タムロン「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD」は欠点はあるが期待以上の性能

LensTipに、タムロンのEマウント用の大口径標準ズーム「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD」 のレビューが掲載されています。

Lens review Tamron 17-70 mm f/2.8 Di III-A VC RXD

  • 鏡筒には、このレンズが日本で設計されベトナムで生産されていると記載されている。フォーカスリングは電子式で、適切な重さがあり非常に滑らかに動く。最短から無限遠までの回転角は180度以上あり、正確なピント合わせが可能だ。
  • 手ブレ補正の効果は最大3.7段分で、適切に機能している。
  • 中央の解像力は望遠側ほど優れているが、広角端でも開放で60lpmm(良像の基準は39-41lpmm)の非常に高いレベルで、少し絞ると65lpmmを超える。30mmではそれより若干改善し、50mmでは更に改善してピークでは74lpmmに近い値になる。70mmの解像力はセンセーショナルで開放で既に66lpmmを超え、ピークでは81lpmmに達する。これは最高の単焦点レンズに匹敵するレベルで、拍手喝采に値するものだ。

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  • 隅の解像力は中央と異なり広角側の方が優れている。17~50mmでは開放から50lpmmを超えており完全に実用になる画質で、絞ると60lpmmを大きく超えてくる。50mmでは開放では46lpmm付近だが絞ると急激に改善する。望遠端では開放では45lpmm付近で絞っても改善は遅い。それでも解像力のカテゴリではこのレンズは失敗しておらず、開放からズーム全域で適切な画質が得られる。

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  • 軸上色収差は45mmと70mmではわずかに見られ、ボケに色が付くが、大きな問題ではなくF4まで絞ると顕著に減少する。
  • 倍率色収差は問題が見られるのは広角側で、広角端の開放では0.13%を超える。この値は「中程度」と「高い」の境界線上だ。幸い絞れば改善するが、0.09%以下にはならない。望遠側は開放時に「中程度」の値だが、絞ると非常に低いレベルになる。
  • 球面収差の補正は完璧ではなく前ボケと後ボケは大きく異なっている。また、絞るとピントが奥側に移動する(フォーカスシフトがある)。

  • 歪曲は17mmでは-3.33%のタル型だが、この種のレンズとしてはそれほど高い値ではない。24mmでは+0.81%のわずかな糸巻き型になるが、35mm以降では急速に増加し、50mmでは+2.88に達する。歪曲の補正は特に素晴らしわけではないが、広角端の歪曲を抑えることには成功している。しかし、その代償として歪曲の形状が陣笠状になり、望遠側で歪曲が大きくなっている。このレンズは富士のXF16-80mm F4と異なり、歪曲の光学補正を諦めていないのは注目に値する。
  • コマ収差は非常に良く補正されており、隅でもダイオードはわずかに像が大きくなる程度で変形しない。ここでは非常に高い評価だ。
  • 非点収差は6.6%の穏やかな値で、心配はない。

  • ボケは年輪ボケが明確で、このレンズのウィークポイントだ。口径食が深刻でないのが唯一の慰めだ。
  • 周辺光量落ちは広角端の開放では61%(-2.71EV)にもなる。絞ると改善し、F4では45%(-1.74EV)、F5.6では33%(-1.18EV)、F8では27%(-0.92EV)になる。周辺光量落ちが「低い」のレベルになるのはF11とF16(22%、-070EV)だけだ。
  • 逆光耐性は少々残念な結果で、太陽が画面内にある場合にゴーストやフレアが発生するのは予想の範囲内だが、太陽が画面外の遠い場所にある場合でも強いゴーストが出る。
  • AFは作動音はなく、電光石火のスピードだ。AF精度に関しては若干弱く、屋外でもスタジオでもミスフォーカスがあり、全体では5~6%ピントを外している。前ピンや後ピンの傾向はない。

  • 17-70mm F2.8は設計の難しいレンズで、周辺光量落ちと逆光耐性が弱いのは不思議なことではない。しかし、このレンズは開放から焦点距離にかかわらず画面全域で非常に良好な画質が得られており、最も重要な課題をクリアすることができている。このレンズは期待よりも少し良い性能で、高い評価に値するものだ。
  • 良い点:ズーム全域で中央の非常に優れた画質、隅の良好な画質、軸上色収差に大きな問題がない、望遠側の倍率色収差がわずか、コマ収差の良好な補正、非点収差が穏やか、効果的な手ブレ補正、静かで非常に速いAF、他にはない焦点距離と明るさの組み合わせ。
  • 悪い点:周辺光量落ちが大きい(特にズーム両端)、球面収差の問題が顕著、逆光耐性が今ひとつ。

 

タムロンの17-70mm F/2.8は、F2.8通しを維持しながら望遠端を70mmまで伸ばした他にはないスペックの標準ズームですが、画質はズーム全域で開放から良好で、周辺光量落ちや逆光耐性などいくつか欠点はあるものの上手くまとまっているという印象です。

ただ、以前にDPReviewSonyAlphaBlogでも指摘されていましたが、年輪ボケはやはりこのレンズのウィークポイントのようですね。