZ 10-20mm F4 G」は動画に最適だがスチルにはタムロン「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD」を勧める

PCmagに、ソニーの新しいAPS-C用の広角ズーム「E PZ 10-20mm F4 G」のレビューが掲載されています。

Sony E PZ 10-20mm F4 G Review

  • 旧型のE 10-18mmはズーミングでレンズが繰り出したが、E 10-20mmはインナーズームになっている。
  • このレンズは悪天候下で使用しても問題はないが、ソニーのAPS-C機で防塵防滴のシーリングが施されているのはα6400とα6600だけということに気を付けて欲しい。また、前玉のフッ素コーティングが省略されているので、雨滴や指紋をつけないように注意が必要だ。

  • AFはキビキビとしていて、テスト機のZV-E10との組み合わせでは、近距離から遠距離まで瞬時に合焦する。
  • フォーカスブリージングは10mmではほとんど見られず、20mmでは近景から遠景にフォーカスするとわずかに発生する程度だ。このレンズはフォーカシングで画角が変わらないので、動画撮影に適している。
  • フォーカスリングは心地よい抵抗感で動き、リニアなレスポンスで、問題なく正確にピント合わせができる。最短から無限遠までの回転角は約120度とかなり大きい。

  • E PZ 18-200mmやE PZ 18-110mmは動画専用でスチル用として使う理由はあまりないが、E PZ 10-20mmはよりハイブリッド志向で、動画に便利な設計だが、スチルフォトグラファーにとっても理に適ったレンズだ。
  • ズーミングの方法はいくつかあり、ズームリングでは素早くズームでき、スライドスイッチではよりゆっくりとした安定した動きでズームできる。ZV-E10ではシャッターボタン周囲のズームレバーでもズーミングができる。
  • ソニーは、このレンズはパワーズームの搭載を優先して、手ブレ補正の搭載しなかったと説明している。ZV-E10での動画撮影では、想像通り、手ブレ補正がないと動画がブレて見える。電子手ブレ補正は1.44倍にクロップされるが、自撮りのブレは効果的に抑えられる。しかし、通常の撮影ではジンバルほどの効果はないので、手持ちでジンバルなしで撮りたい場合はE18-10mm F4 OSSの方が理に適っている。

  • ラボテスト:Imatetによる解像力テストでは、20mmでは開放で3000本以上という素晴らしい結果が得られた。周辺部も大部分は中央と同じくらいシャープだが、10mmの隅は2500本と若干見劣りする。しかし、それでもZV-E10用としては非常に良い解像力の範疇だ。
  • このレンズは絞っても改善せず、つまりソニーがこのレンズを開放で優れた結果が得られるようにチューニングしている。絞るとF11から回折の影響でシャープさが低下し、F16とF22ではディテールが顕著に失われる。
  • 解像力に関しては、E 10-20mmは広角端ではタムロンよりも隅から隅までの解像力は上だが、少し望遠側にズームすると同等の性能になる。どちらのレンズもE 10-18mmよりも解像している。

  • 光芒は残念ながらモヤモヤしていて感心しない。光芒はタムロン11-20mm F2.8の方がより鮮明だ。
  • 歪曲と周辺光量落ちの補正は電子補正に依存しており、未補正では、開放で周辺が暗くなり、広角端でかなりの大きさのタル型の歪曲が見られる。歪曲と周辺光量落ちは動画やJPEGでは自動補正されるが、RAWでは補正プロファイルが必要だ。
  • 倍率色収差は見られず、この収差が目立ちやすい画面端の電線でも色ズレは見られなかった。軸上色収差(ボケの色付き)は良く補正されているが、完全ではなく、金網のサンプル画像でわずかに見られる。
  • 玉ボケは概ね円形だが、画面に隅に行くほど(口径食の影響で)猫の目状になる。F5.6に絞れば円形になるが、背景をソフトにぼかすのは難しくなる。
  • 逆光ではフレアやゴーストが気になった。アングルを少し変えてフレアやゴーストを避けるのは難しくないが、フードを付けていてもフレアが出ることがあるので注意が必要だ。

  • ZV-E10用のより優れた広角レンズが求められていたが、E PZ 10-20mm F4 Gはそれにぴったりのレンズだ。軽量でインナーズームの設計はジンバルでの使用に最適で、光学性能もこれまでのものよりも優れている。
  • スチルメインの人にも好ましい点はある。画質はE 10-18mmよりも優れており、手ブレ補正はないが、AFは非常に速く、防塵防滴なのはメリットだ(E 10-18mmは防塵防滴ではない)。しかし、スチルではより明るく、機械式ズームで、前玉にフッ素コートが施されているタムロン11-20mm F2.8の方が好みだ。動画重視の場合や、スチルと動画を頻繁に切り替えて撮影する場合はE PZ 10-20mm F4 Gが適している。
  • このレンズはスリムなZV-E10に最適だが、スチルフォトグラファーには少し高価なタムロン11-20mm F2.8を勧める。

  • 良い点:小型軽量でジンバルに理想的、動画用のパワーズーム、防塵防滴構造、速く静かなAF、フォーカスブリージングが非常に少ない。
  • 悪い点:手ぶれ補正が無い、絞りリングが無い、強い逆光でゴーストが出る、光芒がモヤモヤする。

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新しいE PZ 10-20mm F4 Gは非常に小型軽量のレンズですが、旧型のE 10-18mm F4よりも光学性能は改善されていて、十分な光学性能を実現しているようです。

フォーカスブリージングも抑えられていて、インナーズームのパワーズームを備えているので、動画用としてはかなり訴求力が高いレンズに仕上がっているという印象です。

スチル用としてもこの小型軽量は魅力的ですが、スチル用としては機械式ズームのタムロン11-20mm F2.8の方が高評価になっているので、スチルメインの方はどちらを選択するか悩ましいところかもしれませんね。