OM SYSTEM「ED 90mm F3.5 Macro IS PRO」は回折の影響でセンサーの解像力を十分に引き出せない

LensTipに、先日発表されたOMDSの新しい望遠マクロレンズ「ED 90mm F3.5 Macro IS PRO」のレビューが掲載されています。

Lens review OM System M.Zuiko Digital ED 90 mm f/3.5 Macro IS PRO

  • フォーカスリングは電子式のモードと、リングを手前に引いたときの機械式のモードがあり、フォーカスリングの回転角は機械式で100度強、電子式では500度を大きく超える。前玉から被写体までの距離(ワーキングディスタンス)は通常のマクロモードでは最短で12cm、S-MACROでは約6cmになる。
  • 手ブレ補正は、ボディとの協調補正でメーカーの主張では7段分の効果となっているが、テストの結果では4.3~4.5段分の効果だった。これは公称値よりも遥かに低い値だが、それでも優秀な結果だ。

  • 解像力は開放で60lpmmを超え(良像の基準値は48-50lpmm)、F5.6に絞ると80lpmmに近づき、非常にシャープな画像が得られる。暗いレンズのため解像力の記録更新は期待できないが、1~2段絞ったところで回折限界に近い性能を発揮しており、これは完璧に収差が補正されていることを示している。

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  • テレコン(MC-20)使用時の解像力:F3.5のレンズに2倍のテレコンを組み合わせるとF7になってしまい、そこからレンズの性能のピークに達するまで絞り込むとF11からF16になってしまう。このため回折の影響でよく補正されたm4/3レンズでも解像力が40-50lpmmとなり、良像の基準レベルぎりぎりか、それ未満になってしまう。ED90mm F3.5に2倍のテレコンを装着してもシャープな画像は得られない。

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  • 軸上色収差(ボケの色付き)はレンズ単体ではほとんど問題はないが、テレコン(MC-20)を装着すると前ボケには青緑の、後ボケには橙赤の色付きが気になる。
  • 倍率色収差は開放付近で0.03%以下でF11以降では0.06%以上と急速に大きくなるが、色収差の最高値でも低いレベルの値に収まっている。テレコン使用時は倍率色収差は少し減少する。
  • 球面収差はレンズ単体でもテレコン使用時でも問題はなく、前ボケと後ボケの差は非常に小さく、フォーカスシフトも見られない。

  • 歪曲はミラーレス用のレンズでは光学的な補正を諦めていることが多いが、このレンズはそのようなことはなく、未補正のRAW(-0.17%%)でも補正後のJPEG(-0.19%)でも歪曲はほぼゼロだ。しかしテレコンを装着すると状況が変わり、JPEGでは-0.01%だが、RAWでは-0.89%のわずかなタル型になる。
  • コマ収差のテストでは、絞り値にかかわらず、またテレコンの有無にかかわらず、ダイオードの画像は画面の中央と隅でほぼ同じように見える。コマ収差の問題は見られない。拍手喝采だ!
  • 非点収差は平均4.2%の「非常に低い値」と「低い値」の境界線上で全く問題はない。非点収差はテレコン使用時も顕著な増加は見られない。
  • 玉ボケは満足行くものだが、開放では明るい輪郭が付くのがいくらか気になる。口径食は開放では顕著で、F5まで絞ってもまだかなり目立つ。
  • 周辺光量落ちはJPEGで計測した結果だが、RAWでも結果は最大で1%しか変わらなかった。周辺光量落ちは開放で27%(-0.91EV)、F4で21%(-0.67EV)とわずかに見られるが、F5.6では3%(-0.09EV)と完全に解消する。テレコン使用時は開放でわずか4%(-0.11EV)と更に改善する。
  • 逆光ではいくらか内面反射があり完璧ではないが、幸いなことに、問題は太陽が画面の隅にごく近い位置にある場合にのみ発生し、画面から少しでもはずれればフレアは発生せず良好なコントラストが維持される。
  • AFはE-M5 II との組み合わせでは、最短から無限遠まで1秒程度の時間がかかるが、これは0.25mから無限遠までの広いフォーカス範囲であることを忘れてはいけない。AFの作動音はわずかに聞こえる。テレコン装着時もAF速度はほとんどかわらず、1秒以内に合焦するが、テレコン使用時はAFがより頻繁に迷うのが問題だ。OM-1との組み合わせでは、AFは0.8~0.9秒と少し速くなり、テレコン使用時もより速く確実に合焦する。いずれのボディでも前ピンや後ピンの傾向は見られなかった。

  • ED90mm F3.5の有効口径は等倍ではF6.3、2倍ではF8で、また、解像力テストでは1~1.5段ほど絞らないとレンズの性能が発揮されないことが分かった。つまり、マクロ域でピークの性能になる有効口径はF8~F11で、(回折の影響で)最大でも55~65lpmmそこそこの解像力を許容しなければならない。これはm4/3で到達可能な95~100lpmmの解像力には全く及ばない。従って、F3.5の開放F値ではm4/3の最大解像力の半分強しか得られないことになる。
  • また、ED90mm F3.5にテレコンの装着を勧めているのも誤解を招く。4倍の印象的な倍率に惹かれるが、このときの有効口径がF16であるという事実には誰も言及しない。F16ではm4/3では(回折の影響で)40~42lpmmの解像力にしかならないので使い物にならない。このような暗いレンズを提供する方針は理解できない。
  • このレンズは期待通りの性能を発揮し、開放から高画質で少し絞れば非常に良い画質が得られるが、このレンズのパラメーター(口径)によって上で述べたように、それ以上のことはできない。

  • 良い点:端正でしっかりした防塵防滴の鏡筒、中央の非常に良好な画質、隅の良好な画質、軸上色収差がわずか、倍率色収差が低いレベル、球面収差の問題が見られない、歪曲が無視できる大きさ、コマ収差の適切な補正、非点収差が非常に少ない、周辺光量落ちの適切な補正、効果的な光学手ブレ補正、良好なボケ。
  • 悪い点:MC-20テレコンとの組み合わせ時の性能が芳しくない、F値が大きすぎてシステムの能力を十分に発揮できない。

 

ED90mm F3.5は開放から十分に高画質で、色収差や歪曲、周辺光量落ちも良く抑えられており申し分のない性能という印象ですが、LensTipは、レンズが暗すぎて回折の影響で十分な解像力が得られないという理由でかなり厳しい評価をしています。

とは言え、F3.5の明るさでこれだけ大きいレンズなので、これ以上明るくすると大きく高くなりすぎて、製品化は難しいのかもしれませんね。また、テレコン使用時の解像力は芳しくありませんが、それでも換算8倍の高倍率で撮れることにはかなり訴求力がありますね。