ソニー「E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS II」はAF性能は改善されているが期待外れのアップデート

PCmagにソニーの新しいAPS-C用のキットズーム「E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS II」のレビューが掲載されています。

Sony E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS II Review

  • このレンズは10年以上前に発表された安価な初心者用ズームのかなりマイナーなアップデートであり、同じ光学系を踏襲している。アップグレードはすべてAFに関するものだ。
  • II型のAFはほとんど無音でフォーカスは速く、120fpsのスローモーション録画でも被写体を追跡できる。ZV-E10IIなどのvlog用カメラのキットレンズとしては価値があるが、ソニーには画質とエルゴノミクスを改善してほしかった。大部分のスチルを撮る人は、より望遠側が長くシャープな光学系を備えたE 18-135mm F3.5-5.6 OSSにステップアップする必要があるだろう。
  • 鏡筒の素材はオールプラスチックで重さはわずか3.8オンスだ。これはアルミ鏡筒と金属製マウントを採用した旧型からの変更点だが、II型は旧型よりも実際には頑丈に感じられるのでダウングレードと言うほどではない。

  • ズームは電動で、フォーカスとズーム兼用のリングを回すか鏡筒上のズームレバーを使うか、またはカメラのズームレバーを使う方法があるが、フォーカスズームリングは焦点距離の微調整が難しく使いにくい。ズームレバーは遥かに優れており、微調整を簡単に行うことができる。ZV-E10IIのズームレバーは3つの操作方法のうちで最も自然に操作ができ、エルゴノミクスの点でも優れているが、α6000シリーズのカメラにはズームレバーは搭載されていないので、ZVかFXシリーズのボディが必要だ。
  • 電動ズームは動画の音声に影響しないほど静かだが、希望するほどゆっくりとした動作ではなく、レバーをわずかに動かすだけでもかなり速くズームする。このレンズには、ゆっくりとズームインまたはズームアウトする機能がない。カメラのズーム速度を最も遅い設定にしても、3秒という短い時間で16mmから50mmまでズームする(E PZ 10-20mm F4 G は、低速設定で9秒でズームできる)。
  • 全体的に、ソニーが電動ズームの体験を改善することにもっと注意を払わなかったのが残念だ。素早いズームが可能だが、映画プロジェクトではズームの動きが遅い方が一般的に望ましい。
  • OSSは1/4秒では手持ちで手ブレはまったくみられず、1/2秒では50%の成功率だった。OSSは動画ではカメラの動きが最小限の状態での手持ち撮影に効果的だ。デジタル手ブレ補正を有効にすれば、歩きながらのVlog撮影にも十分だ。
  • AFは速く静かで、スチルでも瞬時にロックし非常に優れている。マニュアルフォーカスはフォーカスリングがゆるく反応がかなり敏感で、何度も試行錯誤しないとピントを合わせられない。
  • フォーカスブリージングは全域でわずかに見られ、望遠側で最も目立つが、大きな問題ではないだろう。
  • 画質は旧型とまったく同じで、16mm開放で中央は2400ラインの良好な結果で、F4-F11では2700ラインと非常に良好な範囲に入る。周辺部と隅を重視する場合はF8以上に絞ることを進めるが、スチルでは隅のディテールが甘くなることを覚悟しておく必要がある。
  • ズーム中間域の33mmでは中央は開放から素晴らしい3200ラインの解像力で、50mm開放では2300ラインの良好な値まで落ち込み、また周辺部と隅が著しく甘くなる。しかし、F8以上に絞れば優れた解像力になり、全域で鮮明になる。
  • 光芒はF16とF22で見られるが、フレアが顕著に発生する。このレンズは逆光に弱く、そのような場面では色収差とパープルフリンジも気になった。
  • ボケはそれほど悪くはなく、玉ボケには年輪ボケが見られるが輪郭は滑らかに見える。軸上色収差(ボケの色付き)は見られなかった。

  • ソニーには価格が高くなっても光学系を改良して、解像力を高め、逆光耐性を改善して欲しかった。レンズのサイズを大きくすることなくAF性能を改善したことは評価できるが、競争力を保つために光学系をアップグレードし、電動ズームの使い勝手を改善するべきだった。動画クリエイター用としては優れた選択肢だが、E18-135mm F3.5-5.6 OSSほど汎用性があるわけでも光学的に優れているわけでもない。結論:期待外れのアップデートだ。
  • 良い点:非常に小型軽量、動画用に調整されたリニアモーターのAF、手ブレ補正。
  • 悪い点:パワーズームが映画用の低速に対応していない、絞っても隅がシャープにならない、逆光で画質が悪くなる。

 

E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS II はAFは改良されているものの、光学系とパワーズームはそのままで、スチル用としては周辺部の画質が物足りなく、また、動画制作用としてもパワーズームの使い勝手が悪いということで、本格的に撮影したい場合には動画でもスチルでも他のレンズにアップグレードしたくなりそうですね。

ソニーのフルサイズ用レンズのモデルチェンジでは、光学系にも手が入ってかなり訴求力がアップしているので、APS-C用のレンズももう少し力を入れて欲しいところかもしれません。