ソニーのEマウントシステムは当初フルサイズもレンズのフルラインナップも考えていなかった

日経ビジネスに、ソニーグループ副会長の石塚茂樹氏の同社のデジタルカメラの軌跡を振り返るインタビュー記事が掲載されています。

ソニーデジカメ戦記(第6回)

  • コニカミノルタと事業統合・事業継承して最初のモデル「α100」が出ました。これは、中身はほぼコニカミノルタという感じですね。その後「α700」「α200」「α350」が出ます。初号機のα100だけはちょこっと売れたけれど、あとはいまひとつでした。
  • 08年に、フルサイズのCMOSセンサーを搭載した「α900」という、本格的な一眼レフカメラのハイエンドモデルを出します。気合を入れた本格派のカメラですが、残念ながら、これも売れませんでした。
  • それで09年に、「ソニーでやるんだったら、やっぱり電子化をどんどんしていこう」ということで、ミラーボックスを取り去って、固定式のハーフミラー(トランスルーセントミラー)を入れたモデルを何モデルか出します。
  • 今だから言えますが、デジタル一眼レフのαシリーズは06年から始めて、このように様々な取り組みをしたんですけれど、正直鳴かず飛ばずで、ずっと赤字続きだったんです。コンデジが売れに売れていた。だから、事業本部としてはソロバンが合っていた。(レンズ交換式単体で)黒字化するまでずいぶんかかりました。

ソニーデジカメ戦記(第7回)

  • 2007年ごろに、マイクロフォーサーズ陣営から「ファミリーに入りませんか」と打診がありました。
  • 08年の秋でした。今後3年間の中期計画のブレインストーミングを部内でやりまして。当然、ソニーのレンズ交換式カメラの小型化、イコール、ミラーレス化をやっぱりやらなきゃいけないだろうと。そのときのフォーマットというか、どういうシステムにすべきか。その1としては、「マイクロフォーサーズをそのまま受け入れましょう」と。その2として、「αの資産とブランドを維持しつつミラーレスに移行して、ミニチュアライズしたのをやりましょう」と。他にもいくつか案があったけれど、現実味があったのはこの2つでした。
  • 「マイクロフォーサーズでやれば、確実に小さくなるよね」と。でもそれだと、完全に競合と同じ土俵になっちゃう。そしてご指摘の通り、せっかくコニカミノルタからαの資産を受け継いだのに、マイクロフォーサーズで違うものに乗り換えちゃったら、すべてがムダになっちゃいますよね。だったらまだ、自社開発のほうがいい。それが現在まで続いている「Eマウント」ですね。

  • 正直に言うと、当時考えていたミラーレス商品は、ポケットに入る小さいカメラとして、一般コンシューマー向けだと思っていたんですよ。なので、レンズも標準的なシリーズしか用意するつもりがなくて、フルラインナップまでつくる気はなかったんです。
  • (インタビューアー:将来はEマウントがフルサイズのイメージセンサーに対応して、レンズもフルラインナップになるなんて)ないない、このときは全然思っていません。最初の頃のミラーレス開発は、いわばT1をつくったときの「やっちゃえ、ソニー」のノリですね(笑)。

 

非常に長いインタビュー記事なので6回目と7回目のごく一部だけ引用しましたが、どの回も非常に面白い内容なので、興味のある方は元記事を最初から読んでみてください。

Aマウントカメラに関しては、「様々な取り組みをしたんですけれど、正直鳴かず飛ばずで、ずっと赤字続きだった」と述べられていて、かなり苦戦していた様子が伝わってきますね。OVFにこだわったα900や、トランスルーセントミラー機のα99など興味を引くような機種は多かったですが、売上にはつながらなかったようです。

ミラーレス参入の際には、m4/3陣営への加入も結構真剣に検討していたようで、もしここでソニーがm4/3への参加を決めていたら、各マウントの勢力図は現在と全く違うものになっていましたね。

また、Eマウントも当初はフルサイズもレンズのフルラインナップも全く想定していなかったようで、当初はノリと勢いで開発して後から本格的なミラーレスシステムへと舵を切ったようですね。