ソニー「α9 III」のAFはこれまで使用したカメラの中で最高の性能

PetaPixelに、ソニーのグローバルシャッターの高速連写機「α9 III」のレビューが掲載されています。

Sony a9 III Review: A Costly Revolution in Camera Technology

  • α9 III はエルゴノミクスに改良が施されている。多くの場合、このような改良は言及する必要がないほどの小さな調整だが、α9 III の場合はエルゴノミクスが大きく改良されており、これはソニーで最も劇的な変化の1つだ。設計し直されたグリップは中指のくぼみが深くなり、全体的に手にフィットするようになった。また、シャッターボタンの角度が前方に行くに従って急角度になっており、α1よりも快適になった。比較的小さいボディ形状の変更で撮影体験は格段に向上している。
  • EVFはα1のものを継承しており、α9 IIから大幅に改善している。α1はフル解像度でリフレッシュレート最大60fpsに対していたが、α9 IIIは処理能力の向上により120fpsが可能だ。α9 IIIはSONYのカメラの中で最高のEVFを搭載している。
  • メニューは肥大化しており、まだ改善の余地があるように感じられるが、α9 IIIほど使っていて楽しいソニーのカメラは他にない。

  • AFはAIが使用され、人、動物、鳥、乗り物などの様々な被写体を迅速かつ正確に認識する。私がこれまで使用したカメラでα9 III に匹敵する合焦率のものはない。α9 III のAFは完璧ではないが、ミスはほとんどしない。
  • 連写は120コマ/秒の驚異的な速度だが、バッファの容量はそれほど大きくなはない。メモリカードはCFexpress Type AでこれはType Bの半分の速度しかないため、バッファクリアに影響する。Type Aの採用は理解はできるが気に入らない。Type Aの採用は120コマ/秒、60コマ/秒での撮影では影響を強く感じる。
  • バッファはRAWで200枚で一見多いように思えるが、最高速度では2秒未満だ。120コマ/秒の連写の魅力は決定的な瞬間を逃さないことだが、バッファがいっぱいになると決定的な瞬間を確実に逃してしまう。バッファクリア中の撮影はできるが、速度は大幅に遅くなる。α9 III の連写は驚くほど速いが、タイミンよくシャッターを推さないとチャンスを逃す可能性がある。Type Aカード使用時のバッファクリアは約15秒で、スポーツの撮影ではこの時間は永遠のように感じられる。とは言え、α9 III の卓越したAF性能と猛烈な連写速度でスポーツフォトグラファーはチート(ずる)をしているような感覚になるだろう。

  • グローバルシャッターのおかげで、歪みの問題が発生することはなく、また、任意のシャッター速度でフラッシュが同調できるが、グローバルシャッターは画質面の欠点がある。グルーバルシャッターセンサーは必要な回路が大きいためにローリングシャッターセンサーよりもフォトダイオードの容量が小さく、その結果、受光量が少なくなり、ベースISO感度が高くなり、ダイナミックレンジが狭くなる。ソニーはISO250でのダイナミックレンジはα9 IIと同等だと主張しており、これは受け入れるが、最低感度では画質はα9 IIには及ばず、α9 III のRAWの柔軟性はAPS-C機や古いフルサイズ機に近い。ノイズレベルについても同様で、α9 IIIは同世代の製品よりも全体的にノイズが多い。
  • スポーツ写真家は瞬間を捉えることが優先されるが、風景写真家はそうではない。また、α9 III はポートレートに最適なカメラとも言えない。ジョーダン・ドレイクはα9 III で多くのポートレートを撮影して、まずまずの画質が得られたが、際立った画質ではないと言える。
  • α9 III はバッファがもう少し大きければよかったと思うし、ISO範囲が狭いのは少々時代遅れに感じるが、それでも、2秒未満で200枚を撮影した瞬間、それらの失望感は消え去る。ただ、動体写真中心でない人には、α9 III の欠点はより深刻に感じられるもので、風景写真ではα7R Vのダイナミックレンジの広さが恋しくなる。また、野生動物の撮影ではより優れた高感度性能が欲しくなる。

  • α9 III は万能のカメラではなく「仕事に適した道具を選べ」という考え方は賢明だろう。AF性能と連写速度という点では優れているが汎用性には欠けている。
  • α9 III はこれまで不可能だった撮影ができる革命的なカメラだ。このカメラは写真とカメラの技術を未知の領域に押し上げたが、画質は明らかに一歩後退しており、メモリカードの選択はセンサーに比べると先進性に欠ける。
  • α9 IIIを買うべきだろうか? 瞬間を逃したくないなら、買うべきだ。α9 III は6000ドルという高い価格に見合うだけの価値がある。ローリングシャッター歪みが出るような状況で頻繁に撮影する人にとって、α9 III は他の全てのカメラがつまずく問題を解消してくれる。それ以外の、連写は20~30コマ/秒で十分と感じる人や、ダイナミックレンジや高感度性能、解像度を重視する写真家は他をあたった方がよい。α9 IIIはゲームチェンジャーだが、これは全ての写真家が参加するゲームではない。

 

α9 III のレビューではグローバルシャッターによる超高速連写や歪みのない画像、全速同調などが取り上げられることが多いですが、その他にもエルゴノミクスの改善や、「これまで使った中で最高の合焦率」のAFなど、多くの点で大きく進化しているカメラに仕上がっているという印象です。唯一、画質に関しては「一歩後退」しているようですが、これは革新的な機能とのトレードオフなので、仕方のないところですね。とは言え、画質は「APS-C機や古いフルサイズ機並み」ということなので、多くの用途では十分以上の画質と言ってよさそうです。