スマートフォンのカメラはAIの助けを借りてデジタルカメラを凌駕する

DPReviewで、Qualcomm副社長のスマートフォンとデジタルカメラに関する発言が紹介されています。

Qualcomm exec thinks AI will help smartphones eclipse dedicated cameras soon

  • 最新のスマートフォンには、小型のセンサーやレンズを最大限に活用するために、AIが取り入れられている。スマートフォンのカメラ技術はどこまで進化するのだろうか。クアルコムの製品管理担当副社長であるJudd Heape氏は、AIが将来、スマートフォンが専用カメラシステムを超えるために役立つと主張ている。

    Heape氏はAIには4つの段階があると考えており、1つ目は、特定の被写体を識別するなどの基本的なシーン認識、第2段階は、AF、ホワイトバランス、露出などの機能をAIが制御するものだ。現代のスマートフォンのAI技術は今、第3段階にあると考えている。これは、特定の被写体だけでなく画面内のほぼすべてを識別し、それに応じた調整ができる。

    第4段階のAIは3~5年後くらいに実現するとHeape氏は考えており、これはAIが画像全体を処理するようになる。Heape氏は、「『ナショナルジオグラフィックのこのシーンのような写真にしたい』と言うと、AIが 、色や質感、ホワイトバランスなどすべてを調整して、今AIに見せた画像と同じように見え、同じように感じられる写真にしてくれるだろう」と述べている。

    これは高度なAI技術だが、スマートフォンが専用カメラシステムを凌駕するのに十分なものだろうか? 今年初め、ソニーセミコンダクターソリューションズのCEOは、早ければ2024年にもモバイルカメラが一眼レフやミラーレス一眼を超える可能性があると発言している。しかし、スマートフォンにはまだ物理的な限界があることも忘れてはならない。

    スマートフォンはイメージセンサーが大幅に小さいだけでなく、レンズも小さい。それでも、高性能なスマートフォンの処理能力によって、センサーやレンズの小型化に伴う物理的な課題を克服し、専用カメラとのギャップを埋めるとHeape氏は考えている。

    「Snapdragonの処理能力は、NikonやCanonの最強のカメラに搭載されているものより10倍優れている。だから、我々は画質の壁を越えることができる。小さなレンズと小さなセンサーで、レンズ交換式カメラの何倍もの処理能力を発揮しているのだから」(※この部分は大元の記事より補足しました)

    また、スマートフォンの分野では、一部の大手企業が多額の資金と技術力を開発に投じていることも事実だ。スマートフォンとレンズ交換式カメラの市場規模の差は非常に大きい。

    しかし、スマートフォンと、より大きなセンサーを持つ専用カメラとでは、潜在的な画質にまだ大きな差がある。AIは物理的な制約を補うことはできるが、今のところ、AIが物理的な制約を完全に克服することはできていない。

    スマートフォンが画質面で専用カメラシステムを追い越せるというHeape氏の考えは、まだ少し希望的観測だと感じられる。技術の向上により、スマートフォンが写真や動画の分野で大きな進歩を遂げたことは間違いないが、物理的なサイズを克服し、より大きなセンサー、より大きな画素、極めて高度なレンズが提供するレンズ交換式カメラのメリットを上回るには、CPUの増強やより高度な画像処理よりもはるかに多くのことが必要になるだろう。

 

ソニーセミコンダクターのCEOに続いて、クアルコムの副社長もスマートフォンがデジタルカメラを追い越すという見解を示していますが、将来のスマートフォンがセンサーサイズやレンズのサイズでの不利を、強力なCPUによる画像処理や画像加工でどれだけ克服できるようになるのか、興味深いところですね。