日経ビジネスで、ソニーグループ元副会長の石塚茂樹氏のインタビュー記事「ソニーデジカメ戦記」の第14回(最終回)が公開されています。
・第14回 「電機屋さんのソニーのカメラ」が"本物のカメラ"になれたわけ
- ソニーがコニカミノルタから事業を引き継いで一番得るところがあったのは、写真文化というのを我々が理解できたことだ、と思っている。
- ソニーのデジカメは、動画、ムービーのカメラから入っているから「写真というのは連続動画の中から、ベストの瞬間の1枚を抜き出せばいいでしょう」と思っていた。けれども、実はそうじゃない。と、コニカミノルタの皆さんが教えてくれた。
- ごく簡単に言えば、「写真」を撮る人にとってカメラ自体は目的じゃない。決定的瞬間でも、なんであってもいいのですが、「こういう写真を撮る」ということが目的であるべきなんだと。「今、自分はどういう写真を撮ったか」を、ちゃんと分かっていないと、いいカメラはつくれませんよ、と僕は教えられた。
- コニカミノルタ出身の人って、カメラオタクの人が多い。ソニーにはそういう人があんまりいなかった。「いいハードウエア、いいスペック、いい機能のものをつくれば売れるでしょう」って。いつまでも電機屋のカメラだって揶揄されたりとか、自信を持って出したデジカメがさっぱり売れないというのも、この写真文化を理解していない、つまり撮る側の気持ちが分かっていない、というところに最後は帰着する。
- なので、まず自分たちが写真をちゃんと理解しなきゃいけないねって、社内で年に何回も写真展をやっている。これもコニカミノルタ出身の人に教えてもらってね。じわじわ、じわじわ、社内の教育活動をった。「写真が好きになった人じゃないと、いいカメラはつくれませんよね」という。
- ソニーのメニューって昔から「使いにくい」と言われていることも認識しているが、10年ぐらいかかって、少しずつ少しずつ改善している。(最新のメニューは)時間がかかったが、やっとここまできた。
Aマウントシステムは販売終了してしまいましたが、ソニーがコニカミノルタのカメラ事業から受け継いだ「写真文化に対する理解」は非常に大きかったようで、ソニー単独でカメラ事業を初めていたら、ことによると今のEマウントシステムの成功はなかったかもしれませんね。
ジェラ
最大限配慮してそう言う事もあったのかなぁ、という印象。
むしろソニーが思っていた「連続動画の中からベストの瞬間の1枚」に時代が向かっている今、最初からその思考でやっていたソニーが凄いと思う。
あと確かに初期のソニーのカメラは使いにくさが多々あったけど、同時にカメラオタクのためのカメラじゃない感じもして、それはそれで老舗メーカーとの差別化にもなっていたんじゃないかな。
どっちがいいかの問題じゃなく、やっぱりソニーはソニーらしくが自分には魅力的に映る。
ロッキーチャック
ソニーの開発責任者がカルティエブレッソンが好きなのはちょっと意外な感じ。
蘇にお
NEX5R時点で既にUSB充電に対応していたり、家電屋のカメラとネットでは揶揄されているものの、ソニーでしかできない個性やチャレンジが沢山あったと思います。
ワンダースナフキン
連載は終わりましたが、発売されている本では、このあとまだ話が続きます。Eマウントの話もしっかりあります。
カタスマー
インタビューの通り、じわじわと「写真好きのカメラ」へと変移したことは側から見ていてもなんとなくわかりますね
ただ昔のソニーのカメラは既存のいわゆるカメラメーカーとは違った方向性だったと思います
今は良くも悪くもニコン、キヤノン、ソニーあたりは同じような方向性でカメラを作っているように感じますね
これらの王道を行くメーカーと、それ以外の独自路線のメーカーに分かれましたね(ライカはまた別の王道を進んでいますが)
独自路線で突っ走ったソニーも見てみたかったとは思います
swing
つ、続きは単行本…
商売上手いな(笑)。これは買わなきゃ。
「写真が好きになった人じゃないと、いいカメラはつくれませんよね」
この言葉が響きますね。
トヨタの豊田章男現会長が20年ぐらい前、テストドライバーのボスに
「運転のことも分からない人に、クルマのことをああだこうだと言われたくない」
と言われたそうです。
トヨタの車が近年良くなったのは、この思想が社内に行き渡ったからでしょう。
ソニーも同じですね。今後のカメラにはより一層期待できるかもしれません。
とはいえ、技術先行のガジェットっぽいソニーらしさも維持して欲しいけどね…。
カシオ・ソニー・オリンパス辺りが技術先行で変な機能入れてくる印象だったけど、今やソニーだけが頼り。
SoA
記事中にリンクが貼ってあったジョン・スーラーの「決定的瞬間の心理学」は興味深い内容でした。
カルティエ・ブレッソン写真集オーダーしました。
コンタレックス・ブルズアイ
ソニーさんの一眼(レフ)の中で、コニカミノルタさんの血統を惹いているところ
といえば、わたし的には、α900の光学ファインダーかなと思っております。
今も、α900は、現役で大事に使用しております。
とにかく、明るく、ピントも掴みやすく、見えも最高です。
現在いまでも、史上最高の光学ファインダーだとわたし的には、思っております。
もう、これより後先、歴史に残る最高のファインダーはないと思っております。
ソニーさん、もう出ないでしょうか?
