ソニー「α9 III」はローリングシャッター機よりも約1段分画質が低下する

DPReviewの画質比較ツールにソニーのグローバルシャッター搭載機「α9 III」のデータが追加され、画質に関するレビューが掲載されています。

Sony a9 III: Global shutter comes with an image quality cost

  • α9 IIIのスタジオシーンを追加する機会を得た。我々が最も回答したかった質問は「グローバルシャッターの採用で画質にトレードオフが生じるか」ということで、簡単に言うとそれはイエスだ。

    グローバルシャッターセンサーは産業用では以前から使用されてきたが、スチル用としては普及していなかった。それは複雑な設計のために画質がローリングシャッターのCMOSに及ばないためだ。ソニーは「α9 IIIのセンサーが高感度やダイナミックレンジの問題を克服した」と述べたが、これは事実ではないようだ。

    しかし、プロのスポーツ写真の撮影においては、連写速度や歪みのない撮影が可能な点で、α9 IIIの画質での妥協は理に適っているのかもしれない。


  • 高感度性能:最も大きな違いはα9 IIIのベース感度がISO250であることだが、低感度の画質よりも高感度での速いシャッター速度を優先するスポーツ撮影ではこれは必ずしも問題にはならないだろう。

    より懸念すべき点は高感度ノイズがライバルよりも1段分多く見えるということだ。α9 IIIはノイズに顕著なソフトさが見られるが、これはRAWにノイズリダクションが適用されているためだと思われる。

    α9 IIIのグローバルシャッターセンサーは1ピクセルに2つのフォトダイオードがあり、1つは光を補足し1つはそれを保持するバッファーとして機能するので、各ピクセルの光の容量が半分になる。このためベースISOが上がり、高感度性能が低下する。また、高感度性能を強化するデュアルゲインも搭載されていない。

sonyA9III_dpr_comp_001.jpg

  • ダイナミックレンジ:α9 IIIのダイナミックレンジはISO250では、他のカメラと同等だが、他のカメラはこれより感度を下げることができるので、最大ダイナミックレンジはα9 IIIよりも大きい。

    ISO250での明るい場所での比較ではα9 IIIよりもα9 IIの方がむしろノイズは多いが、ISO6400ではα9 IIIのノイズが多くなる。α9 IIIの低感度の画像を後処理で持ち上げて見ても、α9 IIと比較して余分な読み取りノイズは見られない。

  • まとめ:α9 III の画像を調べると、(グローバルシャッターのために)光の容量が減少していることから予想された通りだったことがわかる。グローバルシャッターがもたらす高速連写などの恩恵が、ノイズ増加のトレードオフと見合うかどうかという単純な問題だ。

    このテストの結果から、グリーバルシャッターは画質への影響があり、一般的な撮影ではあまりグローバルシャッターは意味がない可能性がある。また、1段分画質が低下するために、画質で妥協する余裕のない小型センサー(APS-Cやm4/3などのフォーマット)ではグローバルシャッターの魅力が薄れる可能性が高いだろう。

    全体としてα9 IIIは本来の目的(スポーツ撮影)のためには有望なカメラに見えるが、カメラ全体の未来を予告するようなカメラとは考えるべきではないだろう。

 

グローバルシャッターは構造が複雑な分、画質が低下すると言われていますが、DPReviewのテストでも実際にそれが確認されたようで、α9 IIIのグローバルシャッターはローリングシャッター機と比べると画質で約1段分後れを取っているようです。

画質比較ツールの同サイズの画像で見ると、α9 IIIはRAWにノイズリダクションがかかっていてもα9 IIより明らかにノイズが多く、APS-Cのα6600と同程度と言ったところでしょうか。

とは言え、α9 IIIは実用的な画質が維持されているという印象で、この画質で超高速連写やディストーションフリー、全速同調などが実現するなら、動き物を撮影するカメラマンには十分に魅力的なカメラと言っていいかもしれませんね。