富士フイルム「X-H2S」は非常に優れたカメラだがAFの使い勝手はライバルに及ばない

PCmagに、富士フイルムの積層型センターを採用した高速連写機「X-H2S」のレビューが掲載されています。

Fujifilm X-H2S Review

  • X-H2Sは防塵防滴仕様で、富士フイルムはIP規格の等級表示はしていないが、雨の日の散歩でびしょびしょに濡らしてもカメラは問題なく動作した。
  • グリップはX-T4よりも深く、大きなレンズを使用する場合はプラスになる。大きなXF150-600mmを装着してもホールディングは問題ない。このカメラのグリップはお気に入りで、カメラのエルゴノミクスも優れている。
  • X-H1はドライブモードを切り替えダイヤルがあったが、X-H2Sでは省略され、メニューを使ってドライブモードを切り替える必要がある。

  • EVFは倍率0.8倍と大きくパネルは580万ドットで鮮明で、被写体の細部も容易に確認でき、他の多くのAPS-Cカメラよりも優れている。
  • AFは動物、鳥、レーシングカー、バイク、飛行機、電車の被写体検出モードが追加され、フィールドテストでは、リスや鳥、飛行機を撮影したが、ほとんどのケースで被写体認識AFは優れた性能を発揮した。
  • それでもAFシステムはEOS R7やα7 IVほど優秀ではない。これらのカメラは、AFで追いかける被写体の指定に関してはより柔軟性が高い。また、富士フイルムは、フォーカスモードが多くの別々のモードに分かれていることも、AFを扱いにくくしている要因の一つだ。EOS R7やα7 IVはボタンを押すだけで被写体認識のモードを切り替えることができるが、X-H2SではQメニューを使って切り替える必要があり少々面倒だ。富士フイルムは、被写体認識モードを簡単に切り替えられるようにして欲しい。

  • 電子シャッターは40コマ/秒の速さだが、AF精度に問題があることが分かった。しかし、30コマ/秒以下の連写では一貫してピントが合う。
  • バッファは40コマ/秒で、スローダウンまでにロスレスRAWで200枚、RAW+JPEGで150枚、JPEGでは制限のない連写が可能で、動体撮影に十分な大きさだ。40コマ/秒の連写ではCFexpressでもSDでも同様の結果だが、CFexpresss使用時はバッファクリアの時間が半分になる。15コマ/秒ではCFexpressでより多く(RAWでスローダウンまでに380枚)撮影できた。
  • 全体として、X-H2SはAFの被写体認識の設定に手間がかかるが、動体撮影には非常に優れたカメラだ。

  • 積層型センサーが画質に悪影響を与えているのか、ラボテストで確認したが、答えは完全にノーだ。JPEGではノイズは抑えられており、ISO3200まで豊富なディテールが得られる。ISO6400から12800ではコントラストが少し低下しディテールに濁りが生じるが、ISO25600でもそれほど悪くはない。ただし、ISO51200は非常にソフトで緊急用だ。
  • RAWではISO1600まではディテールに富み、ノイズはほとんど見られない。ISO3200-12800では細かいノイズが見られるが輪郭は鮮明なままだ。ISO25600ではノイズが大きくなるが、それでも実用的な画像が得られる。ISO51200はノイズが非常に多く、あまり満足できない品質だ。
  • X-H2Sの高感度性能は他のAPS-Cセンサー機と肩を並べている。3250万画素機のEOS R7との比較では、超高感度ではX-H2SがR7を上回っているが、ISO25600を下回る感度ではノイズコントロールとディテールの両面でR7が優位に立っている。

  • 手ブレ補正は1/2秒の手持ち撮影でも目に見えるブレはなく、動画でも非常に安定している。特に三脚と同じような効果が得られるISブースト機能が気に入っている。
  • 動画は、X-H2Sのスキャン速度は1/180秒(X-H2は8Kでは1/33秒)で、画面を横切る車でローリングシャッターを確認したが、大きなローリングシャッター歪みは回避されていた。
  • オプションの冷却ファンは、取り付ける前にモニタを横に開きカメラ背面の部品も外す必要があるため、組み込みファンのように便利ではない。また、このカメラの部品を外すとX-H2Sは防塵防滴ではなくなる。
  • X-H2Sの全体的な動画機能は非常に強力だが、GH6ほどではなく、例えば波形モニタは搭載されていない。多くの動画クリエーターがGH6を選ぶのには正当な理由があるが、スチルと動画のハイブリッドの用途ならX-H2Sを勧める。

  • X-H2Sは2499ドルで、積層型センサー搭載機は通常型のセンサー搭載機と比べると非常に高価だ。動体撮影のクオリティを追求するなら、1500ドルのEOS R7で素晴らしい結果が得られる。また、風景やポートレートなどを本格的に撮るなら、同じ価格のフルサイズ機α7 IVを選ぶ方が良いかもしれない。
  • スチルをあまり重視しないならGH6も魅力的な選択肢だが、X-H2Sも動画ではそれほど後れを取っておらず。スチルやAFの性能面でGH6よりも遥かに優れている。簡単に言うと、X-H2Sはスチルと動画のハイブリッドクリエーターにとって優れたツールで、GH6は動画スペシャリスト向けだ。
  • Xシリーズのユーザーは、X-H2SとX-H2の選択に迷っているかもしれない。私のX-H2の使用時間はまだわずかだが、X-H2はX-H2Sと同様にAFが素早く合焦することは確認できた。

  • X-H2Sは多くの点で他社を引き離している非常に優れたカメラであることは間違いなく、この価格帯で積層型センサーとProResを搭載しているのはこのカメラだけだ。しかし、他のAPS-C製品よりも高価で、X-H2Sと同じ価格で高性能なフルサイズ機が入手できる。
  • 良い点:高速な積層型センサー、被写体認識による素早いAF、防塵防滴仕様。
  • 悪い点:PreRes記録時に熱くなる、40コマ/秒時のAF精度に苦戦している、競合他社のフルサイズ機並みの価格。

 

X-H2Sは最近の積層型センサー搭載機らしく、連写性能は素晴らしく、被写体認識もAFも十分に機能するようですが、AFの使い勝手ではキヤノンやソニーに及ばない部分があるようですね。とは言え、AFで指摘されているのでは主に操作性に関する部分なので、これは新ファームでの改善に期待したいところです。

X-H2Sの価格に関しては、現在実売価格でR7と10万円強の差がありますが、X-H2Sは積層センサーの採用以外にも縦位置グリップやCFexpressに対応していたり、バッファの容量が大きい、動画でProResに対応しているなどワンクラス上の仕様なので、これらの機能に重きを置く人にはかならずしも高いとは言えないかもしれませんね。