キヤノンが、極めて高感度に強いSPADセンサーを使用したボックス型カメラ「MS-500」の開発を発表しています。
・世界初SPADセンサー搭載のレンズ交換式超高感度カメラを開発
- キヤノンは、世界最高画素数の約320万画素1.0型SPAD(Single Photon Avalanche Diode)センサーを搭載したレンズ交換式超高感度カメラ"MS-500"の開発を進めている。
- SPADセンサーの特長である優れた暗視性能に、高い望遠性能を有する放送用レンズを組み合わせることで、高度監視用途への活用が期待される。世界初のSPADセンサー搭載カメラとして、2023年中の発売を目指す。
- 現在開発中の"MS-500"は、低ノイズを特長とする1.0型SPADセンサーを搭載し、暗闇でもフルHDの鮮明なカラー撮影が可能。
- "MS-500"に搭載するSPADセンサーは、画素に入ってきた光子を数える「フォトンカウンティング」という仕組みを採用している。画素に光子が1つでも入ると、瞬時に約100万倍に増倍して大きな電気信号を出力することができる。これら一つひとつの光子をデジタルに数えることができるため、読み出しの際にノイズが発生しないことが大きな特長。これにより、"MS-500"は、星の出ていない闇夜のような暗い環境下でも、わずかな光を正確に検出し、被写体を鮮明にカラー撮影することが可能だ。
2021年に開発が発表されていたキヤノンのSPADセンサーですが、今年中にこのセンサーが搭載されたカメラが製品化されるようです。このセンサーは特殊用途向けなので、一般向けのデジカメに採用されることはないと思いますが、桁違いに高感度に強いので、監視用途以外でも天体や夜の野生動物等の撮影で威力を発揮しそうですね。なお、SPADセンサーの詳細は、開発発表の記事を参照してください。
天城の天文屋
天体に使ってみたいけど、一般人には手が届かない値段になりそうですね。
myon
3:4の1インチセンサーで320万画素ということはフルサイズで890万画素(計算合ってます?)
α7SⅢが1290万画素。
もうチョイじゃん。
ぶらりん
超新星爆発や火球の観測に使うアイディアがすぐにも出てきそう!
センサー自体の画素数が足りなくても、今はステッチングであっという間に360度全球画面が作れてしまう時代。
楽しそう!
swing
ダーウィンが来た! とかに採用されたら、暗闇の野生生物がフルカラーで見れるようになるんでしょうか。
ワクワクしますね。
SPADの技術は伸びしろがありそうなので、今後に期待大です。
ヲニヤンマ
他の人も書いてるけど、天体に使ってみたいよね。
周波数特性はどうなんだろう?
ペルチェ素子とか使わなくてもノイズ少ないのかな?
久しぶりにアストロモデル出るかな?
rocky
深海とか惑星探査とか、Canonさんの活躍の場が広がりそうですね〜。そしていつかは、民生用のデジ一眼にも技術転用して欲しいです。そうしたら、手持ちで星景写真が撮れるかもしれないですね。
m2c
逆光耐性が気になりますが、これのドラレコとかあったら、暗闇でもバッチリですね。
と言うか、軍用の暗視装置を超えているんではないでしょうかね?!
Oort
スパッドセンサー、名前もカッコ良いですね。実用化が楽しみです。
酒呑み
ここまで高感度の画質がすごいと、偵察など兵器に転用できるからと外為法の輸出規制対象になってしまわないか、気になります。そういった法令のリスクやコストなどをクリアしてレンズ交換式カメラに採用できたら、無敵ですね。
朽木
暗闇に強いのはわかるけど日中はどんな状態で撮れるんだろう?
