コシナ「NOKTON 35mm F1.2 X-mount」は絞っても周辺部が甘く納得のいかないレンズ

LensTipに、コシナのXマウント用の大口径標準単焦点レンズ「フォクトレンダー NOKTON 35mm F1.2 X-mount」のレビューが掲載されています。

Voigtlander Nokton 35 mm f/1.2 X 0 lens review

  • このレンズは非常にコンパクトなレンズで、均整が取れており、富士フイルムのカメラのヴィンテージな外観に非常によくマッチする。
  • フォーカスリングはそれほど重さはないが滑らかに動く。鏡筒は最短撮影距離で0.5cm繰り出す。
  • X-T2との組み合わせでは、EVFやモニタに表示される絞り値は絞りリングの値よりも常に少し大きくなるが、面白いことにEXIFでは常に適切な絞り値が記録される。

  • 解像力は中央はF1.2とF1.4では低いが、F1.8前後でまずまず良好になり、それ以上に絞ると急速に改善する。F2.8では70lpmmの非常に良好な解像力(良像の基準値は44~45lpmm)になり、F4では80lpmmを超える素晴らしい結果が得られる。
  • 隅の解像力はレンズが小柄なのでズバ抜けた性能は期待できないが、残念ながら現実は更に厳しいもので、F8~F11まで絞ればそれなりの画質が楽しめるが、高品質な標準レンズに期待するような性能ではなかった。

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  • 軸上色収差(ボケの色付き)は良く抑えられており問題はない。倍率色収差は開放付近で0.05%、F4からF16では0.07%に増加するが、全て低い値で良好な結果だ。
  • 球面収差の補正は、前後のボケの違いから問題があることが示されている。フォーカスシフトは気付かないが、開放での画質が非常にソフトなので、ピント位置が不明確で、フォーカスシフトが無いかどうかは容易には分からない。
  • 歪曲はJPEGでは+0.46%のわずかな糸巻き型でほとんど分からない。しかし、未補正のRAWファイルでは+1.53%のタル型で、JPEGの糸巻き型はカメラの自動補正が過剰に補正した結果であるのは興味深いところだ。-1.53%のタル型は標準レンズとしては典型的なものだ。
  • 残念なことだが、これほど小さく大口径で複雑な構成ではないレンズの場合は一部の収差は補正できないことがある。メーカーは色収差は適切に補正しているが、コマ収差の補正は諦めている。その結果、コマ収差は実に膨大なものだ。
  • 非点収差は12.8%に達し、中程度のレベルと高レベルの境界線上だが、これは開放付近の結果でF2より絞れば非点収差はほとんどゼロになる。

  • 玉ボケは、内部は均一で年輪ボケも見られず非常に良好に見える。良く見ると中心が少し明るいが、ボケに悪影響を与えてはいない。口径食の影響は見られ、2段絞っても解消はしないが、このような小さいレンズでは驚くようなことではない。
  • 周辺光量落ちはJPEGでは自動補正され、開放で35%(-1.25EV)で悪くないが、RAWでは開放で60%(-2.67EV)と非常に高い値だ。しかし、フルサイズ用の大口径レンズでは3EVを超えるレンズもあるので、-2.67EVは特にショッキングな値ではない。
  • 逆光耐性は、レンズ構成が複雑ではないにもかかわらず不要な反射を抑えることに完全に失敗している。開放付近では特に状況が悪くなり、太陽が画面内にあるか画面の外側遠くにあるかにかかわらず、大きく強いゴーストが出ることがある。これは本当にお手上げのように見える。レンズの縁を黒く塗るのを忘れたのだろうか。有名な光学メーカーがそのようなことをするのはあり得ないはずだが。
  • フォーカシングは、電子接点があるため、フォーカスリングを動かすと画面が自動的に拡大され、比較的容易に素早くピント合わせができる。

  • このレンズについてどう考えればいいのかよく分からない。ボケでクリエイティブに遊ぶのが好きな人がいることは理解できるが、そのような目的のためにはもっと安価な選択肢がある。NOKTON 35mm F1.2のように、それほどシャープではなく高価なレンズには当惑する。シャープなレンズは後処理でシャープネスを下げたりソフトフィルタを使用するなどしてソフトにできるが、甘いレンズは決してシャープで鮮明にはならない。
  • このレンズの開発者は、このレンズは出来のよい35mm F2のレンズで、F1.2~F1.8の範囲は創造的なボケを得るためのボーナスだと考えたのだろう。それが私が思いつく唯一の解釈だ。このレンズの価格は650ドルで、絞っても画面の隅々まで良好な画質になるわけではない。あなたがそれで価値があると思うならかまわないが、個人的には納得できない。

  • 良い点:金属製の見栄えのする頑丈な鏡筒、F2以上では中央は優れた画質、軸上色収差が目立たない、倍率色収差がわずか、歪曲に大きな問題がない、心地よいボケ。
  • 悪い点:開放付近の中央の画質が低い、隅がそれほどシャープではない、球面収差に問題あり、コマ収差が非常に大きい、周辺光量落ちが目立つ、逆光に弱い。

 

コシナの最新のレンズがこれほど厳しい評価を受けるのは珍しいですね。このレンズは開放からカリカリを目指しているレンズではないと思うので、開放付近がソフトなのはそういう絵作りだと思いますが、絞り込んでも周辺部があまりシャープにならないのは少々気になるところかもしれません。また、逆光時に光源の位置にかかわらず強いゴーストが出るのは、少々扱いが難しいかもしれませんね。