あみ
新しいカタチのカメラのあり方という点では、直近はキヤノンの方が頑張っている印象もあります
しかし本来その辺りに強いのはソニーだったようにも思います
市場の食い合いをしても仕方ないものの、ソニーにはソニーにしか出来ない強みもあるはず
今後の展開にも期待したいですね
ボヘミアン
電機屋ソニーから、元々のカメラメーカーに近付いた感は確かにあります。
コニミノから、色々聞けたのは幸運だったでしょう。
一方で、かつてのソニーらしさが薄れたのは、
仕方がないところでしょうか・・・
セツナ
写真を撮る人の視点に立てたから作ることの出来たカメラがあったと思います。
標準的なカメラらしいカメラ、基本的な焦点距離のレンズ、
ここの所のSONYはその辺りを丁寧に忠実に、基礎と土台とを作り上げてきたと思います。
その中に少しずつ特徴的な個性のある機種もあったかと思うのですが
写真文化に真面目に向き合うその姿勢はもう分かったので、皆さんの言うようにSONYらしい強み、
ぶっ飛んだものを出してくれないかなと思い続けています。
いいんですよハイスピードカメラみたいな事出来る機種や
変態的な形状のグリップがあっても。
白髪爺
動画の中から切り取ればよい。
これは事実なんだと思います。
かつてのフィルム時代は、1枚撮るとかかるコストが半端ではないので、1枚1枚、慎重に選んでシャッターを押したものです。
が、デジタルの時代になると、何枚撮ってもコストはさして変わりません。気に入らないショットは削除で終わり。いまや連写が当たり前。周りの鳥撮りさん達は、ほぼ全員連写です。1日に数千枚も撮って、その中から数十枚とかを残す。北京原人よろしき我が輩は、とてもそんな贅沢(笑)なことは出来ず。いまだにほとんど単射であります。
と言うことで、連写から数枚を抜き取る行為は、動画からの切り出しと、物理的には異なるとしても、少なくとも心情的には同じであります。
既に、バリバリ撮って、その中からお気に入りのショットを選り分け、その他は捨ててお終いの文化になっております。電器屋の冷徹な思考は、その当時としては勇み足だったでしょうが、いまでは当たり前に近い。
唯一の問題は、単射の楽しみです。自分が最もよいと思うタイミングでシャッターを押す。それが「当たり」の場合は、えも言われない満足感が得られます。ジャストタイミングからずれた写真しか撮れないと、地団駄踏み、次回は確実にものにしてやるぞと誓う訳で。これが、写真撮影の強い動機となります。
写真好きは、ジャストタイミングの写真を撮ることに意味を見いだしているはず。ここが動画切り出しとの大きな差なのでしょう。
「上手い写真」を撮るか、それとも「満足のいく写真」を撮るか。前者は動画切り出しでしょうし、後者は単射なのかも知れません。趣味性(写真文化)の点からは、後者なのでしょうね。
レコードプレーヤーにこだわる若者もまた後者なのでしょう。趣味とはそんなもののように思います。
push
私の一眼デビューはa550ですが、決め手はキヤノン、ニコンにはない独自性であったと思います。他社とは趣の異なるデザインや一眼レフでありながらライブビューAFやミラーアップ時の拡大表示に力を入れていたりなど、そのクセの強い機能を生かしながら撮影するのがたまらなく楽しかった記憶があります。
今のソニーはカメラの総合力も高くなり、当時に比べ手堅い安心感のあるメーカーになったなと感じておりますが、一時のソニーに感じたスペック至上主義や一点突破型のようなカメラをいまだ期待してしまう自分がいます。
弁証法
昔は、対外的にはツァイスから写真文化を教えられた風のドキュメンタリーもあったりしましたが、今は"社内"のコニカミノルタがその位置に来ているのが良いですね。
7000番などミノルタで大切にしていた型番もソニーは大切にしている節があるし、あとはロッコール復活をお願いしたい 笑
2石
SONYが当初思っていたという、
連続動画の中から一枚の写真を抜くっていうのは、
既にα1ならできてしまうし、
時々はそれをやってしまってる私です。
まぁこの方法はシャッタースピードとかの問題があって、
動画のセオリーなシャッタースピードを守れないため、
動画としては使い難い素材になってしまいますけどね。
SONYはカメラの使い方に先見の眼がありますな
重粒子線
こういうところはニコンのカメラを愛用する元CEOの平井 一夫氏の影響があったかもしれませんね。
実田(みのるた)
ごく簡単に言えば、「写真」を撮る人にとってカメラ自体は目的じゃない。決定的瞬間でも、なんであってもいいのですが、「こういう写真を撮る」ということが目的であるべきなんだと。