いがぐり
CCDやCMOSでは米を升で量るのに対して、SPADでは米粒を数えるようなものです。
なので、普通のCMOSセンサーが一応動くような明るさでは光子を数え切れず、きちんと動作することが困難です。
減光する手段なしに使うなら、夜間専用になるのではないでしょうか。
クリーム茶
>朽木さん
ソニーのSPADのダイナミックレンジは124dBで、0.1ルクスの月明かりから10万ルクスの太陽光下まで撮影可能です。キヤノンもおそらく同様だと思います。
swing
フレームレートはどんなものなんでしょうね。
以前の記事では「露光時間を3.8ナノ秒まで短縮でき、1bitの出力で最大24,000fpsという高速撮影レートを実現」というとんでもないものでしたが…。
1bitなのでホントのフォトンカウンタですが、ビデオカメラ用センサーとして使うには不便だろうから、フレームレートと引き換えにセンサー上である程度蓄積するのかな。
超高フレームレートというかスーパースローでは高感度性能が必要となるので、このカメラはそういう業界向けにも注目されてると思います。照明無しで望遠使って、あるいは顕微鏡でスーパースロー撮れるかも。
SPAD自体は「100ピコ秒という時間分解能」だそうで、これは光の速度すら分解できるので、ToFセンサーとしても使える。例えば撮像フレームの合間に赤外線でフラッシュしてToF測距、みたいな技術もあり得そうです。
高速性能でも注目のセンサーだと思います。
CMOSの性能が劇的には伸びないなか、新しい技術は楽しみですね。
xdog
> myonさん
320×2.7×2.7=2332万画素になるのかなと思います。
(逆に2400万画素機でAPS-Cクロップする時って、2400÷1.5÷1.5=1066万画素になるので)
有効画素は210万画素とのことなのでそれでもFFで1530万画素でしょうか。
そのまま大きくできればもしかして…?
(※35mmは3:2ですが計算難しいのでそのまま2.7倍してます)
ゆーと
>swingさん
>フレームレートと引き換えにセンサー上である程度蓄積するのかな
>1bitの出力で最大24,000fpsという高速撮影レートを実現
私もそう思いました。メモリ部分もオンチップで持っていれば、1/10秒で11bitオーバー(2048カウント)ですものね。
オンチップADCを入れるとしても、10~12bitでしょうが、しかし、従来のCMOSとは違って、読み出しノイズが無視できる分、Dレンジも広く撮れると思いますしね。
こういったセンサで従来撮れなかった写真を撮れるようになると面白いですね。
とおり
真のゲームチェンジャーがお出ましですね。
当面は軍事・警備用途等「金に糸目はつけないからどうしても」な分野に向けて目の飛び出るような値段で出すのでしょう。うがった見方をすれば「今が売り出し時」なのかもしれません。
有機CMOSセンサーより早く商品化されるとは思いませんでしたが、あちらは民生用を主軸に開発している様子(例:自動運転車)なので、一般的なデジカメ用途として登場するのはどちらが先かはわかりません。
一般的なデジカメとして登場するには、双方とも10年ぐらいの時間は必要でしょうけれど、遠い未来に試してみたいものですね。
swing
クリーム茶さん
気になったのでソニーのSPADを調べて見ましたが、こんな方法で広DRを実現してるようです。
1.SPADはフォトンカウンタなので、光子を数えなければならない。
120dBを実現するには20bitぐらいのカウンタが必要。
回路規模が大きくなるので配置や消費電力などが厳しい。
2.試作品では、9bitのカウンタを用意し、光子数をカウント。
9bitを超えた場合、カウンタが飽和するまでの時間を計測する。
その時間を元に、実際の光子数を外挿法で推測する。
SPADは時間分解能が極めて高いので正確な時間が計れるみたい。
3.露光時間を20のサブフレームに分割して、2の処理を合算して出力とする。
これは、露光中に光量が大きく変化した場合などに対応するためとのこと。
多分露光中に被写体が移動した時のブレもこれで対応?
20分割というのはあくまで試作品の話なので、実際に製品化する場合は適切に調整されると思われます。
大量のフレームを合算しても読み出しノイズは増えないらしいので、分割数を増やせばダイナミックレンジも更に広がるかもしれません。
積層センサーでしょうからロジック部分に処理入れれば何でもできそう。
写真の真骨頂って「人の目で捉えられないものを見る」ことと個人的には思っているので、SPADにはかなり期待してます。
例えばですが、夜明るい繁華街の先に天の川、みたいな写真撮れるかも。
myon
>xdogさん
ありがとうございます。
最初、なんで2.7倍?と思いましたが、1インチセンサーって対角1インチじゃないんですね。
勉強になりました。