リコーは交換レンズ戦略を再構築し他にはない独自性のあるレンズラインナップを目指す

PetaPixelに、リコーイメージングの赤羽社長と開発陣のフィルムカメラプロジェクトや今後のKマウントレンズの計画などに関するインタビューが掲載されています。

Ricoh Opens Up About its Pentax Film Camera Project and More

  • (フィルムカメラプロジェクトの動画を見ると、既にフィルムカメラの開発を決定しているように見えるが、本当に新しいフィルムカメラの開発するという決意をしたのか?)
    フィルムカメラを発売するかどうかについては、まだ最終的な決定はしておらず、まだ未定だ。しかし、我々はこの挑戦をする決断をしている。フィルムカメラに必要な部品を集められるかどうかが課題だ。
  • フィルムカメラを作成するための適切な計画を立てることをのできる人材が必要だ。エンジニアリングプロセスを開始するには、経験豊富な人材を集める必要がある。その技術を若い世代に継承していくことが大切だ。もし現時点でフィルムカメラを開発できないことが判明したとしても、技術は進化し続ける必要がある。
  • (デジタルの時代にフィルムカメラはまだ必要なのか?)
    フィルムカメラは注力すべき分野の1つだと思う。一眼レフカメラの市場が縮小する中で、我々は困難に直面している。私は一眼レフが好きで、EVFの電子的な画像では写真を撮ろうと思ってたときの光景が損なわれてしまう。これは私にとっては重要なポイントだ。我々は自然の光に囲まれて生きていることを考えると、フィルムカメラに軍配が上がるように感じる。
  • (フィルムカメラプロジェクトはどのように生まれたのか?)
    TKO氏が初めたもので、最初に彼がこの提案をした際には全員が驚いた。しかし、その背景や当社の立場の説明を聞くうちに、これこそ当社の追求すべきものであると認識するようになった。そして、徐々にプロジェクトへの支持が高まり、最終的にはこのプロジェクトは上手くいくだろうという楽観的な感覚になった。その時点でプロジェクトを前進させるために経営トップを巻き込んだ。

  • (フィルムカメラで撮影している写真家の数は分かるか?)
    正確な情報はないが、日本で3000人のユーザーを対象とした市場調査では、カメラ所有者の約20%がフィルムカメラを持っていることが分かった。とは言え、既存のフィルカメラユーザーだけでなく、最近フィルム写真に興味を持ち始めた若い世代にもフィルムカメラ体験を提供したいと考えている。
  • (フィルムメーカーから情報は得られているか?)
    直接の情報はないが、フィルムを販売しているディーラーを通じて情報を収集している。
  • (昔のフィルムカメラの機能の維持が困難になってきているが、保証があり部品が入手可能な新しいフィルムカメラがあれば、フィルムカメラユーザーが増えると思うか?)
    新しいフィルムカメラが市場の拡大に貢献すると考えている。古い製品は故障しやすいので、耐久性が高く修理が可能なカメラを保証付きで提供することで、ユーザーに安心感を提供したい。
  • (現代のフィルムカメラはどのようなものになる?)
    具体的な製品の仕様については言えないが、気軽に楽しめてどこにでもち運びできるカメラを目指している。使う楽しさを実感できるカメラとなるだろう。
  • (TKOはさまざまなフィルムカメラが登場すると述べていたが、詳しく教えて欲しい)
    現在、コンパクトカメラの開発と発売に注力している。これが成功させることができれば、次のステップを考えることができる。コンパクトカメラを開発することで、そのノウハウを将来の製品にも活かすことができる。
  • (フィルムカメラの設計に必要なスキルや知識は?)
    図面からフィルムカメラを1つ完成させることは可能だが、量産となると、部品が一定の品質を満たさなければならず、最適な微調整方法を見つけるのは難しい。図面になぜ必要なのか理解できない部品があり、削除しようとしていたが、退職したエンジニアのアドバイスから実際には不可欠な部品であることを知った。若いエンジニアも年配のエンジニアも良い結果を得る方法について積極的に話し合っている。
  • (フィルムメーカーと協力する可能性があると聞いた)
    詳細はお知らせできないが、フィルムの製造と販売に関する全ての企業とのコネクションを構築していくつもりだ。これはフィルムカメラ市場の拡大に非常に重要なことだ。

  • (フィルムカメラプロジェクトはデジカメ開発のリソースを削っているのか?)
    デジカメに与える影響はそれほど大きくはない。フィルムカメラにはセンサーやモニタ、ファームウェアなどが無いため、最小限のリソースで開発可能で、これは大きな負担ではない。
  • (デジタルカメラのアップデートについて)
    ユーザーが新モデルを熱望していることは承知しており、高い期待に応える完成度の高いカメラを目指しているが、残念ながら発売時期については言えない。今後も現行機の性能を向上させるサービスを提供することでユーザーの満足度の向上に努めていく。
  • (K-3 III とK-1のファームウェアアップデートに取り組んでいるのか?)
    はい。市場が縮小し続ける中、当社の優位性と技術的な強みに焦点を当てて、どのように差別化をするのかを常に考えている。
  • (カスタムイメージはなぜ特定のLimitedレンズでしか使用できないのか?)
    カスタムイメージはカメラ本体の機能ではなく、Limitedレンズを購入したユーザーへのプレゼントとして見てもらいたいと考えている。レンズの描写性能を最大限に引き出すチューニングを施すことで、通常のカスタムイメージでは得られない表現を実現している。
  • (今後のレンズのロードマップは?)
    レンズの計画は現時点では言えないが、多くのユーザーが求めているレンズはすでに他社のベストセラーレンズとなっていることに言及しておきたい。レンズラインナップにも独自性を持たせる必要があると考えている。現在レンズ戦略を再構築しており、ユニークで特徴のあるレンズラインナップを目指している。このため現時点ではロードマップを公開していない。
  • (古いレンズに高速なPLMモーターを搭載してアップデートする予定は?)
    現時点ではPLMモーターを搭載した新レンズの具体的な計画はない。PLMを搭載するには、レンズの光学系を再設計しフォーカスレンズ群を小さくする必要がある。

 

フィルムカメラの発売は完全に決まったわけではないようですが、社長を含めた開発陣が「挑戦をする決断をした」「フィルムカメラは注力すべき分野」とまで述べているので、製品化までたどり着く可能性は高いように感じます。フィルムメーカーとの協力の可能性もあるということなので、フィルムの入手性も改善するといいですね。

また、デジカメに関しては交換レンズの戦略を再構築しているという発言が興味深いところで、「ユーザーが希望しているレンズは既に他社のベストセラーレンズ」という発言があることから、他社にはない個性的なレンズラインナップが期待できそうですね。