一眼レフの歴史的な役割はもうとっくに終わっている

AERAdot.に、ニコンで長年カメラ開発を手掛けた後藤哲朗氏のインタビューが掲載されています。

ニコン「一眼レフ開発撤退」報道に衝撃と寂しさ

  • (今回の一眼レフ開発停止について)
    「一眼レフの『歴史的』な役割はもうとっくに終えているのではないでしょうか。というのも一眼レフの性能はもう行き着くところまで行きましたから、もうこれで十分だと思うのです。ですから、今後はミラーレスのZシリーズがそれを受け継げばよいのです」

    「これまでお客様がもっとも気にされてきたのはファインダーの見え方です。被写体の光がそのまま見える一眼レフの光学ファインダーは映像表現にはなくてはならないものでした。それがZ9の電子ビューファインダーを覗くと、光のまばゆさを感じるほど自然な見え方が実現できています」

  • (ニコンFについて)
    「作れば売れるという状況でした。アメリカでニコンFを首から下げていると、『車と交換してくれないか』っていう話が本当にあったみたいです。それくらい値打ちがあった」

  • (F5の開発について)
    「このころ、本格的なAF時代に突入してライバル機種との大変な戦いになったのです。キヤノンEOS-1に奪われたシェアを奪還するために、F5は本当に必死の思いで作りました。目標の一つは秒間8コマの連写速度の達成でした。そのために意を決して、モータードライブを一体化したわけです」

  • (Dfの開発について)
    「これを作るのも大変でした」と、後藤さんは打ち明ける。立ちはだかったのは技術的な困難さではなく、社内の壁だった。

    「一眼レフのラインアップがきちんと決まっているなかに、売れるかどうかわからない、しかもぜんぜん違う雰囲気のカメラを入れようとしたわけですから。そりゃあ、反対されますよ。でも最終的に『できるだけ部品を流用して、お金をかけないで作りますから』と、最上層に頼み込んだら、『それならいいだろう』という感じでOKを取りつけました」

  • (ミラーレスカメラについて)
    「いま、カメラは歴史的な大きな転換点にあります。自動車に例えれば、これまでの車には技術とノウハウの塊であるエンジンが搭載されてきましたが、今後の電気自動車、EVを動かすのは電池とモーターです。それと同じようなことがカメラで起こっています」

    「つまり、ミラーレスはレンズを除けば完全な電気製品なのです。これまでニコンは精密機器メーカーとしての強みをカメラで存分に発揮してきました。長年培ってきたメカニズムの耐久性、シャッター音や振動を含めた操作感触のすばらしさなど。ところが、カメラが電気製品になると、ライバルに対してどう差別化を図るかが難しくなってくる。いうなれば、ニコンのカメラの存在意義をどう打ち出すか。それが問われていると思います」

  • (いまカメラ開発に携わるとしたら何をやりたいか)
    「一眼レフシリーズのなかでは『D900』という名称が空白なのですよ。100番台の製品はD100からD850まで埋まっています。ですから、例えばD850をリファインし、D900としてシリーズを終える。『長い間有難うございました。これが最後のニコン一眼レフです。今後はZシリーズで!』と力強く宣言して花道に送り出したいですね」

 

一眼レフ開発に長年携わってきた元ニコンの後藤哲朗氏ですが、ニコンの一眼レフ開発停止について「一眼レフの歴史的役割は終わっている」「Zシリーズがそれを受け継げばよい」と非常に前向きですね。

また、ミラーレスは電気製品で他社との差別化が難しいと述べられていますが、ファインダーの接眼光学系の出来の良さなど、ミラーレスになってもニコンらしい部分は感じられますね。

最後に、「いま開発に携わるとしたらD900を開発したい」と述べられていますが、これは本当に見てみたいカメラです。ただ、残念ながら今の状況では実現の可能性は少なそうですが。