ソニー「α7R V」のAFは旧型から大きく改善したがライバルと大きな差はない

CAMERALABSに、新しいAIベースのAFシステムを搭載したソニーの高画素機「α7R V」のレビューが掲載されています。

Sony A7R V review

  • α7R VのEVFはα1の944万ドットのものを継承しており、240fpsモードは省略されているが、依然として見事な画質だ。C-AF時には一時的にEVFの解像度が低下し、動体をAFで追いかけるときには不利になるが、これは複数のカメラで見られる制限だ。また、120fpsモードではEVFの解像度が低下することに注意が必要だ。
  • 新しい4軸可動式の液晶モニタは、バリアングル機構の上にチルト機構を取り付けることで、チルトファンとバリアングルファンの双方の要望を満足させようとしており、これは素晴らしいアイディアだ。しかし、ヒンジの上に更にヒンジがあるので、シンプルな可動式モニタと較べて堅牢性に欠けるのは否めない。とは言え、私はこのモニタが気に入っており、将来のαはこの機構のモニタに落ち着くことになると思う。
  • メニューは、α7R IVではできなかったタッチ式の操作がサポートされ、ソニーは、この点でライバルに追いついた。
  • 以前のMicro HDMI端子がフルサイズの端子に切り替わっており、これは歓迎されるアップグレードだ。USB-C端子もアップグレードされ、PDの高速充電に対応している。

  • α7R Vの画質は拡大すると膨大な量のディテールがあることが明らかになるが、純粋な解像力という点ではα7R IVと何ら変わりはない。
  • ピクセルシフトは新バージョンのImaging Edgeで動体の補正ができるようなった。これはα7R Vの新機能として謳われているが、他のモデルで試したところα1でも動体補正が利用できた。しかし、それより前のモデルでは利用できず、α7R IVでは利用できなかった。
  • 高感度はISO800まではほとんどのディテールが維持され、ISO1600でもわずかにディテールが失われるだけだ。しかしISO3200以上ではノイズリダクションによりディテールが大幅に低下し、ISO12800よりも上の感度ではノイズによる汚れが目立つようになる。
  • 手ブレ補正は8段分の効果が謳われているが、70mm(24-70mm F2.8の望遠端)でのテストでは完全に安定しているのは5段分遅いシャッターまでで、6段分では多少のブレが見られるようになり、7段分でよりブレが明確になり、8段分ではブレはかなり見られる。手ブレ補正は5段分の効果までしか達成できなかったが、α7R IVよりは改善している。

  • AIベースの新しいAFで最も重要なのは人のポーズを推定できるようなったことだ。α7R IVは人が背を向けるとすぐに認識できなくなったが、α7R Vは人が横や後ろを向いても追尾を続け、被写体への食いつきがよくなった。しかし、AFはライバルも改善しており、富士フイルムX-T5やキヤノン機もこのような被写体に上手く対応する。
  • 50mm F1.2GMでのテストでは、瞳AFのAFボックスは目にしっかりと追従するが、少し目からピントを外したり、瞳ではなくまつ毛にピントがいくことも多少あった。AF精度はトップクラスのライバルと較べて悪くはないが、期待していた性能の飛躍はなかった。
  • 動物の検出は上手く機能しているように見える。新機能の昆虫の検出は、昆虫の種類によって認識できることとできないことがあり、結果が大きく変わることが分かった。蜂の認識と追尾では、AFは上手く機能した。この機能は時間が経てば改善されると思う。
  • α7R Vの被写体認識AFでは、目的の被写体を選択する必要があるが、動物や鳥の撮影では全自動の設定が欲しい。この機能を採用すると認識速度が低下するのは理解しているが、EOS R6 Mark IIではすでにこの機能が採用されている。
  • α7R Vは専用プロセッサーを備えたAIベースのAFなので、競合他社よりも多くの自動化と遥かに優れた結果を期待していた。α7R VのAFはα7R IVよりは優れているが、全体としてEOS R5より優れているというわけではなく、多くのライバルと大きな違いがあるわけではない。このAFは、将来のα1やα9のような積層型の高速読み出しセンサーと高速連写を備えたボディに搭載されると本領を発揮するのではないだろうか。

  • 連写速度は従来と同じだが、CFexpressカードの採用でバッファのクリアは遥かに速くなっている。テストでは、CFexpress使用時にあらゆるフォーマットで、10コマ/秒で、ほとんどバッファクリアの遅延なく無制限連写ができた。しかしSDでは最高速のカードでもロスレスRAWで39枚までしか撮影できず、バッファクリアに20秒かった。
  • この連写は野生動物撮影に魅力的に聞こえるかもしれないが、α1の方が動きを捉えるには遥かに効果的であることが分かった。
  • 電子シャッターは歪みが目立つ。

  • α7R Vのメインの新機能はAIベースのAFシステムで、α7R IV以前よりも被写体認識と追尾が大きく改善されたが、テストでは、AFはトップクラスのライバルとは大きな差はなかった。動体の撮影では、α7R Vは連写速度とセンサーの読み出し速度によってまだ制限されているように感じ、積層型センサー搭載のα1やα9の方が全体的に動体撮影に適している。このAFシステムはα1かα9シリーズに導入されるまで真価を発揮しないと思う。
  • α7R IVはα7R Vよりも安価でお買い得に見えるが、α7R Vは柔軟性のある可動式モニタや、より高精細なEVF、実用性の向上したピクセルシフトや長時間露光機能、8K動画、ソニーで最も賢いAFシステムの採用で確実に魅力を増している。α7R Vに、α7R IVプラス1000ドルの価値があるかどうかは、あなたの判断だ。

 

PetaPixelのレビューなどいくつかのレビューで絶賛されているα7R VのAFですが、ここでは旧型のα7R IVよりも進化しているものの、EOS R5などのライバルと同程度という評価になっており、レビュアーの非常に高い期待に応えるほどではなかったようです。

また、新しいIBISもレビュアーによって評価が分かれているところですが、ここでは実測で公称の8段分の効果には届かないものの、5段分の効果は確認されたということで、従来のIBISからは十分進化していると言ってよさそうです。

あと、モニタの耐久性に関しては、可動部が多くなる分壊れやすい可能性はありますが、これは少し時間が経ってみたいと分からないですね。