ということですが、これは作家ともいうべきプロ写真家の考えで、私も、私の周りのカメラの先輩たちも、いい写真など「撮っていません」でした。今思うに、これはフィルムカメラの写真作りが高くついたからと思います。写真はチマチマ撮って、なけなしの大金を払って買った高いカメラを愛でていました。
ソニーのカメラ作りについて半分くらい理解できますが、では、使いやすいカメラを作り上げてきた、ニコン、キャノンはデジカメでどんなカメラを目指しているのでしょうか。
隻眼の写真の撮り手
αシリーズを7mk2から使用してますが、いい意味でソニーらしくない、スチルの性能が高いカメラだと思ってましたが、コニカミノルタの技術承継が大きかったんですね。納得です。おかげで安心して使えています。
また私は眼に問題を抱えているので、網膜投影型ビューファインダー搭載のDSC-HX99 RNV Kitに大変希望を持ちました。基本となるカメラの性能、売上が上がることによりこういったカメラの開発につながっているんでしょうから、現在のソニーにはとても期待しています。ソニーらしい尖ったカメラにも期待しますが、こういったものを必要としているユーザーの事を今後も大事にして欲しいです。
レッサプサッレ
キヤノンやニコンの新製品発表とかを見ると、「道具(カメラ)として使いやすい○○」という表現がよく出てきます。
また、キヤノンが「キヤノンバードブランチプロジェクト」をやったりカメラ以外の写真文化活動も目立ちます。
対して昔のソニーのカメラでよく言われていたのは、
指の動きが大きいボタン配置で一瞬のシャッターチャンスを逃したとか、
メニューの操作がわかりづらくモタモタしてるまにシャッターチャンスを逃した…とか、
昔はよく聞きましたね。
でもまぁ、
ハードやソフトのUIは使いづらくても、
連続して撮った中から最高の一枚を選ぶとすれば、
問題ないんですよ。
それを解決するため、
10年かけてようやく使いやすいUIになってきてるとのこと、
それはそれですごい企業努力です。
重粒子線
パナソニックはデジカメ参入こそ早かったのですが永い間鳴かず飛ばずのままでしたし、東芝や日立はパッとしないまま撤退しました。家電メーカーにとってデジカメは意外と鬼門のようです。
xylogen
α7RⅡあたりから幅広くプロに意見を募ったり
アンケート頻繁にやってるのを見てカメラに対する姿勢が変わったなと思いました。技術や発想の突破力だけではカメラ市場では生き残れないことをコニカミノルタの人らに指摘されてたんでしょうね。そこからの地味な努力、写真文化の理解があっての今なんでしょうね。
個人的にはソニーがフルサイズミラーレスの世界を開いたことはカメラ業界にプラスだったと思います。今を見てください、各社が全力で製品開発してるのがわかります。
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フィルム時代から築かれたコニカミノルタの歴史やヘリテージを継承して最大限に活用したことが、ソニーのミラーレス一眼ビジネスでの隆盛に効いているのですね。
皆さんご承知のように、ソニーはマーケティングに長けてブランドを重視する企業です。そのソニーが自分たちで少なからぬ資源・労力を投じて立ち上げたNEXではなくαの方に一本化し、G/G Masterレンズを揃えてきた。そうしたソニーの姿勢・取り組みに、デジカメで写真を始めた他社ユーザーの私ですら、スティルカメラや写真の世界における一朝一夕ではないブランドストーリーとして好感を抱くほどです。フィルム時代から写真を続けていらっしゃる愛好家やプロにとっては、コニカミノルタのヘリテージが継承されていなかった場合との差は計り知れないだろうと思います。
他方、パナソニックは自ら開拓したミラーレス一眼市場において、佳いカメラ・レンズを出し続けているのにも関わらず下位に留まっています。それは結局、彼らやLUMIXブランドにフィルム時代からのヘリテージがない→写真愛好家にとってLUMIXはシリアスなスティルカメラのブランドと受け入れにくいからではなかろうかと思っています。パナソニックはLeicaとの協業関係を一層強化しているものの、LeicaのブランドヘリテージはあくまでLeicaのものですし。
swing
連載の続きは単行本とのことで、買いました。分厚い読み応え。
Eマウントフルサイズの話載ってますね…。
詳細は単行本読んで欲しいですが、結論としては、「こんなこともあろうかと」だったようです。
現場に設計を任せた時に、小型化が最優先とされるなか、どうしてもフルサイズ可能にしときたくて設計者が入れ込んでいたみたい。でもその時点では念のため程度で、実際にフルサイズセンサーを入れる予定はなかったみたいですね。
単行本の残りの方ですが、イノベーションのジレンマの話だったり、8mmビデオからの動画の話があったり、後書きまで面白いのでお勧めです。