キヤノン「EOS R7」は価格に見合ったカメラだが野生動物用にはバッファが小さい

CAMERA LABSに、キヤノン「EOS R7」とライバルの富士フイルム「X-H2」「X-H2S」との比較レビューが掲載されています。

Canon EOS R7 review

  • このレビューの時点で、キヤノンは2本のRF-Sしか発売しておらず、レンズが不足している。フルサイズ用のRFレンズは使用できるが、高性能なRFレンズは高価で大きく重い。
  • EFレンズもR7で良好に機能するが、古いEFレンズでは電子シャッター時の連写速度が30コマ/秒から約半分の速度になる。
  • キヤノンのシネマEOS C70用に開発されたアクセサリー「EF-EOS R 0.71x」はスピードブースターのように機能し、フルサイズ用のEFレンズを元の画角を大まかに維持して使うことができる。これはAPS-C機用のキラーアクセサリーになる可能性があると思うが、キヤノンはこのアクセサリーについて沈黙しており、(EOS R7 / R10での)動作は保証していないとだけ述べている。
  • RF-Sレンズの登場によって、ほぼ確実にEOS Mシリーズの開発は終了したと考えていいと思う。

  • R7の背面のサブ電子ダイヤルの操作性は当初考えていたよりは良好だが、7D Mark II のような優れたエルゴノミクスを備えた昔ながらの電子ダイヤルには及ばない。
  • マウント近くにあるAF/MF切り替えスイッチは、鏡筒に切り替えスイッチのない安価なレンズを使用する時に便利だ。
  • EVFは236万ドットと妙に控えめな解像度で、より高精細なEVFと比較すると細部が不鮮明で見栄えはよくない。しかし、倍率がかなり大きく、リフレッシュレートを120fpsに上げられるので、パン時になめらかな画像が得られるのは、このEVFのプラス面だ。
  • HDMI端子が堅牢性で劣るMicro HDMIで、キヤノンがX-H2 / X-H2Sのような標準のHDMI端子を採用するよう願っている。
  • カードスロットはSD x2で、多くの人は、X-H2 / X-H2SやEOS R5のようにCFexpressを採用しなかったことを残念に思うだろう。SDに固執したために、R7はバッファの小ささと書き込み時間の長さに悩まされることになった。
  • R7の解像力は2600万画素のX-H2Sよりも明らかに高く、4000万画素のX-H2に近い。X-H2はR7をわずかに上回っているが大きな差ではない。しかし、X-H2にはピクセルシフトモードが用意されている。
  • 高感度ノイズは、RAWではISO400でわずかにノイズが見られるが、JPEGは驚くほど綺麗だ。RAWは感度が上がるに従って画質が低下し、ISO6400では画質の低下が大きくなるが、この時点でもJPEGはかなり綺麗に見える。全体としてはR7のJPEGエンジンはうまくノイズを処理しており、X-H2 / X-H2Sと大きな差は見られない。
  • 手ブレ補正は、テストではRF-S18-150mmとの組み合わせで5段分の補正効果で、公称の7段分には届かないが問題はない。IS非搭載のEF85mm F1.8との組み合わせでも4~5段分の効果が得られた。
  • AFはRF-Sレンズとの組み合わせでは瞬時に合焦し、EFレンズとの組み合わせではRF-Sレンズよりは遅くなるが、一眼レフにEFレンズを取り付けた場合より遅くなることはない。
  • 被写体認識AFは、キヤノンは鳥と動物が一緒の扱いなので、ソニーのようにメニューで鳥や動物を指定する必要はない。被写体認識AFの追尾は、X-H2 / X-H2Sよりも被写体への食いつきが良いと感じた。
  • 連写速度は実際にメカシャッターで15コマ/秒、電子シャッターで30コマ/秒の速度が出ていることを確認した。バッファーは、15コマ/秒のJPEGでスローダウンまでに132枚、RAWで47枚撮影でき、SDカードへの書き込みはいずれも7秒かかった。30コマ/秒のJPEGではスローダウンまでに126枚、RAWで42枚撮影でき、書き込みには17秒かかった。
  • 検証結果からR7の連写はたしかに速いが、バッファは大きくなく、クリアまでに時間がかかる。30コマ/秒の連写はわずか1~2秒しかできないので、撮影開始のタイミングには細心の注意が必要だ。C-RAWを使えば画質をあまり犠牲にすることなく、連写時間を2倍にできる。
  • 電子シャッターは、パンしながらの撮影では背景の建物が傾いており、動きの速い被写体では歪みが目立つ可能性がある。メカシャッターでは建物は垂直だった。しかし、電子シャッターのプリ連写は説得力のある機能だ。

  • EOS R7は強力なミラーレスカメラでオールラウンダーだが、野生動物用の高性能のカメラとして使いたい人にはベストとは言い難い。動体撮影で最も明白な欠点はバッファの小ささで、連写が30コマ/秒で1~2秒しか続かないことだ。X-H2 / X-H2Sは、よりバッファが大きく、メモリカードも速い。X-H2Sは電子シャッターの歪みも少ない。しかし、X-H2 / X-H2Sはより高価だ。
  • 長玉を使う場合にはバッテリーグリップが用意されていないことも残念に思うだろう。236万ドットのEVFも、究極のAPS-C機とキヤノンが主張するカメラとしては少し低解像度だ。
  • APS-Cのハイエンド機が欲しいだけなら、R7を不満に思うことはめったにないかもしれないが、要求の厳しい野生動物写真家なら、富士フィルムの機種やフルサイズ機を検討することになると思う。R7は価格に見合ったお勧めできるカメラだが、バッファ等の制限が自分の撮影で大きな影響があるかどうか、また、どのレンズと組み合わせるのかを慎重に検討して欲しい。

 

EOS R7は購入しやすい価格帯にするために、バッファやEVFの解像度などいくつか妥協点もあるようですが、実売18万円程度のカメラとしては全体として上手くまとまっているという印象です。R7とX-H2 / X-H2Sは価格がかなり違うので、EVFなどの基本的な仕様で劣っているのは仕方のないところかもしれません。

R7はボディにそれほどお金をかけずに、動体を含めて幅広いジャンルを撮りたいという人には最適なカメラかもしれませんね。