ニコン「Z 40mm f/2」は一昔前のレンズのような解像力

LensTipに、ニコンの軽量コンパクトな準広角単焦点レンズ「Z 40mm f/2」のレビューが掲載されています。

Lens review Nikon Nikkor Z 40 mm f/2.0

  • フォーカスリングには距離目盛りや被写界深度目盛りは無いが、適切な重さだ。最短から無限遠までの回転角は、リングを速く回すと約110度、ゆっくり回すと約270度で、正確なピント合わせが可能だ。

  • 解像力の計測結果のグラフを見て、15年前にタイムスリップしたような気分になった。Z 40mm f/2の解像力は、良像の基準値を超えるのにF5.6まで絞る必要があった昔のダブルガウスタイプのレンズと同じパターンだ。
  • 中央の解像力はF2では42.8lpmmで、良像の基準値のボーダーライン上だ。F2.8では50lpmmを超え、F4では70lpmmに達し、F5.6ではとても良好な75.3lpmmになるが、Z 35mm f/1.8Sには及ばず、ここでは少々芳しくない結果だ。
  • 隅の解像力も過去を思い起こさせるもので、開放では甘く、F2.5まで絞らないと基準値を超えない。絞っても解像力の改善は遅く、ピークのF5.6でさえ辛うじて50lpmmを超える値で、中央よりも顕著に後れを取っている。

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  • 軸上色収差は、シンプルな光学系で低分散レンズを使用していないにもかかわらず、見事に抑えられており、ボケに顕著な色が付くことはない。拍手だ!
  • 倍率色収差は、絞りにはあまり依存しておらず、画面の隅で0.06%から0.08%の範囲で、これは低いと言っていいレベルだ。ここでは全体として満足行く性能で、実写で色収差が気になることはあまりないだろう。
  • フォーカスシフトは、F2からF2.8に絞った時にわずかに見られ、ピントが奥に移動するが、前ボケと後ボケの玉ボケに大きな違いはなく、球面収差の補正に大きな問題はない。

  • 歪曲は-0.82%のわずかなタル型で、文句のつけようがない。非常にシンプルな光学系にもかかわらず、設計者が歪曲を適切に補正しているのは興味深いことだ。
  • コマ収差はフルサイズの隅では非常に大きい。幸いなことに1段絞ると改善するが、完全には解消しない。コマ収差を避けたいならAPS-C機で使うべきだと思う。
  • 非点収差は5.9%の低い値で、コマ収差よりもよい結果だ。

  • 玉ボケは非球面レンズが使用されているため、内部は完全に滑らかではないが、極端に悪い部分はなく、子細に見ないと年輪ボケにも気が付かない。輪郭は少し強めだが、口径食の影響は大きくない。
  • 周辺光量落ちは開放では57%(-2.46EV)にも達する大きい値だが、これは、よりサイズの大きいBatis 2/40とほとんど同じ値だ。
  • 逆光耐性はシンプルな光学系なので問題ないと予想していた通り、実際に非常に良好で、フレア・ゴーストはほとんど見られない。
  • AFは作動音は全くしないが、速度は最短から無限遠まで0.7~0.8秒とそこそこだ。AF精度は全く問題なく、スタジオでも屋外でも常に狙った被写体に合焦した。前ピンや後ピンの傾向も見られない。

  • ニコンの初心者向けの単焦点という課題に対するアプローチは、かなり最小主義的なもののようだ。言ってみるなら、手抜きをして結果として古い(Fマウントの)50mm f/1.8に似た構成と性能のレンズを造ったということだ。しかし、このレンズの造りは50mm f/1.8に劣っており、付属のアクセサリーも少ないが、それでも価格は2~3倍になっている。
  • 高品質で安価なレンズの時代は終わったようだ。それでもシャープで鮮明な写真の撮れるZ40mm f/2は使って楽しめるレンズであることは変わりはなく、Z35mm f/1.8やZ50mm f/1.8と比べてかなり安く済ませることができるだろう。
  • 良い点:中央のとても良好な解像力、軸上色収差がごくわずか、倍率色収差がわずか、歪曲がほとんどゼロ、非点収差が少ない、逆光耐性が良好、静かで正確なAF。
  • 悪い点:開放付近では隅が甘い、周辺光量落ちが顕著、コマ収差が大きい、マウントも鏡筒もプラスチック。

 

LensTipは解像力重視なので、開放付近の解像力が低いレンズは低い評価になることが多いですが、今回のZ 40mm f/2は「15年前のレンズのよう」というかなり厳しい評価になっています。個人的には、このレンズの開放付近の柔らかい描写はかなり魅力的だと思いますが、その辺りはラボテストでは評価されないのが少々残念ですね。