キヤノン「RF800mm F11 IS STM」は実際に使うと良さが分かるレンズ

OpticalLimitsに、DOレンズを使用したキヤノンの安価な超望遠単焦点レンズ「RF800mm F11 IS STM」のレビューが掲載されています。

Canon RF 800mm f/11 IS STM - Review / Test Report

  • このレンズは使用する際に外側の鏡筒の前方に押して、所定の位置にロックする必要があるが、この伸縮機構により、運搬時には非常にコンパクトになる。
  • このレンズはわずか1.26kgと望遠としては非常に軽量だが、かなり頑丈に感じる。鏡筒は高品質なプラスチックで、フロント部分のフェイクレザーの質感は素敵だ。かなり小さく非回転式だが三脚座は装備されている。
  • フォーカスリングは幅が広く滑らかに回転する。
  • フードがオプションなのは残念だ。
  • AFは最速ではないが、それでもかなり優秀で作動音はしない。ミラーレス機では一眼レフと異なり、F11でもAFが可能だが、AFエリアは水平方向に40%、垂直方向で60%に縮小される。
  • テレコンは使用はできるがF16やF22になるので回折の影響のために画質は厳しい。
  • 手ブレ補正は4段分の効果で、このような超望遠としては控えめな性能だ。カメラのIBISとの協調補正には対応していない。

  • 歪曲はRAWでほとんどゼロ(0.119%)だ。自動補正有効時は残った歪曲も完璧に補正される。
  • 周辺光量落ちは1.6EVと若干大きい方だが、自動補正で0.6EVまで改善し、通常問題はなくなる。
  • 解像力テストの結果を見る前に回折の観点から述べると、F11では最大で2700万画素しか解像しない。これは4500万画素のEOS R5ユーザーには極めて大きな制限に聞こえるかもしれないが、センサーはベイヤーなので、デモザイク後の実行解像度は公称の解像度よりもかなり低くなることを念頭に置いて欲しい。デモザイクの損失がどの程度なのかについては議論があるが、30%の損失が目安となる。つまり4500万画素センサーの場合は、実質的な解像度は3400万画素となるが、それでもF11のレンズではセンサーのポテンシャルを完全に引き出すことはできない。
  • 解像力テスト(4500万画素):中央の広い範囲で非常に良好(very good)な解像力で、周辺部でも依然としては良好(good)から非常に良好(very good)な解像力だ。テストした個体の偏芯は非常に小さかった。像面の湾曲は小さい。

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  • 解像力テスト(3000万画素):当然のことながら、3000万画素では解像力の評価は上がり、中央は素晴らしい値(excellent)のレベルに達し、周辺部は非常に良好(very good)だ。

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  • 倍率色収差は周辺部で平均1ピクセル前後で、(未補正の状態でも)既にとても良く補正されている。自動補正を有効にすると倍率色収差は無くなる。
  • ボケは、F11の明るさでも被写体がよほど遠くなければ背景と被写体とを分離することができる。DOレンズは従来はボケは良くなかったが、キヤノンは時間をかけてボケを改善しており、玉ボケはわずかに輪郭は付くが非常にキレイだ。画面の周辺部に行くと、玉ボケは口径食ですぐに猫の目状になる。
  • 通常のボケは、後ボケは非常に滑らかだ。前ボケは後ボケより若干うるさくなるが、それでも非常に良好だ。
  • RFマウントにはこのレンズと直接競合するレンズはないが、他社を見てみるのも面白いかもしれない。ソニーのFE200-600mm F5.6-6.3 OSSは手頃な価格で素晴らしい描写をするが、RF800mm F11の方がわずかに優っている。ズームと単焦点の比較なので、これは驚くようなことではない。m4/3の換算800mmのレンズLEICA100-400mm F4.5-6.3 OISと比較すると、RF800mm F11の方がいくらかシャープだ。

  • 結論:RF800mm F11 IS STMにはあまり期待していなかったが、実際に使うとその良さが分かるレンズだ。このレンズは驚くほどシャープに写ることがあり、色収差は少なく歪曲もない。周辺光量落ちはRAWでは若干見られるが上手く自動補正される。ボケも非常に優れており、非常によく出来たレンズだ。携帯性が高いので長時間持ち運ぶことができる。
  • F11の明るさで手ブレ補正の効果が4段分しかないので、ISO2000以上での撮影が多くなるが、DxO RAW/Photo LabやTopaz Labs DeNise AIなどの高度な現像ソフトを使うと素晴らしい結果が得られる。しかし、AIツールを使っても低照度での撮影は困難だ。
  • このレンズは見事とは言えないまでも良好な結果が得られるレンズだ。それでも、あと1段明るければ良かったと思う。その分、価格と重さは2倍になるが、実用性の点ではその価値があると思う。

 

光学性能の評価は5点満点中3.5点で、割り切った仕様の安価な超望遠レンズとしては結構良い評価になっていますね。解像力は、4500万画素機のEOS R5では流石に回折の影響が出てしまいますが、3000万画素機のEOS Rでは中央はexcellentに達しており、周辺部もvery goodと価格以上の性能という印象です。

手持ち撮影では日中屋外限定になりそうですが、気軽に超望遠撮影をしてみたい方には良い選択肢になりそうですね。